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司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

免責的債務引受と契約成立の通知(補遺)

2020-09-03 16:25:06 | 民法改正
 最近,免責的債務引受に関する相談が続いたので・・。

民法
 (免責的債務引受の要件及び効果)
第472条 免責的債務引受の引受人は債務者が債権者に対して負担する債務と同一の内容の債務を負担し、債務者は自己の債務を免れる。
2 免責的債務引受は、債権者と引受人となる者との契約によってすることができる。この場合において、免責的債務引受は、債権者が債務者に対してその契約をした旨を通知した時に、その効力を生ずる。
3 免責的債務引受は、債務者と引受人となる者が契約をし、債権者が引受人となる者に対して承諾をすることによってもすることができる。

cf. 令和2年4月7日付け「民法改正で新設された「債務の引受け」に関する規定」


 債権法の改正により,免責的債務引受を,引受人と債権者との契約によってする場合,債権者が,債務者に対して,契約の成立を通知しなければならず,当該契約は,通知した時(到達主義)に,その効力を生ずることとなった(民法第472条第2項)。

 従来の判例によれば,債務者の意思に反しない限り,その同意がなくても債権者と引受人の間の契約でもすることができると解されていた。

 そこで,従来の実務では,債務者に相続が開始した後,債権者と相続人の間で免責的債務引受契約を締結する場合に,債権者と共同相続人全員との契約によることが難しいときは,債権者と引受人である相続人との間の契約ですることもあったのであるが,改正により,その実務が容易でなくなっている。

 例えば,共同相続人の一が,未成年者(親権者が存しない場合等に限る。)であったり,意思能力を有しない状態であるときは,「通知」を受領するために,後見人の選任を受ける必要があることになる(民法第98条の2)。不在者であるときは,公示による意思表示(民法第98条)によってすることになる。

cf. 平成26年12月30日付け「免責的債務引受と契約成立の通知」

 相続人の一人が「不在者」であり,通知が困難であるとき,金融機関において「公示による意思表示」が選択されることは想定され難い。金融機関が「免除(債権の放棄)」(民法第519条)をしてくれれば,簡明であるが,おそらく絶無であろう。

 解決策は,何もしないか,又は借換えということになろうが,後者の場合,登録免許税の負担は重い。

 実務的には,手続が相当重くなった感。
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3 コメント

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2重払い危険回避に通知は必須ですよ。 (みうら)
2020-09-06 13:46:25
相続債務でも。
返信する
Unknown (内藤卓)
2020-09-03 19:50:07
通常の債務引受の場合,債務者の意思に反しないために,「通知」も意義がありますが,相続債務の債務引受の場合,免責を受ける相続人にとっては,単に義務を免れることができるに過ぎないので,「通知」は不要としてよいと思います。

民法第472条第2項の免責的債務引受に係る登記原因証明情報については,報告形式の場合も相互調印(債権者の記名押印も必要)になるかと思います。
返信する
Unknown (Unknown)
2020-09-03 18:37:59
いつも最新の情報をありがとうございます。
債権者と法定相続人全員との契約によることが難しいことって、意外と経験します。今後は、要注意ですね。
さて、金融機関への差入形式の免責的債務引受契約書の作成を試みました。
472条2項方式の債権者が債務者に対して通知をしたこと
472条3項方式の債権者が引受人に対して承諾をしたこと
472条の4の債権者が引受人に対して意思表示したこと
を従来通りの差入型契約書においてどう表現したらいいのか悩みました。登記手続きを前提にすると、非差入形式の契約書あるいは報告型登記原因証明情報を利用するのが無難ということでしょうか。
また、472条の4では抵当権の移転という概念でありながら、登記ではやはり抵当権変更である点が、頭が固くなったオジサンには辛かったです。
ますこ
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