2015年9月某日,札幌にあるシュラスケリア(ブラジル風焼肉店)で会食があった。北海道パラグアイ協会(会長堀内一男)が主催する「田岡功氏来札幌歓迎夕食会」である。田岡氏は前パラグアイ国駐日大使(現大統領顧問)で,日系農業協同組合中央会会長理事でもある。同国のFECOPROD(生産協同組合連合会)会長,ECOP(貿易生産企業)副社長ら3名が同行していた。
ここで,FECOPRODはわが国の「全国農業協同組合中央会」のような存在,ECOPはパラグアイ生産部門へ燃料及び肥料の供給(サービスステーション),農産物の輸出をサポートする企業体である。訪日の目的は,農業生産組織の視察と関係構築にあったのだろう。
夕食会はごく非公式なものだったため,親睦的な意味合いが強かった。時折に田岡氏が通訳されたが,隣席者との会話は殆どがスペイン語,日本語が混淆し和気あいあいの雰囲気であった。北海道パラグアイ協会の出席者は6名,何れもパラグアイ生活体験者であるが,「スペイン語が出て来ないねえ」と錆びついた頭を叩きながらの会話であった。そんなわけで,話題は食事のこと,パラグアイ生活のことなど簡単な会話の範疇に止まった。
帰宅してから,「大豆価格が低下している」と語ったECOPロナルド氏の言葉が気になって,シカゴ相場をトレースしてみると,大豆価格は2014年10月頃からトン当たり350~380 USドルに下落している。ここ数年(2011~2014)が450~550ドルであったことに比べれば,20~30%減で話題になるのも分らぬことはない。が,それ以前の1980~2010年は200~250ドルであった。
CBOT(シカゴ商品取引所)の情報は多数の機関が逐次発信しているので,誰でもその変動を把握することが出来る。近年の穀物価格の高騰は多様な要因があるが,次の点が指摘されるだろう。
2003年:米国の高温・乾燥,中国輸入急増
2011年,2012年:米国の高温・乾燥(旱魃)
暫く高騰基調が続いたが,2013年,2014年の豊作で低減した。即ち,2014年5月以降,米国大豆の順調な生育と南米の豊作見込みが報じられたことによる影響だろう。需要が伸びていることもあり大豆価格は高値状態が続くだろうが,天候と作物の豊凶予測で大きく変動するに違いない。
かつて,パラグアイのラパス農協の専務が語った言葉を思い出す。
「私の仕事は,シカゴ相場を見て,大豆をいつ売るか決めることだ・・・」と。
昔を思い起こさせる夕食会であった。