豆の育種のマメな話

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近畿大学理工学部・バイオコークス研究所 公開講座2017 in恵庭

2017-06-19 17:34:14 | 講演会、学成り難し・・・

平成29年6月17日(土)13:00~15:40,恵庭市民会館で「私たちのくらしに生かす工学~KINDAIから次世代へ~」をテーマに公開講座が開催された(後援:恵庭市・恵庭市教育委員会,恵庭市長寿大学認定講座)。

これまでにも恵庭市では下記の公開講座が開催され、聴講する機会があった。今回はそれらに次いでの聴講である。片田舎の恵庭にあって,第一線の研究者から新鮮な情報を聞けるのは有難い。

①    山口仁宏「光る有機化合物」、伊木雅之「骨折予防で健やか長寿」(平成27年6月13日)

②    岡田志麻「心身のエネルギー回復,睡眠について考える」、沢井徹「暮らしの中のエネルギー」(平成27年9月12日) 

③    南武志「古代ロマンと分析化学の楽しみ」,井田民男「北海道から発信する最先端のゴミ焼却処理について」(平成28年7月9日) 

④    麓 隆行「コンクリートのミカタ」,藤原 尚「KINDAI理工学部~未来への挑戦~」(平成28年9月17日) 

◆渕端 学「炎と熱の話」

講座の内容について,講師は「暖をとったり料理をしたり車を動かしたりするために,人々は「燃料を燃やす」ということを普段なにげなく行っています。しかし,そうした目的のために燃料を思い通りに燃やすのは,実は難しいことなのです。この講座では,燃料が燃えるとき科学的に何が起きているか,火が燃えるときの燃料と空気と熱エネルギーの関係などについて解説します」と語りかけた。

燃えるという現象,熱の伝わり方,効率的な燃焼法,燃料素材などについて平易に語られた。「小学生の頃,ローソクの炎で実験したことがあったね」と遠い昔を思い出した方も多かったのではないだろうか。聴講者は高齢者が多かったが、実生活における科学を体感したことだろう。

◆竹原幸生「超高速ビデオカメラで見る一瞬の世界」

講座の内容について,講師は「近畿大学では平成3年に4,500枚/秒,平成13年に100万枚/秒の当時世界最高速のビデオカメラを開発し,平成23年には1,600万枚/秒を実現しました。その超高速ビデオカメラで撮影された,シャボン玉が割れる瞬間や物体が粉々になる瞬間など肉眼で捉えられない様々な高速現象をメインに,現在多彩な分野で活用されている超高速ビデオカメラを紹介します」と語りかけた。

高速カメラが,ここまで進展していることを知らなかった。高速撮影で瞬時の現象をゆっくり見せるという物理的原理は理解できても,1秒間に1,600万枚撮影するメカニズムは筆者の理解度を超えるもので,感嘆するしかない。超高速ビデオカメラで撮影したいくつかの高速現象をスライドで示されたが,誰もが食い入るように見つめていた。

若いころ,マメの莢がはじける現象を観察したことがあったが,これだけの超高速ビデオカメラが存在していたら,もっと違ったアプローチがあったかも知れないと,ふと思った。

◆近大公開講座

最近,近畿大学の名前をよく耳にするようになった。例えば,「近大マグロ」「バイオコークス」などである。関西の小さなローカル大学に過ぎなかった近畿大学が90年の歴史を経て,何故に志願者数第1位の総合大学になったのだろうか?

筆者の勝手な解釈では,初代総長時代から受け継がれる「実学教育」の思想のもと,研究所・研究施設を整備し,大学発ベンチャー企業の数々を世に先んじて生み出した実績があったからだろうと思う。何しろ,マスコミ出現度が極めて高い。つんく♂プロデユースによる入学式などマスコミ受けする企画も若者には人気があるようだ。

拙宅を恵み野に建築したころ,隣接地は近畿大学農学部用地だと聞いていた。しばらく空き地のままであったが,一部は住宅地になり,現在はバイオコークス研究所,セミナハウスが建っている。そして,太陽光パネルが並んでいる。

本研究所の周辺を時折散歩するが,外観からはそこで行われる研究内容を理解できない。住民も「何をやっているのだろう?」と考える。公開講座の開催は,その疑問に応える一手段。公開講座を次年度も続けて欲しいものだ。

◆参考、関連記事

〇近畿大学公開講座2019(後期)in恵庭:拙ブログ「豆の育種のマメな話」2019.9.29

〇近畿大学公開講座2019(前期)in恵庭:拙ブログ「豆の育種のマメな話」2019.7.7

〇近畿大学理工学部バイオコークス研究所公開講座2016 in恵庭:拙ブログ「豆の育種のマメな話」2016.9.18

〇近畿大学バイオコークス研究所公開講座、エネルギーを考える:拙ブログ「豆の育種のマメな話」2015.9.14

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西伊豆の小さな漁村戸田港と「造船郷土資料博物館」

2017-06-02 11:33:19 | 伊豆だより<歴史を彩る人々>

5月中旬、伊豆急下田駅前から、松崎、堂ヶ島、土肥温泉を経て戸田に向かった。伊豆半島西海岸を北上する各駅停車のバス旅である。東海バス堂ヶ島行きは、伊豆急下田駅前を10時発、稲生沢川に沿って進み、蓮台寺、箕作、婆姿羅峠を経て松崎に入る。松崎1050分着、松崎バスターミナルで修善寺行きに乗り換える。堂ヶ島、田子、安良里、宇久須など漁村に立ち寄りながら土肥温泉へ。土肥温泉1150分着。

土肥温泉から戸田へ向かうバスの便数は少ない。バス停近くの松原公園で弁当を食べ、13時発の戸田行きに乗車する。バスは海岸線に沿って山道を抜け、戸田村(現在、沼津市戸田)に入る。1330分戸田着、下田からは3時間半の道程。戸田へのアクセスは、沼津または修善寺からの方が便利であるが、今回は下田からのコースを辿った。

戸田村は平成17年沼津市に併合され、沼津市戸田地区と呼ばれるが、現在戸数1,400戸余り、人口3,000人弱、地理的にも独立した集落で、戸田村と呼んでもおかしくない長閑な漁港に見える。下田で生まれ育ち、北海道に暮らす今でも年に34回は下田を訪れるが、戸田に立ち寄ることはこれまで一度もなかった。今回、戸田港を訪れようと思ったのは、開国の歴史の中で裏舞台となった入江を見ておきたいと思ったからである。

戸田港は、ロシアのプチャーチン提督率いる軍艦「デイアナ号」が安政大地震による津波で破損し(日本との国交交渉のために下田港に停泊していた)沈没した折、ロシアの技術者と当地の船大工たちが協力して日本初の洋式帆船「ヘダ号」を建造した所縁の場所である。その資料は、この地区の「沼津市戸田造船郷土資料博物館」「造船記念碑」「宝泉寺(プチャーチン宿泊所)」「大行寺(日露条約修正交渉場所)」などで見ることが出来る。

江戸幕府がデイアナ号の修理港として戸田を選んだのは、当時ロシアがクリミア戦争でイギリス・フランスと敵対関係にあったため、外洋を航海するイギリス・フランス艦隊に見つからないよう、この港を指定したのだと言う。確かに、戸田港は御浜岬によって包み込まれるように覆われ、駿河湾から戸田港は見えない。御浜岬の松林が裏山と一体化して、港の存在を消しているのだ。

造船郷土資料博物館は御浜岬の先端近く、松林の中にある。岬の内湾に面しては、諸口神社、御浜海水浴場となる波静かな砂浜が続いている。

造船郷土資料博物館には、デイアナ号の津波による被災から沈没、さらにヘダ号建造に至るまでの経過が紹介されている。入口の外には、向かって右側に「デイアナ号の錨」が置かれ、左側に「日ソ友愛の像」が建っている。駿河湾から引き揚げられたデイアナ号の錨を野晒しにしてあるのかと思いながら写真に収める。館内には、デイアナ号やヘダ号の模型、ヘダ号建造時の資料などが保管され、当時の動きを知ることが出来る。

戸田港は日本近代造船発祥の地とされる。沈没するデイアナ号から運び出された「スクーナー型」と言われる帆船の設計図をもとに、近隣の船大工たちが言葉の壁を乗り越え、韮山代官江川英龍建造取締役のもと僅か3か月で100トンほどの帆船(ヘダ号)を造り上げたのである。さらに、同タイプの船(君沢型)6隻が建造され、幕府は函館などに配備したという。ヘダ号建設に係った船大工たちは、各地で造船技術の普及指導にあたった。

プチャーチン一行はヘダ号でロシアに帰国したが、プチャーチン及びその子孫と戸田村民との友愛はその後も続くことになる。本稿では触れないが、興味ある方は拙ウエブログ「豆の育種のマメな話」から下記の項目を参考にされたい。

①   プチャーチン、日本を愛したロシア人がいた(2014.5.17

②   橘耕斎、幕末の伊豆戸田港からロシアに密出国した男(2013.5.27

③   日露交渉の真っ最中、下田を襲った安政の大津波(2012.9.28

 

博物館から岬内の遊歩道を通り、内浦湾に沿って市街地まで歩く。途中で「造船所跡の碑」を眺め、市街地までの所要時間は約30分。磯割烹の宿「山市」では戸田温泉につかり、駿河湾深海の「タカアシガニ」を味わった。

駿河湾は日本一深い湾であるという。戸田には、深海魚や深海のタカアシガニなどを見よう、食べようと訪れる旅人が増えている。最近は深海魚の方が戸田観光の主役かも知れないが、長閑な自然の中で開国外交の裏舞台となった戸田の歴史に触れてみるのも面白い。

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