タマルさんはナツメヤシ

タマルは女性の名。ナツメヤシの意味で多産を象徴。聖書には約束の地カナンは、蜜(ナツメヤシ)と乳(ヤギ)の流れる地とある。

帝王切開考

2022-12-02 19:21:49 | 産科
先ほど難産の43歳の骨盤位の初産婦さんが赤ちゃんを産まれたところです。
他院であれば間違い無く帝王切開でしたよ。
それで今日も先週に引き続いて、帝王切開について考えていきます。

上のグラフは兵庫県で分娩数の多い18施設と、ついでにタマル産を比べたものです。
その生データは次の表です。


診療所や病院に関係なく、帝王切開率が高い施設も有れば、低い施設も有りますね。
タマル産は医師一人でやっているので分娩数が少ないのですが、帝王切開が分からないくらい少ないですね。
ちなみに分娩数1位の母と子の上田病院と、3位の尼崎総合医療センターの前身の塚口病院の両方で、私は勤務していましたよ。

ではなぜ帝王切開になるのでしょうか?
あるいは施設によって帝王切開率に開きが有るのはどうしてでしょうか?
それには帝王切開になる原因を把握すれば良いのです。

帝王切開の適応で一番多いのは、既往帝王切開です。
1人目が帝王切開になったので、2人目や3人目もなるということですね。
1人目が帝王切開だと、次の妊娠でも約85%が帝王切開になります。
だから1人目の帝王切開率を下げさえすれば、全体の帝王切開率が下がるのですよ。

それでは1人目の帝王切開の適応とは何でしょうか?
1番多いのは骨盤位(さかご)ですよ。
だからさかごは外回転術で回してあげれば良いのです。
もし不成功であれば、さかごのまま産ませてあげれば良いのです。
ですが今の若い産婦人科の先生は、さかごの介助の訓練を受けていませんからね。
ちなみに私は分娩数の多い天理よろづで4年間、24時間体制で、すべてのさかごの主治医をしていましたよ。

次に1人目の帝王切開の適応の2番目はというと、CPDです。
CPDとは児頭骨盤不均衡という意味です。
要するに骨盤より胎児の頭が大きいので、陣痛が来る前に帝王切開しましょう、ということです。
病院によっては事前に骨盤のレントゲン写真を撮って、狭いから帝王切開と言われます。
あるいは臍の緒が首に巻いていると骨盤に入って来ないことが有るので、
CPDと誤診されることも有ります。
ですがタマル産ではレントゲンを撮る機械も有りませんし、
過去数十年に渡ってCPDで帝王切開をしたことは一度も有りません。
だって人間の胎児の頭にはヒビが入っていて、伸び縮みできるようになっているからです。
猿は1枚もので、伸び縮みしませんけれどね。
胎児が大き過ぎて生まれにくいことは有りますが、その場合は頭回りより腹囲が大きいのです。
だから事前に骨盤の写真を撮っても何もわからないのですから、とりあえず陣痛が来るのを待てばよいのですよ。

1人目のお産で帝王切開になる適応の3番目は、胎児仮死です。
これは避けにくいものですが、緊急で吸引分娩をしたり、
子宮の出口を伸ばしてあげたりすることで回避できることも有ります。
このタイミングの判断には熟練を要するので、一朝一夕では身に付かず、分娩介助の豊富な経験が必要なのですね。
ですが、自分で分娩介助をしている産婦人科の先生を知っていますか?
ほとんど助産師さん任せではないでしょうか?
そこがタマル産では帝王切開率が低い、一番の理由でしょうね。