麒麟琳記〜敏腕Pの日々のつぶやき改題

還暦手前の身の回りのこまごま。
スポーツや映画演劇など。

暑い五月の観劇を振り返る(序)

2015年05月31日 | 鑑賞

2015年5月、やたら暑かった今月の
観劇を振り返りましょう……。


今月は商業演劇から小劇場まで
幅広く拝見しましたが……結果、
「社会人演劇」を多く観た。

演劇を学ぶシニアクラスの卒業生が
作った劇団=櫂人のアトリエ公演

……そう、なんと櫂人は
自前の稽古場を持っているのだ。
ただ、その昔
「職場演劇」が華やかだった頃から
今尚活動を続ける全国にある
「社会人劇団」には拠点を持つ
ところが多いのである。
その歴史たるや半世紀前後だ。

一方、櫂人はまだ旗揚げから
丸四年に少し満たないから凄い!

話が逸れた。
櫂人のアトリエ公演に始まり、
遊劇社ねこ印工務店、
川崎郷土・市民劇と続いた。

後者はまさに「市民劇」と
名前にある通り、行政を絡めた
市民参加型の公演で、
郷土の名士の半生を描いて、
今回が五作目であった。

回を重ねて「常連」も増えて、
またスタッフはプロ中のプロ、
豪華なセット、華やかな衣裳、
間口の広~い舞台で楽しそうでした。

前者は厳密にいえば、
社会人劇団ではないのだが、
ほぼ出演者が「会社員」。

で本日夕刻、観にいくのが
劇団銀河ラボ。2011年旗揚げ。
メンバーは演劇講座出身者中心。

つまり今月の九本の観劇のうち
四本に及ぶということ……。

感想などは今夕の
『君死にたもうことなかれのオペラ』
を観てからにします。

***以下、観劇リスト***

劇団櫂人アトリエ公演2015
『閉まらぬカーテン』
『男と女と男』
作/横光利一、演出/篠本賢一
於/アトリエそら

松竹『嵐が丘』
原作/エミリー・ブロンテ、脚本・演出/G2
於/日生劇場

東京演劇アンサンブル・スープ劇場Ⅷ
『未必の故意』
作/安部公房、上演台本・演出/尾崎太郎
於/ブレヒトの芝居小屋

第8回ルナティック演劇祭参加
遊劇社ねこ印工務店
『夏の夜の夢のごとし』
作/W・シェイクスピア、
構成・構成/早坂まこと(仮)
演出/こたとのぼる
於/小劇場「楽園」

別役実フェスティバル参加
ラヴィニア『-不思議の国のアリスの-
帽子屋さんのお茶の会』
作/別役実、演出/高円寺圭子
於/ウッディシアター中目黒

第5回川崎郷土・市民劇
『華やかな散歩』
作/小川信夫、演出/鈴木龍男
於/川崎市教育文化会館

劇団じゃけんVol.32
(15周年記念公演)
『陽が昇り、そして僕らは生きている』
作・演出/難波善明
於/東中野RAFT

山本制作所
『昭和六十四年一月七日』
作/岡山矢、演出/山上優
於/スペース雑遊

劇団銀河ラボ
『君死にたもうことなかれのオペラ』
作/吉田隆子、演出/志賀澤子
於/ブレヒトの芝居小屋

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コインパーキングの軽トラ

2015年05月27日 | 身辺雑記
我が家から一番近いコンビニに歩く。

一度だけ左に曲がる角には
コインパーキングがあるので、
概ねそこをショートカットする。

今朝、コピーに行くとき、
軽トラックが停まっていて、
何故か人が乗っていた。
ちょうど今車庫入れを終えた、
あるいはこれから出庫します、
という感じではなかった。


男はドアに背を預け助手席を向き
女は険しい顔で正面を向いていた。
コピーを終えた帰り道でも
同じ状態に変わりはなかった。

ちら見しただけながら、
深刻な話をしてるムード感満載。



中学生の頃・・・早朝の教室とか
非常階段の踊り場、或いは放課後の
体育館裏や特別教室脇の階段下
・・・そんな場所で、
恋の始まりや終わりが展開された。
あくまで一般論だが。

いずれにしろ言葉はなく沈黙が長い。
本来なら華やぎそうな「始まり」でも
意外と無言のかけひきがあるものだ。
……あくまで一般論だが

前段の特別教室というのは、
校舎一階のどんつくの木工室あたり。
その脇から上にだけ伸びる階段の
人が行き来しない空間には、
掃除用具のロッカーなど置いてあり
埃っぽくて薄暗い場所。
その壁に背中をくっつけて並んで立ち、
平気で一時間以上黙ったまま居る。
……けれど頭の中はフル回転。

あの体力と精神力って、
やはり若さなんだろうな~



話を戻す。
車内の二人はともにアラフィフくらい。
13~15歳には前述のような
お金のいらない処しか場はないけれど
喫茶店なり何なり、大人の彼らには
別の場所もあるはずなのに……

さて真剣な話は、親の介護だったり
内容は男女の色恋以外の可能性もある。
それにしても。
わざわざコインパーキングを会談の場に
選んだのは不可思議だ。選んだのではなく、
ちょうど停めたか出る直前に、突如、
その「深刻な時間」が訪れてしまったのか。


奇しくも東京が30度を超えた日の話。

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ラヴィニア開国を叙す【第二幕】

2015年05月25日 | 制作公演関連
ラヴィニア公演
『-不思議の国アリスの-
帽子屋さんのお茶の会』
(作/別役実、演出/高円寺圭子
時/2015年5月20日~24日、
於/ウッディシアター中目黒)

ロビーにはこの公演のチラシ画を
担当した、かじがやごろぉ氏の
作品が展示されていました。



物販も積極的!
Tシャツに、CDに加え、
別役実フェスティバルのパスポート、
更にはオリジナルコーヒーとケーキまで。


休憩終了


4)帽子屋さんのお茶の会

芳賀一之(Kazu)のジャジーなボーカルによる
メインテーマで幕が開く。

全編彼のオリジナル曲で、別役の台詞が
一部「歌」になって客席に届く。

これまでならラヴィニア・コアメンバーが
シークエンスを繋ぐ場面で
(時には小話の中に現れて)
その「くだらなさ」を打ち消す
艶やかなコーラスを歌いあげていた。

今回は客演陣が歌う
ヒロイン(なのか?)アリスを演じた
彦坂有美(Hiko)もともに歌った。

ところが。
眠りねずみ役の橋本千佳子(Chako)
は文字通り眠っている。
たまに目覚めてもビンタするばかり。

サッカーにおいて。
後半40分過ぎにピッチへ送り出され、
わずか5分のうちにゴールネットを揺らす
ヒーローを時折見掛けるが……。

橋本は最後に一人でメインテーマを
歌いあげて、幕は降りた。


5)客演陣の見事な仕事ぶり

劇団という形をとらずに、
公演ごとに役者を集めるのが、
今や主流ともいえる演劇界だが、
ラヴィニアもご多分に洩れず、
また「何もかも解った」常連を
有するのも他のプロデュース公演同様。

『帽子屋さん~』でも、芝居半ば過ぎに
登場する魔法使いの斎木亨子が
後半に向けてギアを変える
難しい役どころをさらりと演じ、
チシャ猫の森岡正次郎は、
全編に一定のリズムを刻む
ベースの仕事で屋台骨を支えた。

市長の田中リュウ、死者の宮島岳史は
得意のポジションで特異な演技を披露。

常連組に迫る複数回出場の巨漢二人。
公爵夫人の渡辺英雄は、
全盛期の白井晃ぶりの女装で、
通訳の岡本高英は嫌味のないぼけで、
舞台にアクセントを与えた。

そんなファミリーの中に今回
初参戦したのが今井智紘、神戸誠治。
奇しくも二人とも別役作品も初体験

チシャ猫とともにお茶の会に来る
お客様をエスコートする三月うさぎの
今井はまるで初めて感なくフィット。

そして話の核の帽子屋の神戸。
関西出身ながら日光江戸村から
役者人生をスタートし欽ちゃんに師事。
が、上京して立った舞台はアングラ!
という不可思議な道程を歩いた
座組最年長からは「貫禄」が滲んだ。


6)そして15周年へ

そんなこんなで。
別役実フェステフィバルに参加したことで、
初めてラヴィニアを見る観客が多かった
『帽子屋さん~』は、また同時に、
ラヴィニア自身が新しい闘いを始めた
記念すべき舞台でもあった。

11月、15周年記念公演はどうなるのか。
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ラヴィニア開国を叙す【第一幕】

2015年05月24日 | 鑑賞


今日、幕をおろしたラヴィニア公演
『-不思議の国のアリスの-
帽子屋さんのお茶の会』について。
二回にわたって論じます。


1)巨大演劇祭へのチャレンジ

別役実フェスティバルは、
民藝、俳優座、文学座、青年座に
円、昴、さらにはテアトル・エコー
といった老舗劇団をはじめ、
そこに連なる「新劇」の創造集団
銅鑼、名取事務所、Pカンパニーを中心に、
この手の催しには珍しく公立劇場
(新国立、北九州)の製作公演が加わり、
さらに小劇場までをも網羅した、
実に幅広い18ものカンパニーが集結。
かつ一年半という長期展開の大イベントだ。

そこに、ラヴィニアが参加した。

これまでごく一部のマニア(?)の間で
楽しまれてきたパフォーマンスが
巨大な演劇祭に参戦することで、
舞台成果にも大きな変化が見られた。

鎖国から開国へと舵を切った幕末のように。


2)ラヴィニアの変貌

ラヴィニアはもともと台詞を排して、
歌とダンスとマイムにより構成された
ステージで、その活動を始めた。
おとぎばなしや偉大な画家の生涯を
モチーフにしたオリジナルを放ち
評価を高め、やがて別役実の
エッセイを舞台化するに至る。
そこで、作品に台詞が顔を覗かせた。

そして。
初めて既存の戯曲に立ち向かう時、
選んだのは、別役の代表作
『-不思議な国のアリスの-
帽子屋さんのお茶の会』。

奇しくもこのフェスティバルにおいて
最多四団体が取り組む戯曲だ。
もちろん当たり前にはやらない。
大胆に音楽を取り入れたラヴィニア流だ。

つまり「こんにちは、みなさん」から
「みなさん、こんにちは」的な変貌だ。

何のこっちゃ?と多くの人が思うだろう。
『帽子屋さん~』の冒頭にある
《不条理》な台詞のひとつなのだ。
だけれでも。ここで説明などしない。

3)変貌の遷移

ラヴィニアが大幅なメンバーチェンジを経て、
今回が初めての《演劇》となる。

話が前後してしまったが、
ラヴィニアは演劇表現と並行して
音楽活動を行うユニットだ。

マイナーチェンジはありつつ、
女性三部(ときに四部)のコーラスを
結成以来貫いてきた。
その最強の武器《ハモり》を手放し、
Chako、Hiko、Kazuという三人になり、
かわりに手に入れた武器は、、、
作曲と演奏のできるKazuの音楽力と、
これまで如何なる努力をもってしても
かなわなかった可憐さ。
Hikoの若さと美だ。

Chakoにも若い頃はたぶんあったろう。
けれども他のメンバーを含めて、
そこに可憐はなかったのだ。

かくして新しく生まれ変わった
ラヴィニアはまず音楽のライヴを二発。

そして、ウッディシアター中目黒で
2013年11~12月以来の芝居に挑んだ。

客演の俳優たちの演技とラヴィニアの
圧倒的なハーモニーの融合は
最早繰り出すことは不可能。

前述の《新たなアイテム》を駆使し
日本演劇史に輝く一編に正面から、
いやもとい。やや斜め左から攻めて行った。

黒船に挑んだ江戸幕府軍よろしく。

(ここで休憩)
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あられもない0520

2015年05月20日 | 制作公演関連


アトリエ・センターフォワード
第11回公演『あられもない貴婦人』
(作・演出/矢内文章)
本日、初顔合わせ兼稽古初日

僕のACF参戦はvol.8からだから
『あられもない~』で4本目になる。
これまで渋谷某所で稽古してきたが、
本作では本駒込に居を移した。


スタジオとして公演も行われる場所。
なんだか小洒落た椅子なども…。

そして謎のブランコ。
その奥にはシャンデリア。


「渋谷」はアジトみたいだったので
180度雰囲気の異なる「本駒込」で、
6月27日幕をあける(7月5日迄)
芝居のスタートを切った。

劇場は毎度おなじみシアター風姿花伝

そして出演者は・・・
桂ゆめ(劇団俳優座)
稲葉能敬(劇団桟敷童子)
川辺邦弘(文学座)
片桐はづき
小暮智美(劇団青年座)
眞藤ヒロシ
間宮あゆみ
洪明花(ユニークポイント)
成田浬
矢内文章
・・・ACFお初の役者から、
ほぼレギュラー等々様々。
そのあたりはおいおいと紹介。

スタッフも美術、衣装、音響、
舞台監督と多数が顔を寄せた。

こちらは舞台美術模型を置いて
説明する根来美咲(中央・橙色)を
取り囲む役者たちの図。

vol.9は大正時代、前回は未来。
今回の舞台は、戦後まもない
GHQ占領下の東京です。
そのへんも矢張り、おいおいと。
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ROSE at theaterX vol.20

2015年05月19日 | 制作公演関連
もうそんな季節か……と、度々思う。

小さい頃は、春の運動会があり、
長~い夏休みをあっと言うまに終えて、
秋。遠足などやたら多いイベント
……そんな行事ごとに季節を感じ、
また「あれからもぅ一年」と思った。

色白で長い髪の優しい給食のお姉さん
(ゆーても小学校六年生なんやけど)
に淡い恋心を抱いていたのも束の間、
おかずを皿に盛る側に回っている
……そんな時間感覚だったわけだが。


最近はビッグシティ池袋の在なので、
やれ東京よさこいだ~、フラだ~、
と毎月のよーにお祭り騒ぎとなる。
先週末は街中がジャズに埋め尽くされた。


そんな5月17日、日曜日。
弦や鍵盤や管楽器の音を掻き分けて
両国に向かい、Wローズ+シアターΧの
月一ロングラン『ROSE』vol.20

ま、江戸の大川を渡ったら渡ったで、
大相撲の夏場所中だから豊島区の中心より
墨田の方が賑わいでたりするんだけど。


さて『ROSE』。
シアターΧでの上演も20回となった。
継続の力は大きく芝居はどんどん良くなる。
一方、苦心するのは集客である。

なんたって独り芝居。

ただ1000円という価格設定と
地道な広報活動が少しずつだが
実を結んでいるのか飛び込みが増加。
それで客席は格好がついた。
ほっ。

来月は6日土曜日、昼公演(14時開演)

『ROSE』は劇場との共同企画。
通常の演劇公演は、週の前半に準備して
日曜千秋楽という興業が多いので、
1davの本作は小屋が空いている
月曜火曜がこれまでは多かった。
が、今シーズン前半は先月は祝日、
今月は日曜で、来月は土曜と
ホリデー開催が続く
是非この機会をご活用くださいませ。

7月は主演の志賀澤子が海外のためお休み。

8月は金曜日、9~10月は月曜日と
平日夜7時開演が続きます。

終演後、観客の一人だった矢内文章と
明日が初顔合わせとなる
アトリエ・センターフォワード
『あられもない貴婦人』の打ち合わせを
簡単に、喫煙所にて。

高田馬場に移動して、J-Theater
『弱法師(よろぼし)』の初稽古。

前者は6月27日から7月5日。
目白のシアター風姿花伝にて。

後者は山中湖の中学校で7月17日。
その後、東京凱旋公演も模索中。
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未必の故意と脱サラ

2015年05月18日 | 鑑賞
きのう紹介した『未必の故意』は、
安部公房の書き下ろし戯曲で、
1971年9月10日、新潮社より刊行され、
同日、俳優座劇場で初演された。

演劇が今より「社会的」だった頃、
そーゆーことは多くあったそうだ。

演出を千田是也、主演井川比佐志で
第22回芸術選奨文部大臣賞を
受賞した舞台なのだが、その7年前
やはり安部のシナリオでテレビドラマ
『目撃者』として放映され、
芸術祭奨励賞を受賞している。

さらに遡った1962年に大分県の
国東半島沖にある実在の島姫島で
発生した殺人事件が題材である。

事件をテレビ映画にするために
監督以下スタッフが島民の協力で
撮影を行なっていく……という筋立。

『未必~』とは題名だけでなく
作りも大きく異なっている。
こちらは、島の消防団長が、
団員や島民たちと計画的に行なった
ヤクザ者の殺害を「未必の故意」に
見せかけようとする物語。
団長を中心に模擬裁判を行う過程で、
事件の状況や島の人間関係が
浮かび上がるのだ。

東京演劇アンサンブルの
スープ劇場Ⅷ『未必の故意』
(上演台本・演出/尾崎太郎)の
出来の良さは昨日書いた。

少しだけ補足すれば・・・
原作の三人の青年団員、
ちんばとめっかちとつんぼを、
尾崎は片足、片目、音無しとした。
これは一端で、彼らしいリリックが
良い意味で舞台の芯にあって好感

    

そーいえば、各駅しか停まらない
西武新宿線の武蔵関に
ちょいちょい出向いているな~。
アンサンブルの芝居を観る以外にも
ブレヒトの芝居小屋で公演を打つ
カンパニーの制作についたりして……。

脱サラした者がおまんまを食べて行く
その手段には、元居た会社から仕事を頂くか
同業他社との連係を深めるか……
あるいはまるで違う仕事に就くかだろう。

今の自分は二番目に近いようだ。
懐の深い「場所」で居心地がいい。
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未必の故意とROSE

2015年05月17日 | 鑑賞
本日は『ROSE』
シアターΧにて14時開演です。
日曜日の午後、予定のない方は是非。
観劇後は、両国から浅草あたりの
散策にも良いお天気です。



さて、東京の反対側、武蔵関の
ブレヒトの芝居小屋で同時刻に
幕をあけるのが《東京演劇アンサンブル
スープ劇場Ⅷ》『未決の故意』
作/安部公房
上演台本・演出/尾崎太郎
照明/真壁知恵子
美術/三木元太

体はひとつしかないので昨夜、
ゲネプロを覗きに行った。
……本番は完売だそうで、
いずれにしろ観るなら昨日だった。

中堅俳優の尾崎太郎が初演出に挑んだ。

濃い二枚目で、時代の流行からは
少しずれているけれども、
また人柄ものんびりしていて、
ついこないだまでは座内でも
大人しい存在に見えたのだが、
最近めっきり本気を出して(?)
眠れる獅子が目覚めたと専らの評判だ。

そして。
舞台は大胆な美術に、エレガントな照明、
音響は繊細で、それらをまとめあげた
演出ぢからは逞しく、いや驚いた。


処女作には総てが注ぎ込まれるから
作家はそれをなかなか越えられず
苦労する者が多いけれど、
早くもそんな心配をしてしまうほど
《感嘆の演劇》と呼べる成果でした。


たった一つ、苦言を呈すると……
余りに衝撃的で苦い作品なので、
観劇後に「スープを飲みながら~」
って気持ちにはならないのかも、と。

是非、本公演に取り上げて、
たった一日きりではなく、
もっと多くの人に見て欲しい舞台

ざっくりアウトライン。

閉鎖的なコミュニティー「菊の島」。
スナックやパチンコ屋、映画館など
手広くを経営していた江口が
集団で撲殺される。

江口は異邦人で気性が荒く、
島民達の脅威であった。
個別の事情を抱えながらも、
集団の論理に飲み込まれて行く島民達。

島に縛られている障害者の青年三人。
本土から来た教師。
江口と結ばれる事を夢想していた少女。

いったい何が起きたのか?
……夢と愛情への哀惜の物語。
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嵐が丘

2015年05月15日 | 鑑賞
激烈な愛、そして不滅の愛 ―
堀北真希主演で贈る永遠の名作
『嵐が丘』
・・・と宣伝されている舞台を
昨日、日生劇場で拝見しました。

僕にとっての本作は、何たって
ジュリエット・ビノシュの『嵐が丘』だ。

キャサリン・アーンショーと、
その娘キャサリン・リントンの二役を
ビノシュが演じた1992年製作の映画は
ヒースクリフをレイフ・ファインズ。
この二人、『イングリッシュ・ペイシェント』
のコンビでもあるが、それは別の話。

とにかく家政婦ネリー役の戸田恵子が
絶品であった
G大阪のヤットこと遠藤保仁のような
いい意味で肩の力が抜けた、
舞台全体を俯瞰して見ている演技。

カーテンコールの拍手が一際大きかったのは
決してテレビでの露出が多いから、
ではなかったと思う。

「激烈」「不滅」と冒頭書いたが、まぁ
「ひねくれた愛」って方が解り易い。
(それじゃ売り文句にならんが
で。
ぶっちゃけて言えば「昼メロ」感が
強かった・・・が、実は逆で、
渡辺裕之を一躍スターダムに押し上げた
東海テレビ系列の名作の一編『愛の嵐』
(1986年)の原作がエミリー・ブロンテの
『嵐が丘』だったりする。

ちなみに『愛の嵐』といえば谷本重美
(のちの小川範子)の出世作でもある。
閑話休題。

脚本・演出のG2がステージを
より立体的に仕掛けて(美術・伊藤雅子)
エンターテインメントに仕上げている。
またオーケストラではないが
小編成の生演奏がスケールを大きくみせ、
松竹創業120周年の一翼を飾った。

そう。
音楽は和田俊輔。元「劇団・デス電所」。
戸田同様、いい仕事をした一人。

復讐の愛に燃えるヒースクリフに
山本耕史、キャサリンの兄に高橋和也、
ヒースクリフに恋焦がれるイザベラに
ソニン……といった華やかな面々と
演出のG2(MOTHER)、
ケネス医師役の陰山泰
(元「遊◎機械/全自動シアター」)
といった小劇場演劇出身のキャストスタッフが
融合した作品でもあった。
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横光利一と櫂人

2015年05月14日 | 鑑賞
料理を提供する店において、
どんな材料を選ぶかは重要だ。

演劇における戯曲の選定は、
同義ではないが肝要という点で
大きな意味を持つ。


さて劇団櫂人は社会人劇団だ。
けれども。
レパートリーを選ぶ目は凄い
プロ顔負けである。

働きながら演劇を愉しむ集団の場合、
まず書店や図書館等で手に入る本や、
人気劇団のヒット作品、あるいは、
実際みて面白いと思った作品……
てなあたりを上演するのが普通だ。

ところが櫂人は・・・
ブレヒトの『例外と原則』、
三遊亭円朝の『怪談牡丹燈籠』
イヨネスコの『犀』という、
かなり渋い作品に挑戦してきた。

そして今回は横光利一だ。

横光は、志賀直哉とともに
「小説の神様」とまで称され、
川端康成らと「新感覚派」を牽引。
代表作『機械』はその頂点と評される。
のだが……志賀や川端に比して
わりと地味な作家ではないかしら。

「そんなことはないよ、
鉄人28号は傑作だよ!」と
憤る御仁もあるだろう……。
が、それは横山光輝。
まあ、似ていなくもないが

その横光に11編の戯曲があるという。
うち3編をアトリエで上演。
隔週月曜日という変則公演で
『閉まらぬカーテン』『男と女と男』の
同時上演と『日曜日』を単独で。
いやはや驚きである

例えるなら、スーパーに入ってすぐ
どどんと並べられた人気の果物を
籠にひょいと取るのではなく、
少生産量のため市場に出回らない
絶品素材を自分の足でみつける。
・・・そんな感じだろうか。

闇雲に日本各地を探した結果…
ではなく、演劇に長けた人物が
知恵袋として背後にいるという
手品のねたを握っている、
そんな利点があるにはあるのだが…。

旗揚げ以来指導にあたり、
この公演でも演出を務める篠本賢一。

過日『閉まらぬ~』『男と~』の
一班を拝見したが、今回も
役者の能力を最大限に引き出す
コンダクターぶりを示していた。

その熱血指導(?)に応える俳優陣が
また大したものなのだが・・・
まだ6人見ただけなので、
役者評は別の機会に譲ります。

ただ、ひとついえるのは・・・
1ドリンク付きで1800円は安すぎる。


詳細はこちらをどうぞ。
http://www.gekidankaito.com
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