パラグアイで日本人が開発にかかわった,大豆品種の話をしよう(その1)
パラグアイで植物品種保護制度に係る基本法が制定されたのが1994年。その登録第1号になったのが「Aurora」(登録番号001)「Uniala」(登録番号002)である。両品種は,1996年12月23日に申請がなされ,1997年1月30日に登録された。登録者は,農牧庁研究局地方農業研究センター(CRIA)である。日本からの技術協力「パラグアイ主要穀物生産強化計画」の成果品でもある。
◇来歴
イタプア地方で栽培されていたALA60の変異性に着目し,多収,茎かいよう病(カンクロ病)抵抗性を目標に選抜したものである。
1991/92年ALA60の約16,000個体の中から,草姿の良い172個体を選抜。1992/93年に172系統を養成し,草姿が良く,系統内の変異が少ない63系統を圃場で選抜し,冬季に幼苗接種検定で茎かいよう病抵抗性の17系統を選抜。1923/24年には17系統を生産力検定予備試験に供試し,収量性と抵抗性で6系統を選抜。1994/95年,1995/96年に地域適応性試験を行い,ALA-1-40及びALA-2-89が優良であることを認め,それぞれUniala及びAuroraと命名した。
◇Unialaの特性(具体的数値は省略)
長所は,草丈,熟期等が均一なこと。伸育型は有限,花色は紫,毛色は白,葉形は円葉,主茎長はALA60並み,種皮色は黄白で光沢があり,臍色は淡褐,百粒重は18g,外観品質は良い。早中生種に属し,開花期及び成熟期はALA60とほぼ同じ,収量性はALA60並みで高い。茎かいよう病圃場抵抗性は強,脂肪含有率23.0%,蛋白含有率39.6%(全窒素×6.25)である。適応地帯はイタプア地方。
品種名は,形質の均一性,Uniformeを強調して名づけた。
◇Auroraの特性(具体的数値は省略)
長所は,異形個体の混じりがなく,イグアス地方(アルトパラナ北部)で多収であること。
伸育型は有限,花色は紫,毛色は白,葉形は円葉,主茎長はALA60よりやや高い,種皮色は黄白で,臍色は淡褐,百粒重は18gでイグアスではALA60よりやや大きい。中生種に属し,開花期及び成熟期はALA60より4日遅い。茎かいよう病圃場抵抗性は強,脂肪含有率22.9%,蛋白含有率39.6%(全窒素×6.25)である。収量はCRIAではALA60よりやや劣る(3,456kg/ha,97%)が,CETAPARでは多収(4252kg/ha,108%)であった。適応地帯はアルトパラナ北部。
品種名は,パラグアイで育成した初めての登録品種の意味を込めて「燭光,あけぼの」と命名した。
◇品種育成の要因
短期間で育成できた要因を次のように述べている。
1.母材のALA60はすでに普及している品種で,優れた個体を含んでいた。
2.選抜の規模を大きくし,良い系統を選抜できた。
3.茎かいよう病による幼苗検定を実施し,生産力予備試験が実施できた。
4.干ばつ年に灌水を行い,多収条件での選抜ができた。
5.AuroraにつてはCETAPARでの試験で高い評価が得られた。
◇Auroraの名前を高めたイグアス農協
Auroraの豆腐加工適性が認められ,イグアス農協はG社と協力して日本への輸出を進めた。この間,ロットの確保や輸送中の品質劣化問題,周辺がGMO大豆に変わる中での非組換え品種Auroraの生産など多くの苦労があったと推察するが,日本では「パラグアイ大豆=オーロラ」と言われるほどに認知度が高まっている。
そして今,イグアスではAuroraの生産安定性を高めるための育種が続けられている。
育成従事者にはAntonio Schapovaloff, Eduardo Rodoriguez, Antonio Altamirano, Anibal Morel Casiano Altamirano, 古明地通孝,沢畑秀,協力者に関節朗の名前が記されている。
参照:土屋武彦2002「大豆育種専門家技術情報」パラグアイ大豆生産技術研究計画,JICA-MAG