透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「真面目な二人」

2011-05-28 | A 読書日記



 時々カフェマトカでコーヒーを飲みながら、雑誌「クウネル」に掲載されている川上弘美の掌編小説を読む。

今日、最新号の「真面目な二人」を読んだ。同じ大学に通うふたりの女の子、学科は違うがある講義で一緒になる。教室の後ろから聞こえてくる「かち、かち」って何の音?と思ったら、交通調査などで使うカウンター機の音だった・・・。 ひとりの女の子が気持ちが動いたときにカウンター機をかちっと押していたのだ。それを知ったもうひとりの女の子、つまり主人公は白黒ふたつのカウンター機を用意して、楽しい方に気持ちが動いたら白をかち、いやな感じ方向に動いたら黒をかちと押してみることに。こんなありそうでなさそうな、なさそうでありそうな設定は川上弘美が得意とするところ。

元カレとよりを戻して、一緒にいるときにカウンターを押してみると白が5、黒が18だった。そうなんだ・・・、と自分の気持ちが分かって、女の子は別れを切りだしたのだった。でも「いい気持ちがほんとうはいやな気持だったり、反対にいやな気持が、後で考えると楽しい気持ちにつながっていたりするから・・・」と気がつくと裏も表も白も黒もごっちゃになっていく・・・。

川上弘美はよく白も黒もごっちゃになった世界、境界のはっきりしない曖昧な世界を描く。

長編の『真鶴』では失踪してしまった夫がまだこちらにいるのかあちらに行ってしまったのか、はっきりしない状況で物語が進むし、やはり長編の『風花』は夫と別れようか、どうしようか、とまるで風花のように気持ちが定まらない若い女性が主人公の物語だ。

「真面目な二人」はふわふわ、ゆらゆらなカワカミワールドが上手く描かれた佳作。




「神様2011」 Yさん、これです。^^


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