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麒麟琳記〜敏腕Pの日々のつぶやき改題

還暦手前の身の回りのこまごま。
スポーツや映画演劇など。

PEACH TOM

2008年04月07日 | 鑑賞・まなび
 この集団の進化はどこまで続くのだろうか?

 ラヴィニア・ライブ『PEACH TOM』(作・演出/高円寺圭子、4/4~6、ザムザ阿佐ヶ谷)は、リーフレットによれば8回目を数えるらしい…。
 そのほとんどを観てきたが、今回の質の高さは圧倒的だった。

 コアメンバーの橋本千佳子、宮内彩地、辻奈緒子以外は、その都度のキャスティングで、今回は、そのゲストパフォーマーが最高の布陣となったことが、何より大きいのだが、その力を十二分に生かした構成力が、とにかく光った
               誰もが知る、おとぎ話の『桃太郎』をラヴィニアらしいアレンジで一気に魅せる1時間10分弱は、とても芳醇で贅沢な体感時間であった。

 拷問のように長く感じる2時間の舞台や「お願いだから、もうやめて」と祈りにも似た思いに駆られる3時間超の作品が少なくない中、まったく真逆のステージだった。
日テレ系のバラエティ番組「いつみても波瀾万丈」のテーマとともに浮かび上がる「実の親の顔を知らないんです」と語り出す、スーツの男が“桃太郎(大宜見輝彦)”という助走から、場面は一気にオーディション会場へと飛ぶ。
 黒いタイツに身を包んだ“桃太郎(長谷川敦央)”が、お供の動物を選ぶという趣向・・・サル(小川恵梨)、キジ(茜部真弓)、イヌ(小野文子)のほか、ウマ(岩下まき子)、イノシシ(須藤沙耶)、ヒツジ(柳下久美子)が現れ、ミュージカル『シカゴ』よろしく合格した者たち。。。もちろんサル、キジ、イヌ。。。が鬼退治に向かう!
 この4人の行く手には、アニー(宮内)や、ライオンキング(森岡正次郎)、はたまた《複雑な恋模様》という障害が立ちはだかり、お馴染みのミュージカル・ナンバーに乗せて、早くもクライマックスを迎える。
 ラインダンスから、最後は鮮やかなリフトが決まると、場内は満場の拍手に包まれた

この、早い時間にピークを持ってきたことが、作品全体のバランスを奇跡的に美しくした。
 
 さて。体感時間とともに、我々創り手が肝に銘じなければならないのはメッセージの発信である。
 お説教を大上段から振りかざす舞台を残念ながら多く見受けるが、『PEACH TOM』は、後半、いくつかのくすぐりを挟みながら、巧みに鬼サイドの目線をストーリー盛り込んで行く・・・ここで肝要なのは《巧み》という点で、やがて人=桃太郎と、鬼の、ふたつの物語は螺旋状に絡まりあって、静かで哀しいエンディグへと観客を誘ってくれるのダ。
 誰もが知る、やさしいおとぎ話の中に《平和とは何か?》を、大人にも子供にも伝わるメッセージとして・・・しかも大仰ではなく、ラストにステージに舞ったしゃぼん玉のようにふわりと、語りかけるのだ。

 ラヴィニアといえば、台詞のない、歌とダンスとマイムによる舞台が売りだが、今回は朗読を取り入れ、プラスの働きで楽しませてくれた。
 また、最大の武器である橋本-宮内-辻の美しいハーモニーは今回益々磨きがかかって、フィナーレを飾った『紅い花』は、今日も頭の中に流れ続けている。。。

※余りに素晴らしい作品だったので、
 明日も、もう少し突っ込んで書こうと思う。

【文中敬称略】
コメント
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