読書日記

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テレビ霊能者を斬る 

2008-03-09 23:41:13 | Weblog

テレビ霊能者を斬る  小池靖  ソフトバンク新書

 テレビ霊能者とは筆者によると、日本のテレビ番組で、霊視、霊能や死者からのメッセージを受け取る能力があることを主張し、かつ一定程度の人気を博している人物のことらしい。本書では江原啓之と細木数子を大きく取り上げている。江原の番組を仔細に見たわけではないが、霊能者という印象は希薄でどちらかというとカウンセラーという感じがする。宜保愛子の持っていたおどろおどろしさはない。細木の番組は以前からよく見ているがただの強欲なババアにしかみえない。やたら偉そうな物言いで、先祖供養の大切さを説いているのが印象的。出演者が先生先生とやたら持ち上げているのも前から気に入らなかった。一体何様だお前はと言いたくなる。実際本書の参考文献に挙げられている「細木数子 魔女の履歴書」(溝口 敦 講談社 2006)を読むと霊能者とは程遠い素顔が暴露されている。先祖供養を説いたのも墓石屋と組んで墓石を高値で売りつける魂胆だったことが書かれている。それ見たことか。テレビ局の責任者出て来いと言いたくなる。
 今「スピリチュアル」という言葉をよく耳にするが、これは共同体によらない個人の霊的探求のことだ。筆者は「高尚な議論の文脈ではあまり相手にされないようなテレビ霊能者の現象。それこそが私達の等身大のスピリチュアルであり、真偽性をめぐる批判が多いことも含めて間違いなく現代的な宗教現象の一端なのである」と述べている。宗教なき時代の宗教ということか。以前取り上げた「国家・個人・宗教 近現代日本の精神」では精神的バックボーンとして「公民宗教」の必要性が説かれていたが、非正統的なサブカルチャーの位置にあったスピリチュアルがその位置を占めるようになった。テレビ霊能者はそれに一役買ったといえる。
 鎌倉時代に新仏教がたくさん生まれ、天台・真言など既存の宗派の存在を脅かしたが、これからはマスメディアに乗ってスピリチュアルが宗教現象となっていくのだろうか。その時にはまた新しい霊能者が出現するのだろう。まあとにかく、細木数子がテレビから消えるのは間違いない。




 


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