豆の育種のマメな話

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隣地の雑草

2013-10-17 16:14:50 | さすらい考

現在住んでいるのは,1980年代後半に造成が始まった都市近郊の住宅地である。ここに家を建て,住み始めてから20年。公園や通りの木々も驚くほど大きくなった。周辺の家々も年数を経て,手入れの行き届いた庭ごとに住人(多くは年老いてきたが)の歴史が刻まれ,街自体がそれなりの落ち着きを見せ始めている。「花の街」を標榜しているこの町は,各戸の庭先に多種の花々が植えられ,花を愛でる人々が散策している。

ところで,宅地開発から相当の年月が経った今も,家の近くには空き地(それぞれ一戸分)が数か所残っている。土地の所有者が,いつの日か此処に家を建て住もうと考えているのか,売却を模索しているのか知らないが,周辺住民には雑草管理が気になるところだ。

一か所は,年に一度所有者が除草剤を散布する。作業は朝早く周辺住民の誰もが気が付かないうちに済ませている。雑草を刈らずに除草剤を散布するので,数日後には雑草がしおれ始め除草剤を撒いたなと気づくことになる。最後は枯草が覆う空き地となる。市販の除草剤(非耕地用)で安全性は保障されると言われているものの,(とやかく言うこともないが)奥様方には必ずしも評判が良くない。

もう一つの空き地は宅地業者の所有で,年配の作業員が年に一度草刈りに来る。草が伸びきった初夏の頃,刈り払い機の音が響くので「作業をしているな」と誰もが気づく。借り倒した草を搬出してほしいが,そのまま放置されることも多い。

そして夏が終わる頃,隣接した二つの空き地は全く異なる様相を見せることに気が付いた。再生した草種が違うのだ。機械で刈った方は多様な草種がそのまま再生しているのに対し,除草剤を散布した方はエノコログサが主体になり草の種類が極めて少ない。素人目にも明らかな違いだ(写真)。

この要因を推察するに,除草剤散布の空き地は殆どの雑草が枯れてしまうが,殺草効果が消えた頃に落ちていた種子が芽生えるため,草種が限定されるのだろう。この芽生えが再生したころ再度除草剤を散布すれば,とうぜん裸地になるだろうが,この空き地は年に一回の散布で終わっている。このため,単一草種が目立つ生態になっている。

ところで,除草剤耐性のGM品種を栽培するようになった世界の大規模畑作地帯では,この除草剤散布が年に数回既に10年以上続いている。その結果,耐性雑草が出現したとの話がちらほら聞こえる昨今である。

空き地の草種が気になってから,散歩の途中に彼方此方の空き地を観察するのだが,優先草種が異なっていて面白い100坪未満の限られた区画の雑草が,管理の違いで草種を変えて行く。季節の移ろいを感じるのは散歩の醍醐味だが,空き地の雑草生態も興味をそそる事象となった。

ある時,除草剤散布後の再生草種の違いについて雑談していたら,

「育苗ハウスの周辺に除草剤を散布しているが,必ず苔が生えてくる・・・」

と農家の青年が呟いた。 

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コメント
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