(前回からの続き)
こうして、真性インフレ(実質金利[≒[長期]金利-インフレ率]<ゼロ)がもはや二度と収束(同金利がゼロ以上に浮上)することのない?アメリカでは、同じインフレならば現状スタイルのインフレ―――ジワジワと着実にヒドくなっていくインフレ―――のほうが、デフレ・スパイラルの後にすさまじいインフレになるよりはずっと望ましい、ということになりそうです。これであれば全米人口比で1%もの多数の?人々すなわち富裕層が、治安悪化等のリスクが比較的小さい状況下で、インフレでしっかり儲ける(投資元本の借金の支払金利よりも投資資産の価額上昇率の方が大きくなって差し引きプラスのリターンを得る)ことができますからね・・・
反面、大半のアメリカ人はインフレの上記メリットを享受できません。そのためには投資元本となる超低金利マネーを借りられないとなりませんが、富豪層やヘッジファンドではない彼ら彼女らにはそれができない、ということ。まあ中には評価額が高騰している自宅不動産等を担保とした借金で株や商品等の売買をしたりしている人もいるでしょうが、かりにそれで利益を得ても、その多くは当該住宅等のローン返済に充てられるでしょうから?、ガソリン代等の生活費インフレがヒドくなる一方の現状では、差し引きの収支は厳しくならざるを得ないでしょう。実際、先日ブルームバーグが報じたCBSニュースの世論調査によれば、米国民の2/3がバイデン大統領についてインフレ高進がもたらす負担の対応に十分に重点を置いていないと考えているとのこと。やはり多くのアメリカ人にとってはインフレが自分自身の経済生活にマイナスととらえているようです・・・って当たり前ですが。
さて、ご存じのように、26日のFOMC(金融政策決定会合)後の会見で、FRBは3月に利上げを開始する意向を表明しました。が・・・本稿そして本ブログで何度も綴ってきたとおりで、その引き締め路線はしょせんはポーズに過ぎず、ほどなく頓挫し、FRBとアメリカはインフレ路線に(何度でも)回帰するものと楽観?しています。消費者物価指数の直近上昇率(年7%!?)等の現状を踏まえると、政策金利は同5%程度は必要と思われるところ、それほどの高金利(資産デフレ&金融恐慌必至?)にアメリカが「我慢強く」(patient)いられるはずがありません(?)。であれば、FRBの利上げはこのインフレ率にまったく届かない低いレベルで断念される―――実質マイナス金利の状態が結局は永続される―――のではないでしょうか・・・
で、ここでの最大の脅威は・・・やはり石油をはじめとするエネルギー価格の上昇です。上記のように、ちょっとやそっとの利上げでは実質金利のマイナスが解消されない以上、借金をしてでも原油先物等に投資した方がトク(差し引きでプラスリターンが見込める)、ということで、上記の富裕層由来のマネーが引き続き原油や天然ガスのマーケットに大量に流入してこれらの価格を押し上げていくと予想されるわけです。かくして、アメリカではこの先、FRBのせいで?住宅・学資・自動車等ローンの支払金利がじりじりと上がる・・・にもかかわらず、肝心のガソリン代やらのインフレはおさまらない、というじつに過酷な経済環境が現出しそうです・・・(?)