サンバカンソン~ボサノバの歌姫シルビア・テレスの愛娘にして、現在でも現役として活動している女性シンガー、クラウディアによる1979年作。ジャケットの写真はなんだか少し怖い気がするものの、実際にはなかなかの美人さんです。広い意味ではMPBと言うべき作品なのでしょうが、この時期らしく全体的にシンセが多用されていることもあり、ブラジル版シティポップスの一枚として捉えるのが今の気分。カナディアン・フレンチAORで一世を風靡したダイアン・テルの80年代作品あたりに近い雰囲気を持つ名盤と言えるでしょう。どこか切なくも優しいメロウバラードなA-2のUm Amor Tão LindoやA-5のTristezas De Ontemを中心に柔らかい音作りのナンバーが並びます。特に素晴らしいのはA-6のTão SoとB-2のFoi Como Um Sonho。どちらもアメリカナイズされたフロア向けのミディアム・ナンバーで、その高揚感と綺麗なメロディラインからブラジル版フリーソウルと言い切ってしまって遜色ない名曲です。30代以上のサバービアOBならノスタルジックな気分に浸れること請け合い。シンセの音を中心にしながら要所で控えめなホーンが入る、この年代ならではの柔らかくアナログな音作りが好きな人には堪らないナンバーかと思います。主役を務めるクラウディア自身の声質もフリーソウル向きの可愛らしいものなので、その点でも個人的には高得点。この手の声の女性シンガーは探すとなかなかいないものです。あいにく残念ながらCD化はされていないようですが、アナログではそこまでレアと言うこともないと思いますので、気になる人は是非チェックしてみてください。テルサの青盤コンピを聴いてピンと来た方なら、まず間違いなくツボにハマるであろう一枚。いわゆる定番曲を聴き尽くした上で、非英語圏のフリーソウルが聴きたいという方にもぴったりだと思います。
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