しばらくぶりにチェックしましたが、やはりいまの為替レートは、わが国にとって「超」円安といえそうです。
先月下旬、日銀の黒田総裁が講演後の質疑応答の際、現行のドル円レートに関連して「過度な円高が修正されて2年ほど経って・・・」と語られたとのことです。このお言葉から推測すれば、2年前、つまりアベノミクスの実質的なスタート時点(2012/11)のレートである1ドル約80円が「過度」なレベルで、その後のレート、つまりご自身が率いる日銀の「異次元緩和」開始以降のレートが妥当な範囲、と思っていらっしゃるのでしょう。
そもそも、いまの日本にとって、ほどよい為替レートがどのくらいなのか、を確認するのは、なかなか難しいことだとは思います。個人や企業や用途等によって良し悪しとなるレートは異なるし、そのときどきの国際情勢や経済事情などによって、同じ1ドル100円でも円高に感じられたり円安に思えたりするからです。まあ間違いなくいえるのは、見た目のレートだけで円高とか円安と判断することはできないし、するべきではない、ということだと思います。
で、名目値とは異なる、このあたり(購買力平価説とか)の要素を勘案した為替レートについては本ブログで何度か書いていますが、ここではあらためてこの日銀が発表している「実質実効為替レート」を確認しておきたいと思います。
ちなみに「実効為替レートは、特定の2通貨間の為替レートをみているだけでは捉えられない、相対的な通貨の実力を測るための総合的な指標です。具体的には、対象となる全ての通貨と日本円との間の2通貨間為替レートを、貿易額等で計った相対的な重要度でウエイト付けして集計・算出します」(以上「 」内は日銀のHPから抜粋)。なお、実質実効為替レートはこれに物価調整を行ったもの。
―――ということなので、このレートを見れば、名目値よりはもう少しわたしたちの実感に近いレートが確認できそうです。まあ上にご紹介のとおり、日銀のトップがいまのレートは過度の円高が修正されたものと評しているわけだから、きっと実効値と名目値はかなり接近したものになっているのだろうな・・・。
・・・と予想していたのですが、直近の値はまったく違っていました。今年10月(現時点の月別最新値)の数字は、ドル円の名目レート(東京市場・月中平均)は1ドル108.03円。これに対して実効レート(実質実効為替レート指数)は同75.03円と、何と名目レートに対して約30%もの円安ドル高! つまり過度の「円安」とでもいうべき水準です。
・・・少なくともこのデータを公表している日銀の総裁が、行き過ぎた円高が是正、なんてことをいうレベルではないような気が・・・。