「恵み野」にもカササギ
北海道恵庭市恵み野の拙宅にカササギが時々飛来する。
最初に気付いたのは令和4年(2022)のことで、カラスがゴミを漁りにきたのかと視線を向けると、カラスに似て頭は黒いが肩から腹にかけて白い。あれ、カラスの変異種かと一瞬思ったが、よく見ればカラスより少し小柄で尾が長く、ツートンカラーのスマートな体型である。ヨーロッパ中世のナイト(騎士)のようではないか。空を飛ぶ姿も羽ばたくと言うよりふわふわと滑空する。
最初の年は何時も2羽(つがい)で行動していた。向かいの家の屋根や電柱から拙宅の屋根、芝生の庭にも下り立つ。また、ある時は恵み野旭小学校の前でカラスに交じって地面の餌を漁る姿を観た。昨年(令和5年、2023)秋には4~5羽の飛来を観察、若鳥を伴っての来訪だったのだろうか。恐らくこの近くに巣を作り、繁殖したのだろう。これまで恵庭ではこの鳥を見かけなかったので、新たな生息域となったのかも知れない。
そして、令和6年(2024)新年早々にもやって来て「カシャカシャ」と鳴いた。中国の故事(鵲喜じゃっき、良いことが起こる前兆)にあるように、今年こそ良いことが起こる前兆だと思いたい。
写真に収めることは出来ていないが、鳥類図鑑等で調べると「カササギ」と思われる。散歩の途中、カササギの巣はないかと大きな樹を見上げる昨今だ。
*令和6年(2024)1月12日の北海道新聞投書欄に載った一枚の写真(「背中で一休み」恵庭市/竹尾さん)。背中に乗っている鳥はカササギに似ている。とすれば、この写真は何処で撮ったのだろう?
*令和6年(2024)1月16日の朝、カササギを写真に収めた。此のところ雪が降り続き除雪作業に追われる日々である。昨日と一昨日は除雪中に2羽を見かけたが、カメラを準備する暇もなく飛び去った。今朝は運よく4~5羽をカメラに捉えた(雪が舞う)。
**令和6年(2024)1月17日の朝、除雪をしていると鳴き声が聞こえたので見上げると1羽のカササギがいる。鳴き声に「キキキ」と返せば、「カシャカシャ」と応える。数回遊んだ後で写真を撮る(晴天)。
**令和6年(2024)3月16日、恵み野旭小学校の周辺で毎日のように見かける。大きな2羽、小型の4-6羽が近くに生息しているようだ。1月30日、隣家のゴミ箱をカラスが荒らした後にカササギがやってきて食べ物を漁った。また別の日に、街路樹の銀杏上部に巣の跡らしきものを見たが、カササギの巣だろうか。
◆カササギ(鵲、学名Pica pica、英名Magpie)
スズメ目カラス科に分類される鳥類(サギの仲間ではない)。佐賀県では鳴き声から「カチガラス」、福岡県では「コーライガラス(高麗烏)」とも呼ぶ。英語では「マグパイ」、賑やかな鳴き声から付けられた。中国には鵲喜(じゃっき、良いことが起こる前兆)という語があり、カササギの鳴き声は吉事の前兆とされている。
外見:カラスより一回り小さく、黒い頭と白い腹、青みを帯びた黒い尾が特徴。その羽毛は黒地に白い模様を持つ。
生態:雑食性。昆虫、ミミズ、貝類、魚類、カエル、果実類、穀物、豆類などを食べる。
人里を好み(山野には生息しない)、移動範囲が少なく同じ村に住み続ける。冬の間に大きな樹上(電柱など)に巣を作り、4~6月にかけて巣立ちする。若鳥は12月頃まで親と過ごすが、その後はツガイとなって縄張りをもつようになる。
脳の割合が大きく、鏡に映った姿を自分自身と認識できる能力(ミラーテストをクリア)を有すると言われる。
分布:北半球に広く分布しているが、日本では佐賀平野を中心とした狭い範囲に生息。地域を定めた国の天然記念物に制定され(大正12年佐賀県、福岡県)、佐賀県では県鳥(昭和40年)に指定し保護活動を進めている。佐賀県内に約9,000羽が確認されると言う。
近年、九州以外の北海道、新潟県、長野県、愛媛県などでも繁殖が記録されている。北海道では1984年に室蘭市や苫小牧市周辺で1~2羽が確認されて以降生息が確認された(堀本富宏2004「北海道胆振地域におけるカササギの記録」山科鳥類学雑誌36.1)。
人里を好み、山野には生息せず、移動範囲が少ないカササギの生息地域が何故拡大したのか。
酪農学園大学森さやか等は「九州のカササギのDNAは中国のものに近く、北海道のカササギDNAはロシアに生息するカササギDNAと一致」と解明した(2015)。カササギは、飛鳥時代に中国大陸から持ち込まれたという記録、17世紀に朝鮮半島から佐賀県に移入したと言われているが、北海道のカササギはロシアからの貨物船に乗って来たのではないかと推察されている。
*鵲の 渡せる橋に おく霜の しろきを見れば 夜ぞ更けにける (大伴家持、新古今和歌集、小倉百人一首)
鵲の橋/天の川:中国の七夕伝説では、織姫と彦星を七夕の日に逢わせるため、沢山のカササギが翼を連ねて橋を作ったとされる。
写真は竹下信雄「日本の野鳥」から引用