アジサイの老化現象?
アジサイの名前を知ったのは子供の頃だったと思う。生家が奥伊豆の山奥にあったので、子供の頃は野山を駆け巡っていた。「これは何という花?」自然の中で子供の興味は尽きることを知らない。そんな子供に、「アジサイだよ」誰もが親切に教えてくれた。いま思えば、それは「ガクアジサイ」であるが、天城山系には野山のあちこちに自生していた。
時を経て学生の頃、「シーボルトは日本植物誌の中で、アジサイに妻(楠本 滝Otaksan)の名前を付けて学名Hydrangea otaksa と紹介している」と、植物学の教授から聞いた。いや、朋友羽柴兄の蘊蓄だったかも知れない。アジサイを見るたびにこの逸話を思い出す。牧野富太郎がこのことを不快に感じたとしても、シーボルトとお滝さんの悲しいロマンスと解釈しようがどちらでも良い。
そして、今から20年ほど前になるが、北海道で家裏に3株の「あじさい」を植えた。早生、中生、晩生の苗木を選んだが、品種名は覚えていない。
「アジサイは梅雨のころ咲く」と雨に濡れたイメージが強かったが、北海道では開花が8月になってしまう。「梅雨にアジサイ」の映像は儚く崩れてしまった。中でも晩生種は十分花を着けない年があったのと生育領域が大きくなったため掘り起こして淘汰した。現在は2株のみだが、花後の剪定と数年おきの切り戻しで毎年大きな手毬のような花を着ける。
拙宅アジサイの花色は薄青色だが、秋になると次第に赤みを帯びて来る。しかし今年は特別で、9月末から10月に入ると濃い赤紫色に変化した。花が終わったら例年のごとく剪定で切り詰めようと計画しているが、切るのが忍びなくてまだ花を眺めている。
アジサイは土壌のpHによって花色が変わり、一般に「酸性ならば青、アルカリ性ならば赤」になると言われていることは知っていたが、今年は初めて見る濃赤紫色に変化した。従来の概念とは、どうも違う現象ではないか。
(写真は2024.10.10撮影)
◆花の老化?
調べていたら、「花色は開花から日を経るに従って徐々に変化する。最初は花に含まれる葉緑素のため薄い黄緑色を帯びており、それが分解されていくとともにアントシアニンや補助色素が生合成され、赤や青に色づいていく。さらに日が経つと有機酸が蓄積されて行くため、青色の花も赤味を帯びるようになる。これは花の老化によるものであり・・・」(武田幸1996)とあるではないか。
老化、老化・・・・なるほどと我が身を振り返った。
今年、初雪の声を聴く頃になってもアジサイが健在なのは、夏が長かったからだろう。秋咲きの菊の開花も遅れている。
◆アジサイ(紫陽花、学名 Hydrangea macrophylla)
アジサイ(紫陽花、学名 Hydrangea macrophylla)は、アジサイ科アジサイ属の落葉低木(樹木図鑑や北海道の森林植物図鑑ではユキノシタ科アジサイ属)。一般に見られるのは原種ガクアジサイから改良した園芸品種で、6~7月にかけて開花し、白、青、紫または赤色の萼が大きく発達した両性花(飾り花)をもつ。ガクアジサイではこれが花序の周辺部を縁取るように並ぶが、改良種は飾り花が手毬のようになったものが多い。わが家のアジサイも花序が球形の「手まり咲き」アジサイである。
ガクアジサイの自生地は、房総半島・伊豆半島・伊豆諸島の沿岸など。ところが北海道にも、鮮やかな瑠璃色の花が美しい「エゾアジサイ」が生育しているそうだ(北海道の森林植物図鑑1976)。
下田公園(下田城址)には約15万株、大阪府民の森、神戸市立森林植物園、舞鶴自然文化園に約5万株のアジサイが植えられていると言う。下田市の花。
紫陽花に 雫あつめて 朝日かな 加賀千代女
紫陽花や 雨に化けたる 雨上がり 正岡子規