豆の育種のマメな話

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「野菜栽培の基礎(2014改訂)」,野菜栽培講習会-1(恵庭)

2014-02-24 16:27:43 | 講演会、学成り難し・・・

恵庭野菜栽培研究会が主催する「平成26年度野菜栽培講習会」の実施予定が送られてきた。会長の野村さんから「今年も,野菜栽培について基礎的なことを話してくれ」との依頼である。

男は,頼まれたら断るな」というのが,今は亡き先輩(成河さん・佐々木さん)の教えであるので,二つ返事で引き受けた。・・・が,資料の準備に取り掛かって「これは大変だ」と思い知らされた。

何故なら,講習会に集まってくるのは,定年退職を機に家庭菜園で野菜づくりを始めてみようかという初心者から,長年野菜づくりを楽しみ芸に秀でたベテランまで,奥様から高齢者までと幅が広い。話の焦点を何処に置いたら良いのだろう。あれこれ悩んだが,「人間にとって野菜とは何か?」から始めようと考えた。

 

資料は,「野菜の栄養価」「良い土とは?」「作物にとって肥料とは何か?」「光とは何か?」「水とは何か?」「温度とは何か?」「野菜の仲間とは何か?」を論じ,次に野菜づくりの実際では「作業の手順」「種の播き方,植え方」「良い苗とは?」「マルチ資材と支柱」「栽培管理のポイント(各論)」「保存方法」などの項目を整理した。図表を主にしたが,13ページになってしまった。講習会の持ち時間では到底説明しきれないボリュームだと先ず反省(添付資料略)。

 

70部を印刷しながら,「文字が小さく,高齢者に対して配慮が欠けるな」と,この点も猛省。ただ,資料作成の意図は,「シーズン中にこの資料を思い出し,拡大鏡を使ってでも読んで下さる方がいらっしゃるはずだ」と考えた点にある。

 

なお,恵庭野菜栽培研究会平成26年度野菜栽培講習会の予定は以下のとおり。7名の講師が分担する。

32日 野菜栽培の基礎(恵み野会館9:30-11:30

39日 栽培のための土つくりと施肥(同上)

316日 野菜の病害虫(同上)

323日 枝豆,馬鈴薯,スイートコーンの上手な作り方とおいしい食べ方(同上)

330日 トマトなどの野菜およびタマネギの栽培法(同上)

45日 野菜栽培の基礎(島松公民館)

518日 馬鈴薯,タマネギなどの種まき実習(ルルマップ市民農園)

 

関連記事:拙ブログ2019.2.13(資料添付)

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大豆生産の新興国,ウクライナ

2014-02-06 14:30:33 | 北海道の豆<豆の育種のマメな話>

大豆生産量のビッグテンに,新しい国が登場した。

1980年代から21世紀初頭にかけて,ブラジル,アルゼンチン,パラグアイ等南米諸国における大豆熱が世界の注目を集めた。そして南米大豆生産量は世界の過半を超え,アメリカ合衆国と共に世界の大豆相場を左右するまでになったのである。さらに,南米の大豆生産量は後発のボリビア,ウルグアイを加えて,今なお増加を続けている。

 

そこへ新たに,ウクライナとロシアが大豆輸出国の名乗りを上げている。この先,どのような大豆生産を展開するか(GMOに依存するのか,否定するのかを含め)注目した方が良い。

◆大豆生産量上位国

先ず,2012年産大豆の生産量を見てみよう(FAOSTAT2012)。世界全体の生産量は253,137,072トンで,需要の堅調に裏打ちされ漸増傾向が続いている。

1位(アメリカ):82,054,800トン

2位(ブラジル):65,700,605トン

3位(アルゼンチン):51,500,000トン

4位(中国):12,800,000トン

5位(インド):11,500,000トン

6位(パラグアイ):8,350,000トン

7位(カナダ):4,870,160トン

8位(ウルグアイ):3,000,000トン

9位(ウクライナ):2,410,200トン

10位(ボリビア):2,400,000トン

なお,11位(ロシア)1,806,203トン,12位(インドネシア)851,647トン。ちなみに,日本の生産量は235,900トン。世界全体の1%にも満たない(0.09%)。

◆大豆生産量の伸びが著しい国

ここ10年間(20022012年)で大豆生産量が増加した国の順位を増加率で示すと,

1位(ウルグアイ):4,225%42倍)

2位(ウクライナ):1,933%19倍)

3位(ロシア):427%4倍)

次いで,パラグアイ(253%),インド(247%),カナダ(209%),ボリビア(193%)の伸びが2倍程度と大きかった。一方,生産大国アメリカは足踏みし,ブラジル及びアルゼンチンの伸びも1.5倍程度に止まっている。中国の生産に至っては減少傾向にさえある(輸入に依存)。

直近の5年間ではどうか?

1位(ウルグアイ):368%3.7倍)

2位(ウクライナ):334%3.3倍)

3位(ロシア):278%2.8倍)

生産大国,アメリカ,ブラジル,アルゼンチン,中国,インド,パラグアイの伸びは,限界に近づいているように見える。その要因として,耕地面積の拡大がこれ以上困難である,大豆偏重の栽培が幾多の障害を引き起こすと危惧される(前兆がみられる)ことなどが考えられる。背景には,森林減少やGMO大豆の席巻など環境問題や社会問題にかかわる事象が現れており,ブレーキがかかってきたと想像される。

ボリビアとウルグアイは大豆導入後進国であったが故に伸び代があり,近年増加が著しい。ただ,ボリビアは耕地としての基盤が劣悪であるため,飛躍的な増加は望めない。ウルグアイは,ウルグアイ川を挟んでアルゼンチンに近い南西部の州で放牧地を転換してGMO大豆を導入したため,生産量拡大は比較的容易であったが,この増加にも一定の限界はあるだろう。

ウクライナの大豆

ウクライナは,かつて「欧州の穀倉」と呼ばれた肥沃な地帯を有する農業国。南は黒海に面し,北にはチエルノブリイがあることで知られる。ソ連崩壊後の混乱,生産技術や構造改革が遅れたため農業生産は停滞したが回復基調にあり,農産物の輸出に力を注いでいる。

2011年のFAO統計によれば,農作物の作付面積は1位(小麦)1,412,400ha2位(向日葵)4,716,600ha3位(大麦)3,684,200ha4位(玉蜀黍)3,543,700ha5位(馬鈴薯)1,443,000ha6位(大豆)1,110,300ha7位(菜種)832,700ha8位(甜菜)515,800ha9位(蕎麦)285,700ha10位(燕麦)279,900haとなっている。

僅か0.3%の企業体農場(旧集団農場であった)が耕地の78%を占有する農業形態,及び前記の作物構成から推察できるとおり,大型機械を使った農業が進められている。農産物の輸出先はロシアを初め旧ソ連諸国,欧州が主体であるが,日本も玉蜀黍や麦類を輸入している。

大豆の単収は1.72.0t/haで必ずしも高くない。農林水産省HPの「主要ウクライナ産大豆の品種特性」に3.04.0t/haの記載があるが,あくまで特性調査の数値と捉えるべきで,現場の生産技術(品種・栽培法)は改善の余地が残されていると考えられる。さらに,ウクライナにおいては大豆も輸出品目と捉えられるので,生産体系は油糧作物栽培としての位置づけにある。なお,大豆の産地は国内中部の諸州である。

近年,この国に対して中国の膨大な経済協力が行われているようなので,大豆生産(技術改良も含め)への関わりも深まっているかも知れない。

Non-GMOを求めるわが国とすれば,どのようなアプローチが考えられるだろうか?

 

参照FAOSTATfaostat.fao.org),農林水産省HP「ウクライナ農業の概要」(www.maff.go.jp),在ウルグアイ日本国大使館HP「ウクライナ概観」(www.ua.emb-japan.go.jp

添付:「ダイズ生産量上位国における生産の伸び」

 

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世界の食用マメ(インゲンマメ,ヒヨコマメ,キマメ,ルーピン・・)

2014-02-05 11:54:04 | 北海道の豆<豆の育種のマメな話>

人類は多くのマメ類を食用にしてきた。私たち日本人にとって「」といえば,ダイズ,アズキ,インゲンマメ,ラッカセイ,エンドウなどであろうか。特にダイズは,豆腐や納豆として毎日のように食膳に上がり,味噌や醤油の原料ともなるので身近な存在だし,アズキやインゲンマメも和菓子材料として欠かせない。

一方,世界に目を向けると,私たちが名前を聞いたこともないマメ類が出回っていることに驚くだろう。「豆の王国」と称されるインドおよびその周辺では,マメ類が穀類とならび主食の位置を占めていると言っても過言ではない。マメ類は蛋白供給源として大切な食材であって,各国の料理法にも工夫が凝らされている。

 

◆栽培面積の多いマメは何だ?

現在,地球上で栽培されているマメ類を収穫面積順に拾ってみよう(FAOSTAT2011)。

 

1位(ダイズ):103,604,514ha

2位(インゲンマメ):30,411,204ha

3位(ラッカセイ):24,637,175ha

4位(ヒヨコマメ):13,180,508ha

5位(ササゲ):10,639,936ha

6位(エンドウ):6,140,528ha

7位(キマメ):5,862,653ha

 

以下,ヒラマメ:4,172,135ha,ソラマメ:2,412,154ha,サヤエンドウ:2,245,136ha,サヤインゲン:1,526,663ha,ルーピン:959,917haなどである。

 

ダイズ(大豆,Soybeans)の栽培面積が圧倒的に多いが,多くは食用油の原料作物としての生産である。日本の国土面積(耕地面積でない)が377,930km2であるから,地球上におけるダイズ栽培面積は日本国土の2.7倍に匹敵するほど広大で,今なお世界各地で栽培が拡大している。主要生産国は(FAOSTAT2012),アメリカ30,798,530ha,ブラジル24,937,814ha,アルゼンチン19,350,000ha,中国6,750,000ha,インド10,800,000ha,パラグアイ3,000,000haなどで,南北アメリカ大陸と中国及びインドで生産量の大半を占める。ちなみに,日本の栽培面積は140,000ha(世界全体の0.1%)に過ぎない。

 

◆インゲンマメは世界に通じる食用マメ

インゲンマメ(菜豆,Beans)の栽培が予想を超えて多いのに驚かれるだろう。乾燥子実の生産を目的に30,411,204ha,野菜用に1,526,663haの栽培がある。これは,日本国土面積のおよそ8085%に匹敵する。日本では餡,甘納豆,甘煮惣菜が主体で栽培面積は40,800haに過ぎないが,海外では煮込み料理など主材料としての利用が多いため作付けは多い。主要生産国は,インド9,100,000ha,ミャンマー2,845,662ha,ブラジル2,726,932ha,メキシコ1,558,992ha,ウガンダ1,060,000haなどである。東南アジア,中南米での生産が多いが,アフリカへと栽培が広まっている。主食である穀類やイモ類と並ぶ作物であることが伺える。

 

◆マメ類主要生産国

ラッカセイ(落花生,Groundnut):インド5,310,000ha,中国4,581,000ha,ナイジェリア2,342,810ha,スーダン1,698,480haなどである。

 

ヒヨコマメ(ガルバンソ,Chick peas):インド9,190,000ha,パキスタン1,063,800ha,オーストラリア653,142ha,イラン562,375ha,トルコ446,413ha。草丈4050cm,乾燥,冷涼な気候を好む。利用が多いのはインドで重要な蛋白源,ダル(水に浸して種皮を覗き乾燥させる)にしてスープやカレーに入れ,時には混ぜご飯にして食べる。地域や国によっては,粉に味を点け油で揚げたスナック菓子,きな粉や豆腐,生のまま枝豆のように食べ,また茎葉を野菜として利用することもある。

 

ササゲ(豇豆,Cow peas):ニジェール4,644,771ha,ナイジェリア3,189,980,ブルキナ・ファン938,330ha。アフリカ大陸のサハラ南部のサバンナ地帯を起源とし,アフリカなどの乾燥熱帯地域で長期にわたり重要な蛋白源として利用されてきた。耐乾性が強く,根粒の窒素固定能も高いという。

 

エンドウ(豌豆,Peas):ロシア1,110,800ha,カナダ914,200ha,中国872,400ha,インド727,200ha

 

キマメ(樹豆,Pigeon peas):インド4,420,000ha,ミャンマー643,120ha,タンザニア288,161,マラウイ196,552ha,ケニヤ138,708ha。インドではヒヨコマメに次ぐ食用マメとして多く生産され,ダルにしてカレーなどの料理に使われる。茎は木化して草丈は23mにもなり,直根性の大きな根系をもち耐乾性に優れ,痩せ地でも良く生育するため,熱帯各地に栽培が広がっている。

 

ヒラマメ(レンズマメ,扁豆,Lentils):インド1,597,400ha,カナダ998,400ha,オーストラリア218,763ha,トルコ214,847ha,ネパール207,591ha。南西アジアで生まれた歴史の古いマメの一つといわれる。皮が柔らかく,豆も薄くて火が通りやすいため,煮えるのが早い。

 

ソラマメ(Broad beans, Horse beans):中国615,000ha,インド218,352ha,タイ170,594ha,インドネシア129,565ha

 

ルーピン(Lupins):オーストラリア755,848ha,ポーランド52,508ha,ウクライナ26,600ha,チリ23,257ha,ドイツ21,500ha。日本では,ノボリフジ(ルピナス)と呼び,様々な色の目立つ花を咲かせることから観賞用とされる。世界では緑肥や飼料用に栽培されている(根粒の窒素固定能も高い)。子実に苦味成分(アルカロイド)の少ない食用の種類(タルウイLupinus mutabilis,アンデス地方で古くから食べられていた,蛋白・脂肪含有率がダイズに匹敵しアミノ酸組成も優れる)もある。苦み成分の除去,収量性の向上など改良が試みられていると聞くが,将来は第二のダイズになるかも知れない。興味ある作物だ。

タルウイの種子が入手できたら「試作してみたい」と思った

 

参照 1) FAOSTATfaostat.fao.org) 2) 前田和美「マメと人間,その一万年の歴史」古今書院1987 3) 吉田よし子「マメな豆の話」平凡社新書2000

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