標記公開講座が、2019年9月28日恵庭市民会館において開催された。恵庭市南島松地区にある近畿大学理工学部バイオコークス研究所の主催講座である(後援、恵庭市・恵庭市教育委員会)。今回のテーマは「新しい時代と街づくり 私たちのくらしを支える最先端技術 ~KINDAIから次世代へ~」とある。
講演は、池上博司(医学博士、内分泌・代謝・糖尿病内科)近大医学部主任教授「健康長寿と生活習慣病」、本村元造(芸術学修士、絵画)近大文芸学部 学部長 教授「ガラス工芸と北海道」、岩岡浩二(芸術学修士、絵画)近大文芸学部教授「写実的絵画の基本ルールとトリックアートについて」の3題。市民会館大会議室を埋めた受講生は熱心に耳を傾けていた。今回は理工学部以外の他分野にテーマを広げたことが新たな参加者の心をつかんだのかもしれない。恵庭でこのような公開講座が開催されることは有難い(参加者は高齢者に偏っているけれども)。
◆池上博司「健康長寿と生活習慣病」
日本人の平均寿命は、男81歳、女87歳。健康寿命が男72歳、女74歳なので、その差は男8.8年、女12.4年である。平均寿命と健康寿命は年々伸びてきたがその差は縮小していない。人生百年時代を迎えて、寿命の中身、すなわち健康寿命を如何に伸ばすかが課題となっているが、健康寿命を縮めている大きな要因には糖尿病をはじめとする生活習慣病がある。糖尿病患者は世界で4億2,500万人、中でもアジア圏が37%を占める。どうも日本人はインスリンを出す力が弱く、糖尿病になり易い体質であるらしい(研究結果がる)。食生活、適度な運動など、健康長寿を達成するための生活習慣病対策について解説。
◆本村元造「ガラス工芸と北海道」
ガラスを使った芸術活動が、どのように誕生し、アールヌーボーの時代を経て現代のガラスアートに繋がった歴史を述べ、現在の代表的な作家の作品についても解説。また、日本のガラスアートについて貢献した北海道のガラス文化(北海道近代美術館、当別町のスウエーデン交流センターガラス工芸工房、北海道立工業試験場、小樽の北一硝子等の活動)についても紹介があった。冊子資料の作品(写真)に触れて、ガラス製作品の多様さ、美しさ、芸術性の高さに圧倒された。
◆岩岡浩二「写実的絵画の基本ルールとトリックアートについて」
黄金比、光強弱の協調など実例を示し、写実的絵画はどのような仕組みで描かれているか、リアルに見せる描写のコツと構図の仕組みについて解説。「空気の色」と言う表現が新鮮であった。また、トリックアートについて説明されたが、だまされる楽しみ(遊び心)も芸術の一分野か。最後の一枚(トリックアート)では「何故そうなっているの???」と、モヤモヤ感を曳きずって家路についた。
なお、近畿大学理工学部バイオコークス研究所は恵庭市南島松にある。拙宅をこの地に建築した頃(1992年)、家の裏には広大な空き地があり近畿大学農学部の用地であると聞いていたが、そのうちに農学部移転は取りやめになり一部は住宅地に、一部は実験農場(資源再生研究所)になっていた。近畿大学では2008年に次世代バイオ固形燃料の開発を目指すバイオコークス量産実証実験センターを開設し、2012年には農学部所管の資源再生研究所と理工学部所管のバイオコークス量産実証実験センターを統合して、バイオコークス研究所を開設した。同研究所の基礎研究基盤は近畿大学東大阪キャンパスにおかれ、恵庭では農業用バイオコークスボイラーによる熱利用に関する実証研究が主体になっているという。
◆近畿大学公開講座in恵庭(受講録)
<2019>
1.原田 信「新元号の由来とその意義」(近畿大学2019.6.29)
2.冨田義弘「再生可能エネルギー、バイオコークスを有効活用した新しい街づくり」(近畿大学2019.6.29)
3.池上博司「健康長寿と生活習慣病」(近畿大学2019.9.28)
4.本村元造「ガラス工芸と北海道」(近畿大学2019.9.28)
5.岩岡浩二「写実的絵画の基本ルールとトリックアートについて」(近畿大学2019.9.28)
<2018>
1. 浅野和典「鋳物~5000年の歴史と今のくらしを支える最新技術~」(近畿大学2018.6.9)
2. 菊井康順「身近な暮らしを支える資源循環型社会への取り組み~バイオコークスの挑戦~」(近畿大学2018.6.9)
<2017>
1. 渕端 学「炎と熱の話」(近畿大学2017.6.17)
2. 竹原幸生「超高速ビデオカメラで見る一瞬の世界」(近畿大学2017.6.17)
3. 森澤勇介「非破壊分光分析~甘くないみかんが消えた訳~」(近畿大学2017.9.30)
4. 中野人志「レーザー光線の性質と身近な応用例」(近畿大学2017.9.30)
<2016>
1.南 武志「古代ロマンと分析化学の楽しみ」(近畿大学2016.7.9)
2.井田民男「北海道から発信する最先端のゴミ焼却処理について」(近畿大学2016.7.9)
3.麓 隆行「コンクリートのミカタ」(近畿大学2016.9.17)
4.藤原 尚「Kindai理工学部~未来への挑戦~」(近畿大学2016.9.17)
<2015>
1.山口仁宏「光る有機化合物の話(近畿大学2015.6.13)
2.伊木雅之「骨折予防で健やかな長寿」(近畿大学2015.6.13)
3.岡田志麻「心身のエネルギー回復、睡眠について考える」(近畿大学2015.9.12)
4.澤井 徹「暮らしの中のエネルギー」(近畿大学2015.9.12)
◆参考、関連記事
〇近畿大学公開講座2019(前期)in恵庭:拙ブログ「豆の育種のマメな話」2019.7.7
〇近畿大学理工学部バイオコークス研究所公開講座2017 in恵庭:拙ブログ「豆の育種のマメな話」2017.6.19
〇近畿大学理工学部バイオコークス研究所公開講座2016 in恵庭:拙ブログ「豆の育種のマメな話」2016.9.18
〇近畿大学バイオコークス研究所公開講座、エネルギーを考える:拙ブログ「豆の育種のマメな話」2015.9.14