恵庭の拙宅裏庭で,今年も「シャガ」が咲いた。平成24年(2012)に伊豆の里から持参した苗が越冬し,群落を形成,北海道でも自生しうることを証明してみせた(写真上:奥伊豆の里山に自生する群落,写真下:北海道恵庭で開花したシャガ)。
◆シャガ(射干,著莪,胡蝶花などの字を当てる,学名:Iris japonica)は,本州から九州,中国地方に分布するアヤメ科アヤメ属の多年草。古い時代に中国から持ち込まれた帰化植物だという。
本州では,杉林や竹林の下など里山の日陰に群生していることが多い。日本に存在するシャガは全て三倍体だそうだ。ということは,我が国全てのシャガは同一遺伝子を持ち,同一の顔をしていることになる。本当にそうなのかと観察しているが,今のところ変異種を見つけることは出来ていない。
種子を作らず,球根を作るわけでもないシャガが全国に広く分布するということは,シャガの苗が多くの人手を渡り広まったことになる。シャガには,観賞用として大和人の心をとらえる何かがあったのか,それとも特別な薬効でもあるのだろうか。シャガを日本へ持ち込んだ渡来人は,よほどの風流人だったのだろう。
シャガは地下茎で繁殖し(短く横に這い)群落を形成する。アヤメ科ではめずらしく常緑で,北海道では青い葉のまま雪の下になる。葉は扁平でつやがある。葉の片面だけを上に向けその面が表面のような様子になり,二次的に裏表が生じたように見える。草丈は40~50cm。
開花は4~5月頃(北海道では5~6月),白っぽい紫のアヤメに似た華麗な花をつける。花弁には濃い紫と黄色の模様がある。白地に青と橙色の斑点があるのが外花被片,その内側に3枚の青白い内花被片がある。その上には,先端が細く裂けた雌蕊の柱頭。柱頭の下には雄蕊が1本あり,これらの構造は他のアヤメ属植物と同じである。花は1日しかもたず,開花した翌日には萎んでしまうが,同一花梗のなかで次々と開花を観ることが出来る。
木陰に育ち,庭の主役にはなり難いシャガ。しかし,花の姿は清純にして,なんと高貴なことよ。奥伊豆に暮らした小学生の頃,学校帰りの山道で目にしたシャガの映像が重なる。