タマルさんはナツメヤシ

タマルは女性の名。ナツメヤシの意味で多産を象徴。聖書には約束の地カナンは、蜜(ナツメヤシ)と乳(ヤギ)の流れる地とある。

事実は小説よりも奇なり

2016-10-17 20:33:45 | 産科
篠山市住吉台の共生(ともき)くん、9月10日生まれ。
「たくましく、しなやかに、自分も周りも幸せにできる人に。
家族みんなでお産に立ち会えてうれしかったです。3人目は早くて、その分痛かったです。
3人共この病院です。いたれりつくせりでご近所にこの病院が有って、ラッキーだったとしみじみ。」

そうですか、もう3人になりましたね。
お母さんの優しさが周りにも伝わってきますから、この子もきっと周りを幸せにしてくれることでしょう。

さて、先週のブログはお産の話で終わりましたが、
その夜、一度に5人も陣痛のお母さんがやって来られました。
さらに次の日にはもう1人。
もちろんそんなことは初めてですよ。
LDRは2つ、分娩室兼手術室も有るので、3人重なってもなんとかなるのですが、
5人では追いつきません。
早く生まれそうな方からLDRに入ってもらって、手術室も使って、あとの方は病室で待機していただきました。
みなさんにはご迷惑をおかけしました。

結局その夜は、胎児の状態が悪いお母さんが多くて、
1人は吸引分娩、1人は他院に搬送して帝王切開となりました。
通常ならタマル産でするところなのですが、他にも帝王切開になるかもしれない方が居られたからです。
5人のうちへその緒が首に巻いている方4人、うち1人は2重巻きの状態と、
一晩中たいへんでした。

そして赤ちゃんも1人、済生会病院で診てもらったので、
1日に2回も救急車を呼んでしまいました。
もちろんすべてが初めての経験ですよ。

タマル産の助産師が、今夜は満月ですか?と聞いたのですが、
実際、満月だったのには驚きましたよ。

以前、「ノーフォルト」という本を紹介したことが有ります。
アマゾンでの紹介文です。
城南大学病院に勤める女性産科医・柊奈智は、
深夜の当直で容態が急変した妊婦の緊急帝王切開手術を行なう。
ギリギリの判断が幸いし、子供は無事に生まれた。
だが数日後、原因不明の出血が母親を襲った。
患者を救えなかったことでショックを受ける奈智に、
さらに遺族が起こした訴訟が追い討ちをかける!

この本を書かれたのは、現役の産婦人科教授です。
だから迫力が有りますし、読むだけで胸が痛くなります。
今年、篠山の丸尾産婦人科の丸尾院長がクリニックを閉められたのですが、
偶然にも、この本を私に読むように渡されたのですよ。
私は発売時に呼んでいたので、お返ししたのですけれどね。
きっと、私に篠山の将来のお産を託されたのではないでしょうか。

この本では、主人公は訴訟やマスコミに追い詰められていくのですが、
最後に、おそらく自殺しそうな雰囲気の中で患者さんのお墓参りに行った時に、
亡くなられた妊婦さんのご主人に出会い、
憎まれていたのでではなく、感謝されていた、というオチです。
そうです、顔も見ない裁判ですからね。
原因を知りたかっただけなのだと。

今日、ある患者さんがタマル産を訪ねて来られました。
不妊外来からお世話して、妊娠27週で夜中に破水し、
救急車で搬送したお母さんです。
20年前だったら助かっていなかった生命でしょう。
わずか1200グラムだったそうですよ。
破水から丸2日は保たせて、帝王切開になったそうです。
できれば32週未満の早い週数では、24時間以上、保たせるのですよ。
そうすると胎児の肺が成熟して、生まれてから肺呼吸ができるようになるからです。

菓子箱を持って来られたのですが、
あの時は一緒に救急車で搬送してくださって心強かったです、というお礼でした。
そうそう、先週、タマル産で帝王切開できずに他院に託したお母さんのご主人からも電話が有って、
お礼を言われました。
どちらも私としては、心苦しかったのですよ。
でも救われた思いです。

人の心の温かさに感謝ですね。

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