東京・台東借地借家人組合1

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【判例紹介】 相続による所有権取得登記前の賃貸人の地位の継承は賃借人に対抗できない

2007年12月06日 | 登記

 判例紹介

 

 相続による所有権取得登記前においては賃貸人の地位の継承を賃借人に対抗できず、賃料の不払を理由とする契約解除は効力が生じないとした事例 東京地裁昭和63年10月3日民事第40部判決、未掲載)

 (事案)
 AはYに建物を賃貸していたが、この契約では、賃料の支払を2ヶ月でも怠った場合には何等のの催告を要せず契約を解除しうる約定が存していた。

 Yは昭和57年8月以降の賃料を支払わずにいたところ、Aは建物をXに譲渡し、Xは昭和61年10月2日に賃貸人の地位の継承により前記賃料不払を理由にYに対し契約解除の通知をなし建物の明渡しを求めて本訴に及んだ。

 YはAの所有権取得につき相続登記を経由していないから、家賃の支払を留保していたのであって、Aの賃料支払の催告は、右登記を経由していない間のものであるからYに対抗しえず、効力がないと争った。

 Xは、Yは相続登記前からAに建物の修繕要求をし、Aがこれを拒絶したため賃料を支払わないのであり、YはAが本件建物を相続したことを知った上でAの被相続人死亡後も3年間にわたりAに賃料を支払ってきたのであり、登記のないことを争うYの主張は理由がないと争った。


 (判示)
 「不動産を相続又は売買により取得した者は、その所有権移転登記を経由しない間、及び右の登記を経由した後であってもこれを賃借人が知らない間は、同人に対し、その所有権を取得したことにより賃借人の地位を継承したことを対抗することができなところ・・・・・・

 Aは被相続人の共同相続人の1人にすぎなく、Aが本件建物の全部を相続したのは昭和60年以降に共同相続人で協議した結果であること、昭和57年7月頃AがYに賃料を請求したのに対し、Yの弁済しなかった理由の1つが、Aが相続登記を経ていなかったことであること、ならびにYが前示のAおよびXの各所有権移転登記のなされていることを知ったのは昭和62年1月頃であることがそれぞれ認められる。

 YがAの本件建物の相続による賃貸人の地位の継承を認めて昭和57年8月から昭和61年9月分までの賃料及び遅延損害金の合計として79万8256円を供託したのは、Xから契約解除の通知のあった昭和61年10月2日以降であることが認められる。

 また、Aの被相続人死亡後も、Yが昭和57年7月分までAに本件建物の賃料を支払っていた事実は・・・・・被相続人の生前、Aが被相続人の代理人として賃料を集金していたので、同人の死亡後も同様に集金に来たAを共同相続人の代理者として同人に賃料を支払っていたにすぎず、Yが相続によるAの本件建物の賃貸人の地位を承認したものではない」として、Xの請求を棄却。


 (寸評)
 判旨に異論のない原則問題そのものであるが、日常の運動の中で忘れてはならない法律上の原則問題を思い起こしてもらう意味であえて紹介した。同種の紛争は多いので念のため。

(1989.09.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より

 

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【判例紹介】 借家人の相続人と家主とが合意解除しても内縁の夫は住み続けることができる

2007年12月04日 | 契約・更新・特約

 判例紹介

 借家の相続人が家主との間で借家契約を合意で解除しても、原則として借家人の内縁の夫は依然住み続けることができる 東京地裁昭和63年4月25日判決、判例時報1327号)

 (事案)
 B子は子供3人と共に借家に居住。昭和23年C男と再婚。C男がB子の家族共同体の一員として借家に住むようになった。子供達は結婚するなどして家を出ていき、Bは53年に死亡した。BとCは世間一般の夫婦と何ら異ならなかったが、事情があって入籍しない、いわゆる内縁の夫婦であった。

 したがって、この夫CはBの相続人になれず(内縁を何10年続けても絶対に相続人になれない。内縁の配偶者に何か残したいと思えば遺言するしかない)Bと先夫との間に出来た子供達がBの相続人でありこの子供達がB名義の借家権を相続した(借家権も相続されることは周知のとおり)。

 しかし、子供達は家主Aとの間で、相続した借家権を合意で解除してしまった。そこでAは、Bが死亡したあとも1人で居住し続けているCに借家の明渡を求めた。Cは立退く必要があるのか

 (判決要旨)
 このような場合、Cは、Bの相続人(右の子供達)が相続した借家権を「援用」して建物に居住し続ける権利を家主Aに対抗することができる(ということは、Cは立退かなくてもよいということ)。では、相続人がこの借家権をAと合意で解除してしまった場合はどうか。Cは「援用」すべき対象を失い、結局立退かなければならないか。判決は、次のような理由でCを救った。

 「相続人と家主とが合意解除した以上、常にCは立退かなければならないとすると、借家権援用者Cの立場ははなはだ不安定なものになる。また合意解除の濫用を招いたりする。そうすると借家権の援用を認めた意味がなくなるおそれがある。したがって、合意解除があっても家主は、借家権の援用者Cに立退を求めることはできないというべきである。ただし、援用者Cに不信行為があるなど、相続人と家主とが合意解除することに特段の事情がある場合は、家主は合意解除を理由にCに立退を求めることができる。本件では右の特段の事情はないからAのCに対する立退請求は認められない」。

 (短評)
 結婚の届出をしないという形式的理由だけで内縁の配偶者に一切の権利を認めないというのはいかにも不合理である。本件でもCが立退かなければならなとすれば酷である。そこでCの権利を保護するためにいろいろな学説がとなえられてきた。

 この判決は「援用」の対象たる借家権そのものが合意解除されても原則としてCの立場には影響はないとしたものである。妥当な考え方である。一旦自分の上に合法的に他人の権利が直接又は間接にでも乗った以上、やたらその他人の権利を無視することはできないということである。

(1990.04.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より

 

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【Q&A】 連帯保証人は承諾していない更新契約後の借主債務の支払義務があるか

2007年12月03日 | 連帯保証人

(問) 友人の息子Aのマンション入居時に保証人を頼まれ、連帯保証人になった。ところがAの家主から突然、1年分の滞納家賃と共益費の支払を求められたが、請求に応じなければならないのか。


(答) 入居時の契約でAの保証をしたが、その後家主から保証人に関する連絡などは何もなく、契約の更新にはノータッチであったという。このように保証人の自覚もない人間に対し、家主からの保証債務の履行請求は寝耳に水の事であり、その請求に不満を持つのは当然の気持ちである。

 だが判例の傾向は保証人には厳しいものである。最高裁は原則として契約更新後についても保証人の責任を認めている。

 その理由として賃貸契約は正当事由がない限り、更新拒絶が出来ないなど本来相当長期間の存続が予定されている。従って保証人も更新を前提とした賃貸借契約の存続を当然予測できる筈である。

 また保証人の債務は賃料債務を中心とするので賃料額は特定されており、更新後といえども保証人の予期せぬ責任が一挙に発生することがない。

 以上の理由から「特段の事情のない限り、保証人が更新後の賃貸借から生ずる賃借人の債務についても保証の責を負う趣旨で合意されたものと解するのが相当であり、保証人は賃貸人において保証債務の履行を請求することが信義則に反すると認められる場合を除き、更新後の賃貸借から生ずる賃借人の債務についても保証の責めを免れない」(最高裁平成9年11月13日判決)と判示した。

 最高裁判決の原則から言えば、相談者は家主からの滞納家賃請求に応じなければならないことになる。

 しかし最高裁は同判決で例外として
①更新後の債務について保証しないなどの期間満了後の保証責任について格別の定めがある場合、
②格別の定めがなくても、反対の趣旨をうかがわせるような特段の事情がある場合、
③保証債務の履行を請求することが信義則に反する場合、
①~③に関しては責任義務がないとしている。

 特段の事情」がある場合は保証債務を免れることが出来るというが、どのような場合か。
 「賃貸契約に2ヶ月の賃料の支払を怠った場合に無催告解除が出来るという特約があって、更新までにそれを上回る高額の延滞賃料が発生したにも関わらず、漫然と契約を解除しないで法定更新をして、このことによって延滞額が更に高額になった場合について、このような場合についてまで連帯保証人に責任を負わせることはできない」(東京地裁平成10年12月28日判決)。このような場合、「特段の事情」があり、保証債務の履行を請求することが信義則に反する例として挙げられる。

 Aの家主は借主が家賃の滞納を繰り返し、延滞額が高額になっているにも拘らず、保証人に滞納の事実を連絡するなど、或は契約解除をするなどして保証人の損害を回避する努力をすべきであったが、徒に契約を更新していたため保証人の予想を超える高額家賃滞納になった「特段の事情」がある。

 家主には保証人の損害を回避すべき義務があり、それを怠って損害を拡大した責任は重い。相談者の場合は家主が保証債務の履行を請求することが信義則に反する前記「例外」の③に該当するので、保証人の保証債務責任は認められないと思われる。

 

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