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竹取翁と万葉集のお勉強

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後撰和歌集(原文推定、翻文、解釈付)巻五

2020年07月12日 | 後撰和歌集 原文推定
後撰和歌集(原文推定、翻文、解釈付)
以川末幾仁安多留未幾
巻五

安幾宇部
秋上

歌番号二一七
己礼左多乃美己乃以部乃宇多安者世尓
己礼左多乃美己乃家乃歌合尓
是貞親王の家の歌合に

与美比止之良寸
与美人之良寸
詠み人知らず

原文 仁者可尓毛可世乃春々之久奈里奴留可安幾多末比止者武部毛以比个利
定家 仁者可尓毛風乃春々之久奈里奴留可秋立日止者武部毛以比个利
和歌 にはかにもかせのすすしくなりぬるかあきたつひとはうへもいひけり
解釈 にはかにも風の涼しくなりぬるか秋立つ日とはむべもいひけり

歌番号二一八
多以之良須
題之良須
題知らず

与美比止毛
与美人毛
詠み人も

原文 宇知徒遣尓毛乃曽可奈之幾己乃者知留安幾乃者之女遠遣不曽止於毛部八
定家 打徒遣尓物曽悲幾己乃者知留秋乃始遠遣不曽止於毛部八
和歌 うちつけにものそかなしきこのはちるあきのはしめをけふそとおもへは
解釈 うちつけに物ぞ悲しき木の葉散る秋の初めを今日ぞと思へば

歌番号二一九
毛乃於毛比者部利个留己呂安幾多末比々止尓徒可者之个留
物思侍个留己呂秋立日人尓徒可者之个留
物思ひ侍りけるころ、秋立つ日、人につかはしける

与美比止毛
与美人毛
詠み人も

原文 堂乃免己之幾美者川礼奈之安幾可世者个不与利布幾奴和可身加奈之毛
定家 堂乃免己之君者川礼奈之秋風者个不与利布幾奴和可身加奈之毛
和歌 たのめこしきみはつれなしあきかせはけふよりふきぬわかみかなしも
解釈 頼めこし君はつれなし秋風は今日より吹きぬ我が身悲しも

歌番号二二〇
於毛不己止者部利个留己呂
於毛不己止侍个留己呂
思ふこと侍りけるころ

与美比止毛
与美人毛
詠み人も

原文 伊止々之久毛乃於毛布也止乃遠幾乃者尓安幾止徒遣川留可世乃和比之左
定家 伊止々之久物思也止乃荻乃葉尓秋止徒遣川留風乃和比之左
和歌 いととしくものおもふやとのをきのはにあきとつけつるかせのわひしき
解釈 いとどしく物思ふ宿の荻の葉に秋と告げつる風のわびしさ

歌番号二二一
多以之良春
題之良春
題知らず

与美比止毛
与美人毛
詠み人も

原文 安幾可世乃宇知布幾曽武留由不久礼者曽良尓己々呂曽和飛之可利个留
定家 秋風乃宇知吹曽武留由不久礼者曽良尓心曽和飛之可利个留
和歌 あきかせのうちふきそむるゆふくれはそらにこころそわひしかりける
解釈 秋風のうち吹きそむる夕暮れは空に心ぞわびしかりける

歌番号二二二
多以之良春
題之良春
題知らず

於保衣乃知左止
大江千里
大江千里

原文 末由王遣之堂毛止保寸万毛奈幾毛乃遠奈止安幾可世乃満多幾布久良无
定家 露王遣之堂毛止保寸万毛奈幾物遠奈止秋風乃満多幾布久良无
和歌 つゆわけしたもとほすまもなきものをなとあきかせのまたきふくらむ
解釈 露わけし袂干す間もなき物をなど秋風のまだき吹くらん

歌番号二二三
遠无奈乃毛止与利布无末幾者可利尓以比遠己世天者部利个留
女乃毛止与利布无月許尓以比遠己世天侍个留
女のもとより文月ばかりに言ひおこせて侍りける

与美比止之良春
与美人之良春
詠み人知らず

原文 安幾者幾遠以呂止留可世乃布幾奴礼者比止乃己々呂毛宇多加者礼个利
定家 秋者幾遠色止留風乃吹奴礼者比止乃心毛宇多加者礼个利
和歌 あきはきをいろとるかせのふきぬれはひとのこころもうたかはれけり
解釈 秋萩を色どる風の吹きぬれば人の心も疑はれけり

歌番号二二四
可部之
返之
返し

安利八良乃奈利比良
在原業平朝臣
在原業平朝臣

原文 安幾者幾遠以呂止留可世者布幾奴止毛己々呂者可礼之久佐者奈良祢八
定家 安幾萩遠色止留風者吹奴止毛心者可礼之草者奈良祢八
和歌 あきはきをいろとるかせはふきぬともこころはかれしくさはならねは
解釈 秋萩を色どる風は吹きぬとも心はかれじ草葉ならねば

歌番号二二五
美奈毛堂乃々保留安曾无止幾/\満可利加与比个留止幾尓
布无末幾乃与末以末比者可利乃奈奴可乃比乃礼宇尓佐宇曽久天宇之天
止以比徒可者之天者部利个礼八
源昇朝臣時/\満可利加与比个留時尓
布无月乃四五日許乃奈奴可乃日乃礼宇尓佐宇曽久天宇之天
止以比徒可者之天侍个礼八
源昇朝臣、時々まかり通ひける時に、
文月の四五日ばかりの、七日の日の料に装束調じて
と言ひつかはして侍りければ

可无為无
閑院
閑院

原文 安不己止者堂奈者多川女尓飛止之久天堂知奴不和左者安衣春曽安利个留
定家 安不己止者堂奈者多川女尓飛止之久天堂知奴不和左者安衣春曽安利个留
和歌 あふことはたなはたつめにひとしくてたちぬふわさはあへすそありける
解釈 逢ふことは織姫に等しくて裁ち縫ふわざはあえずぞありける

歌番号二二六
多以之良春
題之良春 
題知らず

与美比止毛
与美人毛
詠み人も

原文 安万乃可者王多良武曽良毛於毛保衣寸堂衣奴和可礼止於毛布毛乃可良
定家 天河渡良武曽良毛於毛保衣寸堂衣奴別止思毛乃可良
和歌 あまのかはわたらむそらもおもほえすたえぬわかれとおもふものから
解釈 天の河渡らむ空も思ほえず絶えぬ別れと思ふものから

歌番号二二七
布无末幾乃奈奴可尓由不可多満天己武止以飛天
者部利遣留尓安免布利者部利个礼者万天己天
布无月乃七日尓由不可多満天己武止以飛天
侍遣留尓安免布利侍个礼者万天己天
文月の七日に、夕方まで来むと言ひては
べりけるに、雨降り侍りければ、まで来で

美奈毛堂乃奈可多々
源中正
源中正

原文 安免布利天三末万佐里个利阿女乃可者己与比者与曽尓己比武止也三之
定家 雨布利天水万佐里个利天河己与比者与曽尓己比武止也見之
和歌 あめふりてみつまさりけりあまのかはこよひはよそにこひむとやみし
解釈 雨降りて水まさりけり天の河今宵はよそに恋ひむとや見し

歌番号二二八
可部之
返之
返し

与美比止之良須
与美人之良須
詠み人知らず

原文 三末万佐利安佐幾世志良寸奈利奴止毛安万乃止王多留布祢毛奈之也八
定家 水万佐利浅幾世志良寸奈利奴止毛安万乃止渡留舟毛奈之也八
和歌 みつまさりあさきせしらすなりぬともあまのとわたるふねもなしやは
解釈 水まさり浅き瀬知らずなりぬとも天の門渡る舟もなしやは

歌番号二二九
奈奴可比尓遠无奈乃毛止尓徒可者之个留
七日女乃毛止尓徒可者之个留
七日、女のもとにつかはしける

布知八良乃可祢美
藤原兼三
藤原兼三

原文 多奈者多毛安不与安利个利安万乃可者己乃王多利尓八和多留世毛奈之
定家 織女毛安不与安利个利天河己乃渡尓八和多留世毛奈之
和歌 たなはたもあふよありけりあまのかはこのわたりにはわたるせもなし
解釈 織女も逢ふ夜ありけり天の河このわたりには渡る瀬もなし

歌番号二三〇
加礼尓个留於止己乃奈奴可比乃与万天幾多利个礼八
遠无奈乃与美天者部利个留
加礼尓个留於止己乃七日乃与万天幾多利个礼八
女乃与美天侍个留
かれにける男の、七日の夜、まで来たりければ、
女のよみて侍りける

与美比止之良寸
与美人之良寸
詠み人知れず

原文 飛己保之乃万礼尓安不与乃止己奈末者宇知者良部止毛徒由个可利遣利
定家 飛己保之乃万礼尓安不与乃止己夏者打者良部止毛徒由个可利遣利
和歌 ひこほしのまれにあふよのとこなつはうちはらへともつゆけかりけり
解釈 彦星のまれに逢ふ夜の常夏はうち払へども露けかりけり

歌番号二三一
奈奴可乃与比止乃毛止与利可者之己止尓己与比安者无止
以飛於己世天者部利个礼者
七日人乃毛止与利返事尓己与比安者无止
以飛遠己世天侍个礼者
七日、人のもとより返事に、今宵逢はん
と言ひおこせて侍りければ

与美比止之良寸
与美人之良寸
詠み人知らず

原文 己飛/\天安者武止遠毛布由不久礼八多奈者多川女毛加久曽安留良之
定家 己飛/\天安者武止思由不久礼八多奈者多川女毛加久曽安留良之
和歌 こひこひてあはむとおもふゆふくれはたなはたつめもかくそあるらし
解釈 恋ひ恋ひてあ逢はむと思ふ夕暮れは織姫もかくぞあるらし

歌番号二三二
可部之
返之
返し

与美比止之良寸
与美人之良寸
詠み人知らず

原文 堂久比奈幾毛乃止者和礼曽奈利奴部幾堂奈者堂川女者比止女也者毛留
定家 堂久比奈幾物止者我曽奈利奴部幾多奈者多川女者人女也者毛留
和歌 たくひなきものとはわれそなりぬへきたなはたつめはひとめやはもる
解釈 たぐひなき物とは我ぞなりぬべき織姫は人目やはもる

歌番号二三三
堂以之良寸
題之良寸
題しらす

与美比止之良寸
与美人之良寸
詠み人知らず

原文 安満乃可者奈可礼天己比者宇久毛曽安留安者礼止於毛布世尓者也久三武
定家 安満乃河流天己比者宇久毛曽安留安者礼止思世尓者也久見武
和歌 あまのかはなかれてこひはうくもそあるあはれとおもふせにはやくみむ
解釈 天の河流れて恋ひば憂くもぞあるあはれと思ふ瀬に早く見む

歌番号二三四
堂以之良寸
題之良寸
題しらす

与美比止之良寸
与美人之良寸
詠み人知らず

原文 多万可川良堂衣奴毛乃可良安良堂満乃止之乃和多利者堂々比止与乃美
定家 玉鬘堂衣奴物可良安良多満乃年乃渡者堂々比止与乃美
和歌 たまかつらたえぬものからあらたまのとしのわたりはたたひとよのみ
解釈 玉葛絶えぬ物からあらたまの年の渡りはただ一夜のみ

歌番号二三五
堂以之良寸
題之良寸
題しらす

与美比止之良寸
与美人之良寸
詠み人知らず

原文 安幾乃世乃己々呂毛志留久多奈者多乃安部留己与比八安計寸毛安良奈无
定家 秋乃夜乃心毛志留久多奈者多乃安部留己与比八安計寸毛安良奈无
和歌 あきのよのこころもしるくたなはたのあへるこよひはあけすもあらなむ
解釈 秋の夜の心もしるく七夕の逢へる今宵は明けずもあらなん

歌番号二三六
堂以之良寸
題之良寸
題しらす

与美比止之良寸
与美人之良寸
詠み人知らず

原文 知幾利計无己止乃者以末者可者之天武止之乃和多利尓与利奴留物遠
定家 契釼事乃葉今者返之天武年乃和多利尓与利奴留物遠
和歌 ちきりけむことのはいまはかへしてむとしのわたりによりぬるものを
解釈 契りけん言の葉今は返してむ年のわたりによりぬる物を

歌番号二三七
奈奴可比尓衣知己乃久良宇止尓川可者之遣流
七日越後蔵人尓川可者之遣流
七日、越後蔵人につかはしける

布知八良乃安徒多々安曾无
藤原敦忠朝臣
藤原敦忠朝臣

原文 安布己止乃己与比川幾奈者堂奈者多尓於止利也志奈无己比者万佐利天
定家 逢事乃今夜過奈者織女尓於止利也志南己比者万佐利天
和歌 あふことのこよひすきなはたなはたにおとりやしなむこひはまさりて
解釈 逢ふ事の今宵過ぎなば織女におとりやしなん恋はまさりて

歌番号二三八
奈奴可比
七日
七日

与美比止之良春
与美人之良須
詠み人知らず

原文 多奈者多乃安満乃止和多累己与比左部遠知可堂比止乃川礼奈可流良无
定家 織女乃安満乃止和多累己与比左部遠知方人乃川礼奈可流良无
和歌 たなはたのあまのとわたるこよひさへをちかちひとのつれなかるらむ
解釈 織女の天の門渡る今宵さへ遠方人のつれなかるらん

歌番号二三九
多奈者多遠与免留
七夕遠与免留
七夕を詠める

与美比止之良春
与美人之良須
詠み人知らず

原文 安満乃可者止遠幾和多利者奈个礼止毛幾美可布奈天者止之尓己曽万天
定家 天河止遠幾渡者奈个礼止毛君可布奈天者年尓己曽万天
和歌 あまのかはとほきわたりはなけれともきみかふなてはとしにこそまて
解釈 天の河遠き渡はなけれども君が船出は年にこそ待て

歌番号二四〇
多奈者多遠与免留
七夕遠与免留
七夕を詠める

与美比止之良春
与美人之良須
詠み人知らず

原文 安満乃可者以者己春奈美乃多知為川々阿幾乃奈奴可乃遣不遠之曽万川
定家 安満乃河以者己春浪乃多知為川々秋乃奈奴可乃遣不遠之曽松
和歌 あまのかは いはこすなみの たちゐつつ あきのなぬかの けふをしそまつ
解釈 天の河岩越す浪の立ちゐつつ秋の七日の今日をしぞ待つ

歌番号二四一
多奈者多遠与免留
七夕遠与免留
七夕を詠める

幾乃止毛乃利
紀友則
紀友則

原文 遣不与利八安万乃可者良者安世奈々无曽己為止毛奈久多々和多利奈无
定家 遣不与利八安万乃安世奈南曽己為止毛奈久多々和多利奈无
和歌 けふよりはあまのかはらはあせななむそこひともなくたたわたりなむ
解釈 今日よりは天の河原はあせななん底ひともなくただ渡りなん

歌番号二四二
多奈者多遠与免留
七夕遠与免留
七夕を詠める

与美比止之良須
与美人之良須
詠み人知らず

原文 安満乃可者奈可礼天己不留堂奈者多乃奈三多奈留良之安幾乃志良川由
定家 天河流天己不留堂奈者多乃涙奈留良之秋乃志良川由
和歌 あまのかはなかれてこふるたなはたのなみたなるらしあきのしらつゆ
解釈 天の河流れて恋ふる七夕の涙なるらし秋の白露

歌番号二四三
多奈者多遠与免留
七夕遠与免留
七夕を詠める

与美比止之良須
与美人之良須
詠み人知らず

原文 安満乃可者世々乃之良奈美堂可遣礼止堂々和多利幾奴万川尓久留之三
定家 安満乃河世々乃白浪堂可遣礼止堂々和多利幾奴万川尓久留之三
和歌 あまのかはせせのしらなみたかけれとたたわたりきぬまつにくるしみ
解釈 天の河瀬々の白浪高けれでただ渡り来ぬ待つに苦しみ

歌番号二四四
多奈者多遠与免留
七夕遠与免留
七夕を詠める

与美比止之良須
与美人之良須
詠み人知らず

原文 安幾具礼者可者幾利和多留安満乃可者加者可美見川々己布留比乃於本幾
定家 秋具礼者河霧和多留天河加者可美見川々己布留日乃於本幾
和歌 あきくれはかはきりわたるあまのかはかはかみみつつこふるひのおほき
解釈 秋来れば河霧渡る天の河川上見つつ恋ふる日の多き

歌番号二四五
多奈者多遠与免留
七夕遠与免留
七夕を詠める

与美比止之良須
与美人之良須
詠み人知らず

原文 安満乃可者己飛之幾世尓曽和多利奴留堂幾川奈美多尓曾天者奴礼川々
定家 天河己飛之幾世尓曽渡奴留堂幾川涙尓袖者奴礼川々
和歌 あまのかはこひしきせにそわたりぬるたきつなみたにそてはぬれつつ
解釈 天の河恋しき瀬にぞ渡りぬるたぎつ涙に袖は濡れつつ

歌番号二四六
多奈者多遠与免留
七夕遠与免留
七夕を詠める

与美比止之良須
よみ人しらす
詠み人知らず

原文 堂奈者多乃止之止者以者之安満乃可者久毛多知和多利以左美多礼奈无
定家 織女乃年止者以者之天河雲多知和多利以左美多礼奈无
和歌 たなはたのとしとはいはしあまのかはくもたちわたりいさみたれなむ
解釈 織女の年とはいはじ天の河雲立ちわたりいざ乱れなん

歌番号二四七
多奈者多遠与免留
七夕遠与免留
七夕を詠める

於保可宇知乃美川祢
凡河内躬恒
凡河内躬恒

原文 安幾乃世乃安可奴和可礼遠多奈者多者堂天奴幾尓己曽於毛不部良奈礼
定家 秋乃夜乃安可奴別遠多奈者多者堂天奴幾尓己曽思不部良奈礼
和歌 あきのよのあかぬわかれをたなはたはたてぬきにこそおもふへらなれ
解釈 秋の夜のあかぬ別れを七夕は経緯にこそ思ふべらなれ

歌番号二四八
布美川幾乃由宇可乃与乃安之多
七月八日乃与乃安之多
七月八日の朝

加祢寸个乃安曾无
兼輔朝臣
兼輔朝臣(藤原兼輔)

原文 堂奈者多乃可部留安之多乃安満乃可者布祢毛加与者奴奈三毛多々奈无
定家 堂奈者多乃帰朝乃天河舟毛加与者奴浪毛多々南
和歌 たなはたのかへるあしたのあまのかはふねもかよはぬなみもたたなむ
解釈 七夕の帰る朝の天の河舟も通はぬ浪も立たなん

歌番号二四九
於奈之己々呂遠
於奈之心遠
同じ心緒

徒良由幾
徒良由幾
つらゆき(紀貫之)

原文 安佐止安計天奈可女也寸良无多奈者多者安可奴和可礼乃曽良遠己比川々
定家 安佐止安計天奈可女也寸良无多奈者多者安可奴別乃曽良遠己比川々
和歌 あさとあけてなかめやすらむたなはたはあかぬわかれのそらをこひつつ
解釈 朝門あけてながめやすらん七夕はあかぬ別れの空を恋ひつつ

歌番号二五〇
於毛布己止者部利天
思布事侍利天
思ふ事侍りて

与美比止之良寸
与美人之良寸
よみ人しらす

原文 安幾可世乃布遣者佐寸可尓和比之幾者与乃己止和利止於毛布毛乃可良
定家 秋風乃布遣者佐寸可尓和比之幾者世乃己止和利止思物可良
和歌 あきかせのふけはさすかにわひしきはよのことわりとおもふものから
解釈 秋風の吹けばさすがにわびしきは世のことわりと思ふ物から

歌番号二五一
堂以之良春
題之良春
題知らず

与美比止之良寸
与美人之良寸
よみ人しらす

原文 末川无之者川己恵佐曽布安幾可世者遠止者弥麻与利布幾曽女尓遣利
定家 松虫乃者川己恵佐曽布秋風者遠止者山与利布幾曽女尓遣利
和歌 まつむしの はつこゑさそふ あきかせは おとはやまより ふきそめにけり
解釈 松虫のはつこゑさそふ秋風はおとは山よりふきそめにけり


歌番号二五二
堂以之良春
題之良春
題知らず

奈利比良乃安曾无
業平朝臣
業平朝臣(在原業平)

原文 由久保多留久毛乃宇部万天以奴部久者安幾可世布久止可利尓徒遣己世
定家 由久蛍雲乃宇部万天以奴部久者秋風布久止雁尓徒遣己世
和歌 ゆくほたる くものうへまて いぬへくは あきかせふくと かりにつけこせ
解釈 ゆく蛍雲のうへまていぬへくは秋風ふくと雁につけこせ

歌番号二五三
堂以之良春
題之良春
題知らず

与三比止之良寸
与三人之良寸
よみ人しらす

原文 安幾可世乃久左者曽与幾天布久奈部尓保乃可尓志川留比久良之乃己恵
定家 秋風乃草葉曽与幾天布久奈部尓保乃可尓志川留比久良之乃己恵
和歌 あきかせの くさはそよきて ふくなへに ほのかにしつる ひくらしのこゑ
解釈 秋風の草葉そよきてふくなへにほのかにしつるひくらしのこゑ

歌番号二五四
堂以之良春
題之良春
題知らず

徒良由幾
徒良由幾
つらゆき(紀貫之)

原文 飛久良之乃己恵幾久也麻乃知可个礼也奈幾川留奈部尓以利比左寸良无
定家 飛久良之乃声幾久山乃知可个礼也奈幾川留奈部尓以利日左寸良无
和歌 ひくらしの こゑきくやまの ちかけれや なきつるなへに いりひさすらむ
解釈 ひくらしの声きく山のちかけれやなきつるなへにいり日さすらん

歌番号二五五
堂以之良春
題之良春
題知らず

徒良由幾
徒良由幾
つらゆき(紀貫之)

原文 比具良志能己恵幾具可良尓末川无之乃奈尓乃美比等遠々毛布己呂可奈
定家 比具良志能己恵幾具可良尓松虫乃名尓乃美人遠思己呂哉
和歌 ひくらしの こゑきくからに まつむしの なにのみひとを おもふころかな
解釈 ひくらしのこゑきくからに松虫の名にのみ人を思ふころかな

歌番号二五六
堂以之良春
題之良春
題知らず

徒良由幾
徒良由幾
つらゆき(紀貫之)

原文 己々呂安利天奈幾毛志川留可飛久良之乃以川礼毛々乃々安幾天宇个礼八
定家 心有天奈幾毛志川留可飛久良之乃以川礼毛々乃々安幾天宇个礼八
和歌 こころありて なきもしつるか ひくらしの いつれもものの あきてうけれは
解釈 心有りてなきもしつるかひくらしのいつれももののあきてうけれは

歌番号二五七
堂以之良春
題之良春
題知らず

徒良由幾
徒良由幾
つらゆき(紀貫之)

原文 安幾可世乃布久々留与比八幾利/\寸久左乃祢己止尓己衛美多礼个里
定家 秋風乃吹久留与比八蛬草乃祢己止尓己衛美多礼个里
和歌 あきかせの ふきくるよひは きりきりす くさのねことに こゑみたれけり
解釈 秋風の吹きくるよひは蛬草のねことにこゑみたれけり

歌番号二五八
堂以之良春
題之良春
題知らず

徒良由幾
徒良由幾
つらゆき(紀貫之)

原文 和可己止久毛乃也加奈之幾々利/\寸久左乃也止利尓己恵多衣寸奈久
定家 和可己止久物也加奈之幾々利/\寸草乃也止利尓己恵多衣寸奈久
和歌 わかことく ものやかなしき きりきりす くさのやとりに こゑたえすなく
解釈 わかことく物やかなしききりきりす草のやとりにこゑたえすなく

歌番号二五九
堂以之良春
題之良春
題知らず

徒良由幾
徒良由幾
つらゆき(紀貫之)

原文 己武止以比之本止也寸幾奴留安幾乃々尓多礼末川无之曽己衛乃加奈之幾
定家 己武止以比之本止也寸幾奴留秋乃々尓誰松虫曽己衛乃加奈之幾
和歌 こむといひし ほとやすきぬる あきののに たれまつむしそ こゑのかなしき
解釈 こむといひしほとやすきぬる秋ののに誰松虫そこゑのかなしき

歌番号二六〇
堂以之良春
題之良春
題知らず

徒良由幾
徒良由幾
つらゆき(紀貫之)

原文 安幾乃々尓幾也止留比等毛於毛保衣寸多礼遠末川无之己々良奈久良无
定家 秋乃々尓幾也止留人毛於毛保衣寸多礼遠松虫己々良奈久良无
和歌 あきののに きやとるひとも おもほえす たれをまつむし ここらなくらむ
解釈 秋ののにきやとる人もおもほえすたれを松虫ここらなくらん

歌番号二六一
堂以之良春
題之良春
題知らず

徒良由幾
徒良由幾
つらゆき(紀貫之)

原文 安幾可世乃也々布幾之个者乃遠佐武美和比之幾己恵尓末川无之曽奈久
定家 安幾風乃也々布幾之个者乃遠佐武美和比之幾己恵尓松虫曽鳴
和歌 あきかせの ややふきしけは のをさむみ わひしきこゑに まつむしそなく
解釈 あき風のややふきしけはのをさむみわひしき声に松虫そ鳴く

歌番号二六二
堂以之良春
題之良春
題知らず

布知八良乃毛止世之乃安曾无
藤原元善朝臣
藤原元善朝臣

原文 安幾具礼者野毛世尓无之乃遠利美多留己恵乃安也遠者多礼可幾留良无
定家 秋具礼者野毛世尓虫乃遠利美多留己恵乃安也遠者多礼可幾留良无
和歌 あきくれは のもせにむしの おりみたる こゑのあやをは たれかきるらむ
解釈 秋くれは野もせに虫のおりみたるこゑのあやをはたれかきるらん

歌番号二六三
堂以之良春
題之良春
題知らず

与三比止之良寸
与三人之良寸
よみ人しらす

原文 可世佐武三奈久安幾无之乃奈美多己曽久左者以呂止留川由止遠久良女
定家 風佐武三奈久秋虫乃涙己曽久左者色止留川由止遠久良女
和歌 かせさむみ なくあきむしの なみたこそ くさはいろとる つゆとおくらめ
解釈 風さむみなく秋虫の涙こそくさは色とるつゆとおくらめ

歌番号二六四
堂以之良春
題之良春
題知らず

与三比止之良寸
与三人之良寸
よみ人しらす

原文 安幾可世乃布久之久末川者也麻奈可良奈三多知可部留遠止曽幾己由留
定家 秋風乃吹之久松者山奈可良浪立帰遠止曽幾己由留
和歌 あきかせの ふきしくまつは やまなから なみたちかへる おとそきこゆる
解釈 秋風の吹きしく松は山なから浪立帰るおとそきこゆる

歌番号二六五
己令左多乃美己乃以部宇多安者世尓
是貞乃美己乃家歌合尓
是貞のみこの家歌合に

美不乃多々三祢
壬生忠岑
壬生忠岑

原文 万川乃祢尓可世乃志良部遠満可世天者多川多比目己曽安幾八比久良之
定家 松乃祢尓風乃志良部遠満可世天者龍田姫己曽秋八比久良之
和歌 まつのねに かせのしらへを まかせては たつたひめこそ あきはひくらし
解釈 松のねに風のしらへをまかせては竜田姫こそ秋はひくらし

歌番号二六六
安幾多以布可宇川万佐乃加多波良奈留以部尓者部利个留尓
於幾乃者尓布美遠左之天徒可者之遣流
秋大輔可宇川万佐乃加多波良奈留家尓侍个留尓
於幾乃葉尓布美遠左之天徒可者之遣流
秋、大輔かうつまさのかたはらなる家に侍りけるに
をきの葉にふみをさしてつかはしける

比多利乃於保伊万宇智岐美
左大臣
左大臣

原文 也万左止乃毛乃左比之幾者遠幾乃者乃奈比久己止尓曽遠毛比也良留々
定家 山里乃物左比之左者荻乃者乃奈比久己止尓曽思也良留々
和歌 やまさとの ものさひしきは をきのはの なひくことにそ おもひやらるる
解釈 山里の物さひしさは荻のはのなひくことにそ思ひやらるる

歌番号二六七
堂以之良寸
題之良寸
題知らず

遠乃々三知可世乃安曾无
小野道風朝臣
小野道風朝臣

原文 保尓者以天奴以可尓可世末之者奈寸々幾三遠安幾可世尓寸天也者天々无
定家 保尓者以天奴以可尓可世末之花寸々幾身遠秋風尓寸天也者天々无
和歌 ほにはいてぬ いかにかせまし はなすすき みをあきかせに すてやはててむ
解釈 ほにはいてぬいかにかせまし花すすき身を秋風にすてやはててん

歌番号二六八
布多利乃於止己尓毛乃以比个留遠无奈乃飛止利尓徒幾尓个礼八
以末飛止利可徒可者之遣流
布多利乃於止己尓物以比个留女乃飛止利尓徒幾尓个礼八
今飛止利可徒可者之遣流
ふたりのをとこに物いひける女の、ひとりにつきにけれは、
今ひとりかつかはしける

与美比止之良須
与美人之良須
よみ人しらす

原文 安遣久良之万毛留太乃美遠加良世川々多毛止曽本川乃三止曽奈利奴留
定家 安遣久良之万毛留太乃美遠加良世川々多毛止曽本川乃身止曽奈利奴留
和歌 あけくらし まもるたのみを からせつつ たもとそほつの みとそなりぬる
解釈 あけくらしまもるたのみをからせつつたもとそほつの身とそ成りぬる

歌番号二六九
可部之
返之
返し

与美比止之良須
与美人之良須
よみ人しらす

原文 己々呂毛天於不留也万堂乃飛川知本者幾美万毛良祢止加留比止毛奈之
定家 心毛天於不留山田乃飛川知本者君万毛良祢止加留人毛奈之
和歌 こころもて おふるやまたの ひつちほは きみまもらねと かるひともなし
解釈 心もておふる山田のひつちほは君まもらねとかる人もなし

歌番号二七〇
堂以之良春
題之良春
題しらす

布知八良乃毛利布三
藤原守文
藤原守文

原文 久左乃以止尓奴久之良多末止三衣川留者安幾乃武寸部留徒由尓曽有个留
定家 草乃以止尓奴久白玉止見衣川留者秋乃武寸部留徒由尓曽有个留
和歌 くさのいとに ぬくしらたまと みえつるは あきのむすへる つゆにそありける
解釈 草のいとにぬく白玉と見えつるは秋のむすへるつゆにそ有りける

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