『日本の分水嶺』堀 公俊(ヤマケイ文庫2011年初版1刷 2021年初版4刷)
■ 北海道の宗谷岬をスタートする中央分水界はどこを通って鹿児島県の佐多岬にゴールするのか・・・。日本列島を縦断する1本の線の存在を意識してから、このことを知りたくて本書を読んだ。この線上に塩尻峠や善知鳥峠があることは知っていたが、他の地点については全く何も知らなかったから、そうなのか、の連続で興味深く読んだ。
本書は北海道、東北、関東、中部、近畿、中国四国、九州と地方毎に章立てされ、第四章の中部編が7節まである他はそれぞれ4節にまとめてある。各節はさらに何項かに分けられ、全体で128項で構成されている。
著者は本書について次のように書いている。**(前略)大分水嶺の完全踏破記録でもなければ、洒落た紀行エッセイ集でもない。強いていうなら、大分水嶺という長大な未踏峰を紹介する〝知的エンタテイメント〟である。**(はじめに 15頁)著者によるこのような総括的な紹介は好ましい。何を書くのか、何を伝えたいのかを意識していないと、読者には分かりずらい書き方になりかねない。
中央分水界が長野県では身近なところを通過している、それもかなりまわり道していることを知ることができたし、琵琶湖周辺ではどこを通っているのかも知ることができた。知らないことを知ることって実に楽しいものだ、と改めて思った。
ところで本書には本州の中央分水嶺を単独完全踏破した人(*1)がいることが紹介されている。約2,800キロ、39年かけての踏破! ただただ、凄いとしか言いようがない。どんな世界にも凄い人って必ずいるものだ。
*1 細川舜司さん 『日本の「分水嶺」を行く』(新樹社)