地球上にマメ科の植物は約2万種あり,食用に供される豆は80種といわれる。これら食用マメ類は,穀類およびイモ類と並び,人類の生存にとって欠かせない存在である。
先日(本ブログ2013.12.26,2014.1.9)「インゲンマメは新大陸起源」と述べたが,食用マメ類80種ともなれば当然のことながら原産地は世界中に存在する。
◆原産地は?
遺跡発掘や野生種及び変異性調査など「栽培の起源に関する研究」が進み,多くの作物の原産地が明らかになってきた。ここではマメ類について,農耕文化が生まれた地域(農耕文化圏)ごとに整理する。なお,研究が進んだとはいえ,農耕文化圏の分類と名称,起源地には諸説あるので,分類は前田和美「マメと人間,その一万年の歴史」(古今書院1987)を参考にした。
◆1アジア育ちのマメ類
1-1 東アジア,東南アジア
ダイズ(大豆,Glycine max (L.) Merr.)
アズキ(小豆,Vigna angularis (Willd.) Ohwi & Ohashi)
シカクマメ(四角豆,Psophocarpus tetragonolobus (L.) DC.)
1-2 インド
キマメ(樹豆,ピジョンピー,Cajanuscajan (L.) Millsp.)
グアル(クラスタービーン,Cyamopsis tetragonoloba (L.) Yaub.)
ホースグラム(Macrotyloma uniflorum (Lam.) Verdc.)
タケアズキ(Vigna umbellata (Tunb.) Ohwi & Ohashi )
リョクトウ(緑豆,ヤエナリ,Vigna radiate (L.) Wilczek)
ケツルアズキ(ブラックマペ,Vigna mungo (L.) Hepper)
◆2 メソポタミア(地中海,南西アジア)育ちのマメ類
エンドウ(豌豆,Pisum sativum L.)
ソラマメ(空豆・蚕豆,Vicia faba L.)
ヒヨコマメ(ガルバンソ,Cicer arientinum L.)
ヒラマメ(扁豆,レンズマメ,Lens culinaris Medic.)
ガラスマメ(Lathyrus sativus L.)
◆3 アフリカ育ちのマメ類
ササゲ(豇豆,カウピー,Vigna unguiculata (L.)Walp. Var.unguiculata (L.) Ohashi)
フジマメ(Lablab purpureus (L.) Sweet)
フタゴマメ(Vigna subterrranea (L.) Verdc.)
◆4 新大陸育ちのマメ類
4-1 メソ・アメリカ
インゲンマメ(菜豆,Phaseolus vulgaris L.)
ライマメ(ライマビーン,リマビーン,Phaseolus lunatus L.)
タチナタマメ(立刀豆,Canavalia gladiate (Jacq.) DC.)
ベニバナインゲン(花豆,Phaseolus coccineus L.)
クズイモ(葛薯,ヤムビーン,ヒカマ,シンカマスPachyrrizus tuberosus (L.) Spreng.)
4-2 アンデス高地
インゲンマメ(菜豆,Phaseolus vulgaris L.)
ライマメ(ライマビーン,リマビーン,Phaseolus lunatus L.)
ラッカセイ(落花生,Arachis hypogaea L.)
マメの王国インド周辺,東南アジア,アンデス地方には,この他にも多数の豆が食べられていることに気付く。あるものは未熟の莢をサラダや煮物に,あるものは乾燥子実を他の野菜や肉と煮込み,スープにする。中には,クズイモやシカクマメのようにイモを作る種類があり,根菜として利用する場合もある。
また,マメ科植物の中には有毒成分を含む種類があるが,人類は料理法によって有毒成分を除去する知恵を見つけ,或いは無毒系統や低毒系統を育成して活用を図ってきた。世界各地の民族は伝統食の中にマメ類を上手に利用してきたと言えるだろう。
これに加えて将来,我々はマメ類に何を期待したら良いのだろう? それは多分,食材としての価値を守り続けると同時に,マメ類の成分に着目した資源的活用(蛋白生産など),さらにはイモを作るマメなどの生育量(バイオマス)に着目した活用ではないだろうか。
貴方も旅に出れば,多様なマメ類(食文化も含め)に触れる喜びを知るだろう。
参照
前田和美「マメと人間,その一万年の歴史」古今書院1987
吉田よし子「マメな豆の話」平凡社新書2000