先住民グアラニーは多くの神話を伝承してきた
今でもパラグアイのママたちは,
「さあ,シエスタ(昼寝)の時間ですよ。ジャシ・ジャテレ* がいるから外に出ては駄目,静かにシエスタしましょう」
「一人で遠くまで行ったらいけません。ジャシ・ジャテレ* に森につれて行かれますよ」
と,妖怪を引き合いにして悪戯を戒めている。
ジャシ・ジャテレ*(Jasyjatere、Yasí-Yateré)は,グアラニーの神タウとケラナの子供の一人で,ウエーブがかかった金髪の裸の子供の姿をしていて,鳥の鳴き声に似た口笛を吹きステッキを鳴らしながら昼休みの時間に一人で彷徨い,子供たちをおびき寄せ森に連れて行く。連れて行かれた子供たちは,惚けてしまい耳や口が聞こえなくなってしまう1)そうだ。 ところで,タウ(Tau)は悪の心を持つ神,ケラナ(Kerana)は並外れて美しい眠りの女神とされる。彼らには,先のジャシ・ジャテレを含め7人の子供があり,それぞれが神話の主人公として語られる1)。
1番目:テジュ・ジャグア(Tejú-jaguá)
2番目:ボイ・トウイ(Mboi-tuí)
3番目:モニャイ(Moñai)
4番目:ジャシ・ジャテレ*(Jasyjatere、Yasí-yateré*)
5番目:クルピ(El kurupí)
6番目:アオ・アオ(Ao-ao)
7番目:ルイソン(Luison)
例えば,テジュ・ジャグア(Tejú-jaguá)
Tejú-jaguá: Personaje mitológico con cuerpo de lagorto y cabeza de perro(Nataria Krivoshein y Fericiano A. Alcaraz編辞典;トカゲの胴体とイヌの頭をもった神話上の人物,モンスター),これは辞書の説明。手元の資料1)を要約すれば,洞窟の主で,果物と果樹の守り神。夜行性で夜になると狂暴になり恐ろしいうなり声をあげる。草食にもかかわらず,夜道を歩いている人間を捕まえては食べてしまうと言う。(写真はアスンシオンの民芸店で購入したバルサ材の「テジュ・ジャグア」)
例えば,ボイ・トウイ(Mboi-tu’i)
Mboi-tu’i : Ser mitológico, enorme animal con cuerpo de reptile y cabeza de loro(Nataria Krivoshein y Fericiano A. Alcaraz編辞典;爬虫類の胴とオウムの頭をもった巨大な神話上の動物)。胴体は巨大なヘビで,サソリのような毒を出すしっぽと,オウムのような嘴をもっている。大きな沼に住み,林や草の中で目立たず,果物だけを食べ,消して姿を見せない。水生動物,両生動物,霧,露,花の守り神1)。(写真はアスンシオンの民芸店で購入したバルサ材の「ボイ・トウイ」)
例えば,クルピ(El kurupí)
El kurupí : Ser mitológico, protector de bosques y animals silvestres, raptor de mujeres y niños(Olga Troxler Vda.編辞典;森と野生動物の守護神,女性と子供の誘拐者,神話上の存在)。森に住み,滅多に姿を見せない。背が低く,醜く,黒い目,日焼けした黒い肌,髪は黒く真っ直ぐ伸びている。好色家で巨大な男根を体に巻きつけている(辞書には神話博物館由来の挿絵がある)。
受胎の守護神でもあり,豊穣,恵みの雨の神でもある。クルピが牛の腹に触ると双子の子牛が生まれ,クルピが休んだところのマンジョカ(キャッサバ)やバタタ(サツマイモ)は見間違うほど大きくなったと言う。
森の守護神であるクルピは,必要以上に木を切り倒して森を破壊する人々には罰を与え,人々は道に迷い永遠に森を彷徨い続けることになるのだと言う。クルピの足が反対を向いているのは,彼を捕まえようとする人間から逃れるためだとされる1)。(写真はアスンシオンの民芸店で購入したバルサ材の「クルピ」)
参照:アスンシオン民芸店で入手した説明文(3枚のペーパー,出典不詳)を参照した。原典を確認していない。
追記2023.12.26
*匿名さん(2023.12.25)から、ジャシ・ジャテレ(Jasyjatere、Yasí-Yateré)についてコメントを頂きました。有難うございます。
本文は参照資料の訳文(日本語)をそのまま引用ししましたが、グアラニー語では「ジャス・ジャテレ」と発音するとのご指摘です。
また、この資料では「Yasí-Yateré」となっていますが(西語表記したものでしょう)、辞典にあるように「Jasyjatere」を使った方が良いと思います。
参考までに、「Gran Diccionario Guarani-Espanol」TEA S.R.L.2004 の「Jasyjatere」項目ページを引用させて頂きます。