麒麟琳記〜敏腕Pの日々のつぶやき改題

還暦手前の身の回りのこまごま。
スポーツや映画演劇など。

藪の中から龍之介

2008年09月13日 | 鑑賞
 芥川龍之介の死から始まる青年劇場第97回公演『藪の中から龍之介』(作/篠原久美子、演出/原田一樹)が、昨夜幕をあけました。

 文豪・芥川龍之介の死をラジオが告げるところから始まります。
 「死んでるよな?」「死んでますね」
 龍之介の小説の登場人物。。。『杜子春』の杜子春の父や『羅生門』の下人など。。。11人が彼の亡骸を前に言います。

 作者の死は、自分たちが消えることを意味すると思う登場人物たちは、
 「死んで、ねえよな?」「死んでまへんな」
 と自分たちの存在を確認します。

 この登場人物たちが。。。『歯車』のレエン・コオト男が龍之介に、『地獄変』の猿は龍之介に社会主義思想を説いた久板卯之助に、等。。。実在の人物になり“芥川の死”の真相を探る旅へ・・・舞台は大きく転がっていきます。

 その中の一人、レエン・コオト男の北直樹が、かなり「アクタガワ」入ってました。ここに真実味があったことで舞台全体のリアリティが増しました。

 龍之介の妻・文に扮した『奉教人の死』の、ろおれんぞが、一瞬にして、長崎のキリスト教寺院の少年ろおれんぞに戻って龍之介に訴えるなどの多重構造にも切れ味があって、とても演劇的でした。

 それらは膨大な資料に当たった上で書かれており、とても骨太。少々難解な部分もありましたが、当日全員に配られた副読本のような簡易パンフに細かい解説があり、助かりました。

 例えば。。。
 未完の作品も登場し、その一編『美しい村』は千葉県八街で実際に起きた小作争議をモデルにしていて、小説の中では「浅井村」という設定だと。

 さて「浅井」といえば、事故米事件で、メタミドホス検出のもち米を転売した会社の一つです。

 事件は被害拡大の一途。
 今、起きた話ではなく、随分過去にまで遡る根の深い事件だと解ってきました。

 輸入米を、国内の米価に影響しないよう倉庫に保管し、2~3年後に販売されていること、その保管中にカビが生えたり異臭が発生したりして食用に適さないと判断されたものが「事故米」だということ、その量は年間2千トン程度だということ、どれもこの事件が起きるまで知りませんでした。
 
 食を輸入に頼る日本。狂牛病、鳥インフルエンザ、今回の「毒入米」。。。食の不安は増すばかりです。

 話が逸れました。

 そういえば、青年劇場は「食」をテーマにした『菜の花ラプソディ』という好作品をレパートリーに持っている劇団でもあります。

 『藪の中から龍之介』は紀伊國屋サザンシアターで9月12日~21日。その後、府中の森芸術劇場ふるさとホール(22日)、かめありリリオホール(25日)にて巡演。
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