(前回からの続き)
前述のように、アメリカでは、物価(消費者物価指数ベース)がこの1年で5%近く上昇しているのに、勤労者の賃金(中央値)は逆に2%近く減ってしまった・・・ということで、その実質は7%近くの減収という状況です。ここから、当然ながら、一般的な米国民の生活水準が急速に悪化している様子が窺えるわけです・・・
ちなみに、中央値(median)というのはトップからボトムまでを順に並べたときの真ん中の人の値で平均値とは違います。このあたり、人口のわずか1%(いや0.1%?)が超リッチ、残りの99%(99.9%?)は・・・みたいな中国・・・もそうだけれどアメリカのような国では、資産や所得の平均値をとると実態と乖離した数字になってしまうので、中央値をみるのがベターといわれます。で、そのフツーの人々の実感に近いところで、このように実質賃金が短期間に大幅に減少・・・って、これはヤバいでしょう。つまり、インフレが賃金上昇のペースを超えて加速、って非常事態です。であれば当然、FRBは、中央銀行(インフレファイター)として、この瞬間にでもインフレ鎮静化≒金融引き締めに動くべきだ、と一般の米市民(株などのリスク資産を(それほど)持っていない人々)は願うでしょう。そして、どこかの国の特権階級・・・みたいな?米資産家層(株などをしこたま抱えた人々)はFRBが上記の常識的な?見方を余儀なくされる形でひょっとして同引き締めに動くんじゃなかろうか、と願う・・・のではなく警戒するわけです。そんなことから、上述「ジャクソンホール会議」でジェローム・パウエルFRB議長がこのあたり何を語るのか、に注目が集まっていたわけですが・・・
結果はすでに述べたとおり、年内に量的緩和(QE)の縮小を開始できる、といった程度の、事実上の現行の超緩和的な金融政策の継続を宣言するもの。そのへんは、これまた書いたように、この発言が伝わった後の株価が上昇したことからも分かるというものです。もっとも、同開始可能と言ったのは、足元のインフレが顕著過ぎることは認識しているよ、との思いを形式的にでも株なし一般人に伝えておかないと、といったあたりで、これ「口先利上げ」すなわち実際にはできっこないことは前記のとおりですが・・・
ということで、ブレーキ、すなわちインフレ抑止が早急に必要との観点からは、FRB議長の上記発言は、超~のんき、そのものといえるでしょう。ですがそれは、のんき、とかではなく、実際にはFRBはブレーキを踏むことができず、アクセルを踏み込む(インフレを煽る)だけ、になっているわけです。こうしてインフレのスピードがいっそう増す中、FRBがハンドルを握る「アメ車」はどうなってしまうのか?そして、あまりのスピードに戦慄するばかりの「乗客」の運命は・・・
・・・って、どのみち大クラッシュは避けがたいでしょう、アクセル全開でも、やけっぱちのブレーキでも・・・(?)