豆の育種のマメな話

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近畿大学理工学部・バイオコークス研究所 公開講座2016 in恵庭

2016-09-18 11:25:49 | 講演会、学成り難し・・・

平成28年9月17日(土)13:00~15:40,恵庭市民会館を会場に「人の暮らしを守る近大理工」をメインテーマとする公開講座(後援,恵庭市・恵庭市教育委員会)が開催されたので聴講した。今回は,麓 隆行准教授,藤原 尚教授の講演である。

実は,昨年度も公開講座(6月13日,山口仁宏「光る有機化合物」,伊木雅之「骨折予防で健やか長寿」)(9月14日,岡田志麻「心身のエネルギー回復,睡眠について考える」,沢井徹「暮らしの中のエネルギー」)が開催され聴講の機会があった。また,本年度の公開講座(7月9日,南武志「古代ロマンと分析化学の楽しみ」,井田民男「北海道から発信する最先端のゴミ焼却処理について」)も受講したが,今回はそれらに次いでの聴講である。

片田舎の恵庭にあって,第一線の研究者から新鮮な情報を聞けるのは有難い。

◆麓 隆行「コンクリートのミカタ」

演題から受けた第一印象は,コンクリートの話には違いないが,「ミカタ」とは何だ? コンクリートの強度とか保持にとって有益な条件でも語るのかと想像したが,演者が意図したのはそう言うことではなかった。

演者は,具体的な事例を提示しながら,コンクリートの成り立ち(何でできているのか,なぜ劣化するのか),コンクリート技術の発展(何が分かっているのか,何が発展しているのか)について語り,「コンクリートの見方を知って,コンクリートの味方になってほしい」と結んだ。講演は「コンクリート工学概論」ともいうべき内容で,写真説明も多く,専門用語も極力抑え分かり易く話されたので,受講生の理解度は高かったと思われる。

冒頭の疑問は「なんだ,関西風のしゃれか」と面白くなかったが,街中でコンクリート建造物を目にしたら,今日の話を思い出すに違いない。

◆藤原 尚「Kindai理工学部~未来への挑戦~」

太陽光を効率的に利用する方法を,「光物質変換」(太陽光を利用して新しい物質を作り出し,物質に含まれるエネルギーを利用する),「光エネルギー変換」(光を電気エネルギーに変える太陽光発電),及び「省電力素材」(少ないエネルギーで動作する効率的な素材の創造)など多様な研究分野が協力して取り組んでいる事例を開設された。異分野の研究者が不可能と思われる課題に挑戦することこそ,科学の進歩につながるとの信念があるのだろう。

藤原教授は,赤い水溶液を示しながら,「これが何かわかりますか? 金ですよ。金が金属ナノ粒子の状態で溶けているのです」。そして,金属ナノ粒子で太陽光パネルの効率を上げることが出来ると説明する。さらに,高分子で金属を覆うナノチューブについて解説する。

応用化学は素人にとってかなり難解である。この講演会では,光触媒となる「二酸化チタン」,構造は同じだが重ね合わせることが出来ない分子(異なる性質をもつ)「キラル」の言葉だけが脳裏に残った。

◆近大公開講座

最近,近畿大学の名前をよく耳にするようになった。例えば,「近大マグロ」「バイオコークス」などである。関西の小さなローカル大学に過ぎなかった近畿大学が90年の歴史を経て,何故に志願者数第1位の総合大学になったのだろうか?

筆者の勝手な解釈では,初代総長時代から受け継がれる「実学教育」の思想のもと,研究所・研究施設を整備し,大学発ベンチャー企業の数々を世に先んじて生み出した実績があったからだろうと思う。何しろ,マスコミ出現度が極めて高い。つんく♂プロデユースによる入学式などマスコミ受けする企画も若者には人気があるようだ。

拙宅を恵み野に建築したころ,隣接地は近畿大学農学部用地だと聞いていた。しばらく空き地のままであったが,一部は住宅地になり,現在はバイオコークス研究所,セミナハウスが建っている。そして,太陽光パネルが並んでいる。

本研究所の周辺を時折散歩するが,外観からはそこで行われる研究内容を理解できない。住民も「何をやっているのだろう?」と考える。公開講座の開催は,その疑問に応える一手段。公開講座を次年度も続けて欲しいものだ。

◆参考、関連記事

〇近畿大学公開講座2019(後期)in恵庭:拙ブログ「豆の育種のマメな話」2019.9.26

〇近畿大学公開講座2019(前期)in恵庭:拙ブログ「豆の育種のマメな話」2019.7.7

〇近畿大学理工学部バイオコークス研究所公開講座2017 in恵庭:拙ブログ「豆の育種のマメな話」2017.6.19

〇近畿大学バイオコークス研究所公開講座、エネルギーを考える:拙ブログ「豆の育種のマメな話」2015.9.14 

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平成28年度「北海道文教大学公開講座」を聴講して

2016-09-10 12:03:28 | 講演会、学成り難し・・・

北海道文教大学(鶴岡学園,恵庭市)の公開講座を受講した。本プログラムは,同大学が一般社会人を対象に生涯学習を支援する目的で実施する,公開講座である。学園創立75周年記念ということで,多岐にわたる49講座が設定されていた。その構成と内容は以下のとおりである。

「現代と人間」をテーマに,国際言語学科及びこども発達学科から5講座

「社会と言葉」をテーマに,国際言語学科及びこども発達学科から9講座

「健康と食,健康に過ごすために」をテーマに,健康栄養学科から7講座

「健康と医療,長寿を全うするために」をテーマに,作業療法学科,理学療法学科及び看護学科から19講座

「子育てと教育」をテーマに,こども発達学科及び作業療法学科から9学科

8月24日~9月10日に集中してカリキュラムが組まれ,講座選択制,事前予約制のシステムで実施された。テーマの設定を概観すると,大学が「地域と共生する学園」を目指して取り組もうとしている姿勢と熱意を強く感じた。

さて,筆者は以下の9講座を受講した。日程調整がつかず残念ながら受講できなかった講座も多い。聴講した講座はいずれも満足度が高いものであった。

◆8月24日「知って知らない日本語」(小西正人)

①日本語の文法(「です」の過去形が「でした」になるケースとならないケース,「ために/ので/から」の使い分け,日本語における述語の特徴),②日本語の音(アクセントの問題),③日本語の文字,④言葉の修得(試行錯誤説,間違い直し説,真似説,拡張説,赤ちゃん言葉説),⑤日本語の方言(東西方言差,北海道方言の変遷),⑥間違った日本語(「全然」と否定,「ら」抜き言葉)について解説された。日本語は難しいなあ・・・。

◆8月25日「Think Globally! グローバルに考える,今日の世界はどんな世界?」(Sarah Richmond,三ツ木真実)

私たちの知識は過去の体験やマスコミの報道に影響され,間違ってインプットされている場合が多い。世界を見る目も然り,移り行く真の情報を如何に入手するかが問われる。バイリンガルな能力,複眼的視点,グローバルな思考について思いを巡らす機会となった。

講義は英語と日本語で行われ,グループ討議型式で進められた。外国語から遠ざかること久しいわが耳は,講義が終わる頃になってようやく反応し始めた。

◆8月29日「多様性を尊重する社会,カナダに学ぶこと」(佐野愛子)

講師は,カナダなど海外生活や通訳の体験を通じて得たこととして,多様性を尊重する社会こそ成熟社会と言えるのではないかと語り,わが国におけるバイリンガル教育の重要性を指摘した。

◆9月1日「認知症の知識と家族ケア」(鹿内あずさ)

「高齢者に多い病気」概観から説き起こし,「認知症の原因疾患と行動の特徴」「診断・治療」「家族ができるケア」について解説された。認知症の人への関わり方,地域包括支援センターの活動実態等が情報提供された。

◆9月2日「キャリア・デザイン,図表で自分史を理解してみませんか?」(森谷一経)

このような研究領域があるのか? と感じながらの聴講だった。人生にはいろいろな節目があり,己の生き方を振り返る機会でもある。自分史を整理することは,人生の最終段階で重要な意味を持つのかもしれない。

◆9月5日「腰痛に対するリハビリテーション」(金子翔拓)

「腰痛の病態」「原因」「病態に適したストレッチング」について,写真と実技で解説された。以来,固くなった体を柔軟にしようと,15~30秒のストレッチを続けている。

◆9月8日「認知症になったらどうしよう・・・」(池田官司)

「認知症の定義と診断」「アルツハイマー型・血管性・レビー小体型・前頭側頭型の原因と症状」について解説し,介護の考え方を述べた。「認知症の世界を理解する,プライドを尊重する,感情を理解する」ことが重要であり,「指摘しない・議論しない・怒らない」ことが対応の原則であると指摘した。

◆9月9日「エゾナキウサギの生態と保護」(矢部玲子)

講師自身の体験を踏まえながら,エゾナキウサギの生態,保護活動の実際について述べられた。多くの方が,エゾナキウサギについて名前は知っているが,詳しくは知らないというのが実情だろう。北海道固有種であるエゾナキウサギ保護のためには,天然記念物指定などの方策が考えられるが,これもなかなか難しい。開発と環境保護の考え方が多様な中で,さてどうするのか?「緑が残って人類は滅亡した」とならないように。

◆9月9日「認知症予防と作業療法」(奥村宣久)

作業療法の意義について解説し,「歩くこと」(正しい歩き方)の提案があった。

一部の講座は恵庭市長寿大学の単位講座に指定されており,多くの受講者が詰めかけた。一方,一般講座の中には受講生数名という講座もあったが,講師の先生方は熱意を込めて語り続け,受講生は身を乗り出して聴講していた。大学当局が出席率をどう評価するか分からないが,次年度以降も多岐にわたるプログラムを設定して欲しいものだ。一聴講生の希望である。

平成27年度5講座,平成26年度4講座を加えると,本年度で18講座を聴講したことになる。公開講座を契機にして,初めて北海道文教大学の存在を認識し,そこで学ぶ若者たちの姿にも触れることが出来た。地元の高等教育機関による公開講座は有難い。

講座の多くは,片道40分の道程を歩いて通った。さすがに今年の暑さは尋常でなく,日陰を探しながらの通学であったが,最終日には「これで夏が終わった」と実感したのも事実である。

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