豆の育種のマメな話

◇北海道と南米大陸に夢を描いた育種家の落穂ひろい「豆の話」
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北国の恵庭に根付いた「シャガ」の花、恵庭の花-12

2016-06-14 13:44:31 | 恵庭散歩<花のまち、花だより、自然観察>

恵庭の拙宅裏庭で,今年も「シャガ」が咲いた。平成24年(2012)に伊豆の里から持参した苗が越冬し,群落を形成,北海道でも自生しうることを証明してみせた(写真上:奥伊豆の里山に自生する群落,写真下:北海道恵庭で開花したシャガ)。

 

  

◆シャガ(射干,著莪,胡蝶花などの字を当てる,学名:Iris japonica)は,本州から九州,中国地方に分布するアヤメ科アヤメ属の多年草。古い時代に中国から持ち込まれた帰化植物だという。

本州では,杉林や竹林の下など里山の日陰に群生していることが多い。日本に存在するシャガは全て三倍体だそうだ。ということは,我が国全てのシャガは同一遺伝子を持ち,同一の顔をしていることになる。本当にそうなのかと観察しているが,今のところ変異種を見つけることは出来ていない。

種子を作らず,球根を作るわけでもないシャガが全国に広く分布するということは,シャガの苗が多くの人手を渡り広まったことになる。シャガには,観賞用として大和人の心をとらえる何かがあったのか,それとも特別な薬効でもあるのだろうか。シャガを日本へ持ち込んだ渡来人は,よほどの風流人だったのだろう。

シャガは地下茎で繁殖し(短く横に這い)群落を形成する。アヤメ科ではめずらしく常緑で,北海道では青い葉のまま雪の下になる。葉は扁平でつやがある。葉の片面だけを上に向けその面が表面のような様子になり,二次的に裏表が生じたように見える。草丈は40~50cm。

開花は4~5月頃(北海道では5~6月),白っぽい紫のアヤメに似た華麗な花をつける。花弁には濃い紫と黄色の模様がある。白地に青と橙色の斑点があるのが外花被片,その内側に3枚の青白い内花被片がある。その上には,先端が細く裂けた雌蕊の柱頭。柱頭の下には雄蕊が1本あり,これらの構造は他のアヤメ属植物と同じである。花は1日しかもたず,開花した翌日には萎んでしまうが,同一花梗のなかで次々と開花を観ることが出来る。

木陰に育ち,庭の主役にはなり難いシャガ。しかし,花の姿は清純にして,なんと高貴なことよ。奥伊豆に暮らした小学生の頃,学校帰りの山道で目にしたシャガの映像が重なる。

 

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熱海の「ハカランダ」

2016-06-11 18:21:16 | 伊豆だより<里山を歩く>

6月上旬の或る日,熱海に宿をとった。ハカランダ(ジャカランダ)がそろそろ開花する頃だろうと思い立っての途中下車である。

「熱海でハカランダが初めて花をつけた」との記事を目にしたのはいつのことだったろうか。たしか数年前,帰省の折に手にした地方紙であった。かつての賑わいも時代と共に失せつつある温泉町の熱海が,ハカランダを新たな観光資源にしようと取り組んでいるのだという。「その発想はどこから生まれたのか?」「そして今,街路樹はどれほどに生長しているのか?」ずっと気になっていた。

ハカランダに執着するのは,アルゼンチンに暮らした頃の印象(大木を覆い尽くす青紫の花,歩道を埋め尽くす紫の花弁に魅惑されたハカランダとの出会い)が強烈だったためで,その後も欧州の旅先でハカランダを愛で,南アフリカ共和国プレトリアの写真を鑑賞し,下田市武ガ浜での栽植プロジェクトが失敗したと聞けば何故だろうと頭を抱えた。

そのような折,時間の余裕ができて熱海に途中下車した次第。熱海の宿は「ミクラス」,サンビーチに面した静かなホテルである。投宿後すぐに,「お宮緑地」のプロムナードを散策する。開花は三分咲きというところか。

 

 

 

熱海市のHPや「お宮緑地」に設置されたプレートによれば,「熱海でのジャカランダのはじまりは平成2年(1990)。国際姉妹都市であるポルトガルのカスカイス市から贈られた2本の木から。世界三大花木の一つで,いまでは熱海の初夏を告げる花となりました。街路樹がジャカランダなのは温暖な熱海だからこそ。本州ではめずらしい風景です。ジャカランダの日本での認知度は,海外のリゾート地への渡航者の増加に伴って広がりつつあります。熱海での開花は折しも傘の花開く梅雨シーズン。しとしとと降り続く雨に下を向きがちな季節ですが,熱海ではラッパの形をした小さな青紫色の花がブーケのように空を彩ります。平成24年(2012)から,サンビーチ前に広がる「お宮緑地」をジャカランダのプロムナード(遊歩道)として再整備した」と記されている。

ところで,ハカランダ(ジャカランダ)は南米を原産地とするノウゼンカズラ科の落葉高木~低木で,葉は優美なシダに似た羽状複葉,花は鐘形で一つの花房に100個近い花をつけ,花色は藍色または青紫色である(ピンクや白色もある)。熱帯では乾期の終わりに落葉した状態で花を咲かせ,満開時は木を覆うほどに咲き乱れる。その後に新芽を出すが,国内では花より葉が先行して出芽し,花数も相対的に少ないため樹冠全体が花で覆われることは少なく,春先まで葉を着けることが多い。南米には約50種類が分布するが,日本で主に栽培されているのはアルゼンチン原産のジャカランダ・ミモシフォリア〔J. mimosifolia〕種だという。

因みに,熱海が目指すのは,熱海梅園(早咲きの梅),糸川遊歩道(あたみ桜)等に続く新たな名所づくりの一環で,年間を通じて花や緑の絶えない景観の創出にあると言う。「年間を通じて花や緑の絶えない景観の創出」なる発想は,熱海だけでなく隣接の地帯,少なくとも伊豆半島全体の取り組みに広がってほしいものだ。

なお,ハカランダについては拙ブログ「豆の育種のマメな話,2013.5.28」にも記載している。

世界三大花木:①ホウオウボク(鳳凰木Royal poinciana,Delonix regia,マメ科ジャケツイバラ亜科),②カエンボク(火炎木Fountain tree,African turip tree,Spathodea campanulata,ノウゼンカズラ科),③ジャカランダ(紫雲木,Jacaranda,Jacaranda Juss.,ノウゼンカズラ科キリモドキ属)

カスカイス市(Cascais):リスボンから約1時間の国際的リゾート。コスタ・ド・ソルと呼ばれる美しい海岸線を有する。ポルトガルに柔道を伝えた日本人柔道家による交流の提案で,平成2(1990)年から熱海市と姉妹都市。

豆の育種のマメな話,拙ブログ2013.5.28「ハカランダ(ジャカランダ)」

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