透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「伊豆の踊子」

2010-11-25 | A 読書日記

**国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。夜の底が白くなった。**川端康成の『雪国』の書き出しはよく知られている。

この書き出しとよく似ていると思うのが、**上野発の夜行列車おりた時から 青森駅は雪の中**という「津軽海峡冬景色」の歌い出し。

ともに実に簡潔で上手い導入だ。

**道がつづら折りになって、いよいよ天城峠に近づいたと思ふ頃、雨脚が杉の密林を白く染めながら、すざまじい早さで麓から私を追って来た。** 『伊豆の踊子』の書き出しはなかなか味わい深い。

ストーリーはなんとなく覚えていたが、わずか40頁の短篇小説だということは忘れていた。

一人伊豆の旅に出た二十歳の私、修善寺温泉から湯ヶ島温泉へ。そして天城峠の茶店で旅芸人の一行と一緒になって、その後、湯ヶ野、下田へと同行。その間の芸人たち、とくに踊子・薫との交流を描いている。

**「あの芸人は今夜どこに泊るんでせう。」** と茶店の婆さんに問えば**「あんな者、どこで泊るやら分かるものでございますか、旦那様。お客があればあり次第、どこにだって泊るんでございますよ。今夜の宿のあてなんぞございますものか。」**との答え。

湯ヶ野では別の宿に泊ることになるが、**踊子の今夜が汚れるのであらうかと悩ましかった。**などと私。

川端康成の小説にはエロティックな雰囲気が漂っている。この小説の場合、高校生くらいの年齢だと思っていた踊子が子どもだと分かってその雰囲気は消えていくのだが。

さて、次は何を読もう・・・。




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