茅野市民館:古谷誠章
JR茅野駅に直結する複合施設。この計画のポイントは駅という「日常」と美術館やホールという「非日常」を結ぶこの空間。緩やかなスロープに添って図書スペースが配置されている。プロポーザルではこの空間が評価されたという。
根津美術館:隈研吾
都会の喧騒的な「日常」から美術館という「非日常」へ導くアプローチ空間。機能的には茅野市民館のスロープと全く同じ。前面道路に接する敷地のエッジに沿って竹のスクリーンを配し、うまくその空間を確保している。
まつもと市民芸術館:伊東豊雄
松本の中心市街地の狭小な敷地に計画された。ホールへのアプローチ空間が屋外に確保できないため、大ホールの入り口を後方に配して、ホールの側面にその空間を確保するという解決法を伊東さんは採った。市役所に展示された応募案を見たがこのようなプランを提示したのは伊東さんだけだった。
演奏会が終って直ぐに街の喧騒に巻き込まれたら、すばらしい演奏でもその余韻を楽しむことができない。「非日常」から「日常」へゆったりとした空間で結ぶ・・・。
今回取り上げた3つの計画に共通するのは「日常」と「非日常」とを結ぶ空間の確保が難しい条件にもかかわらずきちんと計画されていること。茶室に至る露地にも通じるが、いずれもシークエンスが意識され、行き先が見通せないような演出がなされている。