豆の育種のマメな話

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厄介な雑草「ヒメジョオン」,恵庭の花-16

2017-07-26 14:02:08 | 恵庭散歩<花のまち、花だより、自然観察>

7月の或る日,漁川の堤防を歩いているとき,一面が真っ白な畑を見つけた。遠目には蕎麦の花が咲いているのかと思ったが,近づいてみると厄介な畑地雑草「ヒメジョオン」である。前年の作物が何であったか記憶にないが,畑は満開のヒメジョオンに占有されている。

ヒメジョオンは,初夏から秋口にかけて野菊のような白い花をつける。北米原産の帰化植物であるが,近ごろ畑地や道端の至る所で見かけるようになった。恵庭でもこの群落が増加しているように思う。

   

◆ヒメジョオン

ヒメジョオン(姫女菀,annual fleabane,Erigeron annuus)は,キク科ムカシヨモギ属の一年生植物。背の高さは30~150cm,茎は先の方で枝分かれをして,白い(薄紫)花をつける。花はヒマワリのような形だが,花径が1~2cm程度と小さく,周りの花弁は細い。形態的には,花と見えるのが頭状花序で,小さな花の集まり。周辺の花びらのようなものが舌状花,中央の黄色の部分が管状花と言う。

北アメリカ原産であるが,今では世界中に広がっている。日本には江戸末期(1865頃)に入り,明治時代には既に雑草化していたという。1個体あたり47,000以上の種子をつけ,種子の寿命も35年と長いため,繁殖力は驚異的で,厄介な雑草とされている。漁川沿いの畑地群落を見た時,さもありなんと感じた。要注意外来生物に指定され(特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律),「日本の侵略的外来種ワースト100」に選定されている(日本生態学会)。

日本に入ってきた当初は,「柳葉姫菊(やなぎばひめぎく)」「鉄道草(てつどうぐさ)」と呼ばれたとの記載がある。柳のような細い葉,花が小さい菊,線路沿いに広がった状況など,名前から形態や生態を推察することが出来る。

 

◆ハルジオン

花が良く似ている,帰化植物で厄介な雑草ということもあり,ヒメジョンとハルジオンは混同されやすい。

ハルジオン(春紫菀,Philadlphia fleabane,Erigeron philadelphicus)は,キク科ムカシヨモギ属の多年生植物。種子と根の先に新苗を作って繁殖する。ハルジオンも要注意外来生物に指定され(特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律),「日本の侵略的外来種ワースト100」に選定されている(日本生態学会)。

ヒメジョンとハルジオンを比べると,ハルジオンは背が低く(50~80cm),花は大きくて少なく,花の時期はヒメジョンより早い,根本に葉があるなどである。分かり易いのは,ハルジオンの茎には真ん中に空洞があり(ヒメジョンには空洞が無い),ハルジオンの葉の基部が耳型になり茎を抱くように付く事であろうか。

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野の薬草「ドクダミ」,恵庭の花-15

2017-07-18 13:34:54 | 恵庭散歩<花のまち、花だより、自然観察>

庭の片隅,グミの木の根元にドクダミが群生している。子供の頃,湿疹やかぶれに対して祖母が処方してくれたことを思い出して植えた一株が,いつの間にか増殖して,夏(7月)になると一斉に白い花をつける。実は,一見白い花びらと思われるのは総苞(苞葉)と呼ばれるもので,花弁ではない。総苞中央部に穂のような棒状花序があり,淡黄色の小花が密生している。小花には花弁も萼(がく)もなく,雌蕊と雄蕊だけでできている。

 

ドクダミ(蕺草,Houttuynia cordata)は,ドクダミ科ドクダミ属の多年草。日陰のやや湿りのある場所に自生。繁殖力が強く,地下茎を伸ばして繁殖する。葉は卵状ハート型で先が短く尖り,濃緑,柔らく厚い。全体に独特の臭気がある。

ドクダミの名称は,「毒矯み」(毒を抑える)に由来するらしい。中国語では「魚腥草」(魚臭い),英語では「fish mint」「fish herb」などの表現があり,生魚の匂いから名付けられたのだろう。ベトナムや中国では香草として食用に供されるというが,日本では「どくだみ茶」として商品化されている。

「どくだみ茶」はドクダミを乾燥したもので,煎じて服用する。北海道農業改良普及協会発行「薬草の楽しみ」(熊谷明彦1995)によると,薬用量は一日10g,薬効は消炎,利尿,解毒など。注意事項として「虚弱,貧血,冷え症。体力低下している化膿には用いない。長期継続服用は避ける」と記されている。

クエルシトリン(利尿作用,動脈硬化の予防作用),デカノイルアセトアルデヒド(臭気成分,抗菌作用・抗カビ性),カリウム(利尿作用)を含有しており,十薬(じゅうやく)の名前で生薬として日本薬局方に収録されている。湿疹,かぶれなどに生葉をすり潰したものを貼り付けることも有効。漢方では解毒剤として用いられるという。

一方,過飲用による副作用事例(高カリウム血症,GOTGPT上昇)も報告されているので,注意が必要。

真夏の強い日差しを避け,木陰に駆け込む。明るさに慣れた目には日陰が暗く感じるが,足元を見やると可憐な花が目に入る。俳人川端茅舎(大正から昭和初期に活躍)は「十薬や真昼の闇に白十字」と詠んだ。十薬(じゅうやく)が夏の季語。ドクダミの別名。ドクダミが生薬として使われることからこの名前がついたと言われる。薄暗い中に浮かぶ4枚の白い総苞片を白十字と表現。写実的な作品である。

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恵み野中央公園の「バイカモ(梅花藻)」,恵庭の花-14

2017-07-13 17:04:57 | 恵庭散歩<花のまち、花だより、自然観察>

7月中旬、恵み野中央公園のバイカモが今年も可憐な花をつけた。この公園は、茂漁川から取水した用水の流れを効果的に取り入れた設計で、バイカモを観察できる。見どころは、恵み野小学校・恵み野幼稚園西側の清流200m、群生した濃緑色のバイカモが清流に揺れている。また、恵み野旭小学校西側にも数年前からバイカモが定着し始め、ここでもバイカモの白い花を観察できる。

  

バイカモ(梅花藻、ウメバチモ、Ranunculus nipponicus var. submersus)は、キンポウゲ科キンポウゲ属の多年生水草。日本固有種である。冷涼で(生育適温15℃)、流れのある清流に生育し、静水では育たない。多年生、葉は濃緑色で常緑、葉身は細かく裂け糸状で、葉身の長さは2~6cm、流れに沿って1mほど伸びる。水中に茎を匍匐させ、節から不定根を出し定着、茎の長さは2m以上になることもあるという。

夏には梅に似た白い小さな5弁の花をつける。花の大きさは1~1.5cm、葉腋から伸びた長さ3~5cmの花茎の先についた花は水上で開花する。清流の流れに浮かぶ多数のウメの花。涼しさを感じさせる風情である。

北日本には広く分布するが、西日本では湧き水のある地域などに限られる。例えば、滋賀県米原市の地蔵川、静岡県三島市の富士湧水などには、バイカモの白い花を目当てに多数の観光客が訪れる。

「バイカモは清流の目安」と言われる。恵み野中央公園のバイカモが「花のまち」にふさわしい群落として生育することを期待したい。

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