透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「声」と「共犯者」

2018-03-20 | A 読書日記



■ 松本清張短編全集全11巻の『声』と『共犯者』を読んだ。

収録されている作品のうち、何作か記憶にる。

「顔」。劇団員の井野に映画出演のオファーが。プロデューサーに気に入られて次の作品にも指名され・・・。

**これからはぼくは重要な役として一本の映画のなかでも多くの場面に顔を頻繁に出し、有名になればなったで、ますます多くの映画に出演することになるだろう。あの男にぼくの顔が見られる可能性は、うんと強くなって、十分の一くらいな確率になろう。**(96頁)

顔は売りたい、でも売れては困る・・・、このジレンマ。井野は邪魔になった女を殺害するため、旅行に誘う。旅行中、島根県内を走る列車の中で、同じ車両に偶然女を知る男が乗っていて、**「ミヤ子さんか。えらい思いがけないところで会ったな。こりゃ驚いた。」。**(101頁)

あの男が自分の顔を覚えているのではないか。


『共犯者』に収録されている作品はどれもなかなか面白い。「小さな旅館」は娘の婿養子を父親が殺害する話。

娘婿の順治が浮気相手の女と毎週金曜日の夕方、練馬の連れ込み宿で密会していることをつかんだ父親はその宿を買い取る。宿の客室(和室)の床下を掘っておき、青酸カリ入りのジュースで殺害したふたりをその穴に埋める。完全犯罪かと思われたが、この父親がその後余計なことをしたために・・・。

案外早く全巻読み終えてしまうかもしれない。


 


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