文春文庫の今月の新刊広告に南木佳士の名前を見つけた。
南木さんの本はとにかく読む。
うつという心の病を抱えながら静かに暮らしている著者が、休日の早朝、暗いうちから起き出して、書き溜めたというエッセイが収録されている。一冊にまとまる分量になるまでに三年かかったそうだ。
**メランコリーを好む性格だから、創りあげた秩序のなかに安住しているのがいちばん薬だとは分かっていても、出来事は上から、うしろから、そして内側からも勝手に起こってくる。** 文庫版あとがきに著者はこう書いているが、私の場合もまったくその通り。
**私はよい医者にはなれないまま終わりそうだ。**と、エッセイの一文が帯に採られているが、私には南木さんは名医、彼の「薬」は欠かせない。