タマルさんはナツメヤシ

タマルは女性の名。ナツメヤシの意味で多産を象徴。聖書には約束の地カナンは、蜜(ナツメヤシ)と乳(ヤギ)の流れる地とある。

無痛分娩考

2016-04-22 21:19:47 | 産科
写真は小さなお姉ちゃんとお兄ちゃん。
弟くんが生まれたのですよね。
ですが、もう退院になっちゃったね。
お姉ちゃんがとくにしっかりしていましたよ。

春は毎日のように、いろんな雑誌が送られてくるのですが、
今日のは、兵庫県産科婦人科学会の会報です。
若い頃は私もこの会で発表したりしていましたよ。

ざっと読んでいて興味を覚えたものに、神戸アドベンチスト病院のものが有りました。
しかもこの論文は、兵庫の学会賞をもらっているではありませんか。
どうもアドベンチストでは、分娩の半数が、硬膜外麻酔による無痛分娩のようですね。
私も麻酔科標榜医ですから、硬膜外麻酔も得意なのです。

ちなみにですが、普通の帝王切開の場合は、脊髄麻酔と言って、
背骨の中の、さらに脊髄という神経の束が走っている隙間に麻酔をするのです。
麻酔の針の穴から液体が浸み出すので、産後に頭が痛かったりするのですが、
硬膜外麻酔の場合は、その脊髄の外側に麻酔液を入れるため、
産後の頭痛は起こりません。

私は無痛分娩自体の経験は有りませんし、教科書的な知識だけなので、
この件は一般人と同じような立場で考えてみましょう。
無痛分娩は、フランスなどでも都会では主流のようですね。
ただしそれに反対の動きも有るのは言うまでもありません。
私の師と、勝手に呼んでいるミシェル・オダン先生は、自然なお産をさせてあげることで有名です。
それは、無痛分娩のような管理分娩とは真逆の考えから来ているのです。

前知識はそれくらいにして、アドベンチストの成績はどうだったのでしょうか?
無痛分娩群では、普通分娩群と比較して、
回旋異常の発生率、陣痛促進剤の使用率、吸引分娩の施行率のいずれも高く、
さらに分娩時間の延長がみられたそうです。
簡単に言えば、医学的な介入をしなかった方が、すっと生まれていたでしょうね、ということです。

ただし結論として結ばれているのは、
「痛みのない分娩を選択できることは、妊婦にとって大きな助けとなっている」
ということでしたよ。
ホントでしょうか?

一昨日、今日と赤ちゃんが生まれました。
生まれる前は、とっても騒いでいたのに、
その夜に回診に回った時のことです。
「さわいですみません、本当に感謝しています」みたいなことを言われていました。
騒ぐのなんて、まったく構わないのです。
そんなことより、苦労して赤ちゃんを産んだ、という自信が、その後の子育てに影響するのですよね。

まあ、私の考えは古いのかもしれませんね。
おそらく将来は、赤ちゃんも1人しか産まず、
しかも高齢になってからしか産まなくなるでしょうから、
無痛分娩は当たり前、もしくはいきなり帝王切開も当たり前、という世の中になることでしょう。
実際、諸外国ではそういう流れですから、日本でも時間の問題でしょう。

私もまったく無痛分娩を否定するものではありません。
中にはお産を非常に恐れている女性が居て、病的なことが有ります。
そういう場合は帝王切開よりは、無痛分娩の方がいいと、
他院を紹介したことも有りますからね。
だから適応を選べば、という前提付きで認めていけばいいことでしょう。

ただしタマル産には、苦労してでもちゃんと産みたい、という女性だけが来てくださいね。

連休は暦通りに外来診療を行っています。
祝日以外の土日も外来は開いていますからね。
もちろん連休中も予定日の方が何人も居られますから、陣痛ならいつでも来てくださいよ。

*******
孤独で、やるせなく、困難な立場で、
一番孤独な立場にいらっしゃるのが
神様なのです。
ですから神様は、
私たちの味方であり、協助してくださり、
同情してくださるということを
知らなければなりません。

   レバレンド・ムーン