東京・台東借地借家人組合1

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【Q&A】 更新料約定は消費者契約法10条に違反し既払更新料の返還請求が出来る

2009年10月06日 | 更新料(借家)

(問) 平成21年8月27日の借主勝訴の大阪高裁判決では、既に支払済みの更新料の返還請求が認められたというが、どのような内容の判決であったのか。

(答) 今回の大阪高裁の判決を前後して、更新料支払特約が消費者契約法10条に違反し無効という更新料を否定する判決が立て続けに出ている。

 例えば、平成21年7月23日の京都地裁判決では、支払い済みの1回分の更新料11万6000円が返還された。

 同年9月25日の同日3件の京都地裁判決では、既払更新料3回分(22万8000円)(判決文1)、もう一人は、1回分の更新料(11万6000円)(判決文2)の返還請求が認められた。このように、次々と過去に遡って支払った既払更新料の返還請求が実現している。

 もう1件は家主が未払い更新料(10万6000円)(判決文3)の支払いを求めた訴訟で、更新料支払特約は消費者契約法10条に違反し無効であるとして家主の請求を棄却した。

 これら消費者契約法10条を基にした更新料否定の判例の積重ねによって、<更新料根絶>の運動が更に加速されなければならない。そのためにも、これらの判例の検討は急務である。そこで、今回の逆転勝訴の大阪高裁の判例を中心に、借主が敗訴している1審の京都地裁(平成20年1月30日)判決も、検討する。

 <事案の概要> 平成12年8月に、以下のような内容で建物賃貸借契約を結んだ。契約期間1年(以後1年更新)、礼金6万円、家賃1か月4万5000円、敷金10万円、入居者相互会費1万500円、及び1年毎に更新料10万円を支払う約束(更新料約定)になっていた。

 契約書には、<更新料約定>が次のように記載されていた。
 第21条 (更新)
 契約書記載の賃貸借期間の満了時より,甲(貸主)にあっては6か月前,乙(借主)にあっては1か月前までに各相手方に対し更新拒絶の申出をしない限り,本契約は家賃・共益費等の金額に関する点を除き,更新継続されるものとする。但し契約書に別段の定めがある場合はそれに従う。尚この場合,乙(借主)は甲(貸主)に対し,契約書記載の更新料を支払わねばならない。

 更新料は平成13年~17年まで5回分50万円が支払われた。しかし、平成18年の更新の際、更新料の支払を拒否し、契約書に基づいて退去の1か月前に解約予告をし、11月分の家賃を未払いのまま、同年11月30日に退去した。

 借主は、退去後、既払更新料50万円と敷金10万円から未払い家賃(4万5000円)を差引いた敷金5万5000円の返還を求めて京都地裁へ提訴した。

 裁判は更新料の法的性質を中心に争われた。
 貸主側は、更新料は①更新拒絶権放棄の対価(紛争解決金)、②賃借権強化の対価、③賃料の補充(前払賃料)であると主張した。

 借主側は、①~③はいずれも更新料の法的性質を有していないし、何ら対価性を有しない不合理的なものである。更新料約定は消費者契約法又は民法90条により無効であると主張した。

 京都地裁(平成20年1月30日判決)は、更新料は①②は評価できるが、対価としての性質は希薄であり、主に③賃料補充(前払賃料)であると認定した。その上で、「本件更新料約定が無効であることを前提とする原告の不当利得返還請求には理由がない」として借主の更新料返還請求を棄却した。

 敷金に関しては、平成18年の更新料不払分(10万円)は敷金10万円によって充当され、「敷金返還を求める原告(借主)の請求には理由がない」として敷金返還請求が棄却された。

 借主はこの判決を不服として大阪高裁へ控訴した。

 大阪高裁は争点になっている更新料の法的性質①~③ を検討し、「契約において特にその性質も対価となるべきものも定められないままであって、法律的には容易に説明することが困難で、対価性の乏しい給付というほかはない」として貸主側の主張を採用できないと結論づけた。

 大阪高裁は特に1審で認められた更新料は「前払賃料」とみる見解(*)に対して、仮に更新料が前払い賃料であれば、借主が中途解約した場合、未経過期間分に相当する額の精算するのが当然である。だが、本件更新料については、そのような規定は定められていない。従って、「法律的に、これを賃料として説明することは困難であり、本件更新料が賃料の補充としての性質をもっているということもできない」 として貸主側の主張を斥けている。

 (*)過去の判例の検討をすると、更新料を「前払賃料」(賃料の補充)と見る見解は、合意更新と法定更新とに拘らず更新料支払特約があれば更新料支払義務を認めるという結論に馴染み易い傾向がある。

 その上で、大阪高裁は「更新料約定は、消費者契約法10条に違反し、無効であるというべきである」として更新料特約を否定した。従って、「更新料は法律上の原因なくして支払われた」ものであるから、既払更新料は返還すべきであるとした。

 但し、消費者契約法施行(平成13年4月1日)前の初回の契約分(平成12年8月15日締結)の更新料約定による平成13年8月支払の更新料(10万円)は有効とした。既払更新料(10万×5回)の内から10万円を除いた40万円が更新料返還請求として認められた。

 敷金に関して、大阪高裁は「本件更新料約定は無効であるから、被控訴人(賃貸人)がそれに基づいて更新料を敷金から控除することができない」と理由を述べた。貸主が敷金(10万円)から未払更新料(10万円)勝手に差引くことは許されないから、貸主に対して、敷金10万円から11月分の未払家賃(4万5000円)を差引いた5万5000円を返還するよう命じた。

 大阪高裁は、更新料約定に関して次のように述べている。
 「賃料を意味しない更新料という用語を用いることにより、賃借人の経済的な出損が少ないかのような印象を与えて契約締結を誘因する役割を果たすものでしかないと言われてもやむを得ないと思われる。すなわち、一般的に、全体的の負担額が同じであっても、当初の負担額が少ないを好む」人に対し、「賃貸物件の経済的対価として更新時にしか授受されない更新料を併用することにより、法律上の対価である家賃額を一見少なく見せることは、消費者契約法の精神に照らすと許容されることではない。・・・・被控訴人(賃貸人)が本件物件の賃貸により本件更新料に相当する金額をも含めた経済的利益を取得しようとするならば、更新料としてではなく、端的に、その分を上乗せした賃料の設定をして、賃借人になろうとする消費者に明確、透明に示すことが要請されるというべきである。」

 大阪高裁の見解は借主側の更新料の主張と同じである。次の通りである。「現在の更新料は、賃借人が物件を選定する際に主に賃料の額に着目する点を利用して、賃料については割安な印象を与えて契約を誘因し、結局は割高な賃料を取るのと同じ結果を得ようとする欺瞞的な目的で利用されているものである」。

 問題になっている京都の更新料は1年契約で更新料は家賃の2か月分以上というものである。東京の更新料は2年契約で家賃の1か月分というのが多い。例えば、東京式で言えば、家賃4万5000円、2年契約で更新料20万円は、家賃の4.4か月分の更新料となる。単純な比較で言えば京都の更新料は、東京の4.4倍ということである。今回の大阪高裁の判例が東京の更新料の場合に、そのまま適用されるかというと少々問題がある。

 取敢えずは、最高裁(1982年4月15日判決、昭和56年(オ)第1118号)の契約書に更新料支払約定があっても、法定更新された場合には更新料の支払義務がないという判例がある。これに基づいて更新料の不払を実行した方が賢明である。

 更新料を正当化するために後から珍奇な理屈を捏ね繰り回した結果が「前払賃料」説である。更新料と同じように不動産賃貸借契約では、意味不明な・曖昧な用語で徴収されているものに礼金、保証金、権利金、管理費等である。営業用店舗の保証金の「償却特約」もぼったくりの典型である。

 判決文でも述べられているように、曖昧なものは排除し、支払は家賃だけにすれば判り易い。それ以外の請求は認めない。シンプルにすれば、物件選びの比較も簡単になる。透明性を高めればトラブルも無くなる。 

 

     賃貸住宅の更新料の地域差(国土交通省2007年調査PDF)

 

  徴収率 平均額       徴収率 平均額
北海道  28.5  0.1   愛知県  40.6  0.5
宮城県   0.2  0.5   京都府  55.1  1.4
埼玉県  61.6  0.5   大阪府    0   0 
千葉県  82.9  1.0   兵庫県    0   0
東京都  65.0  1.0   広島県  19.1  0.2
神奈川県  90.1  0.8   愛媛県  13.2  0.5
富山県  17.8  0.5   福岡県  23.3  0.5
長野県  34.3  0.5   沖縄県  40.4  0.5

 

 

 

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