若い腎臓内科医から相談された。入院患者さんの肝機能障害の原因は何でしょうか、ということだった。
画像上、肝胆道系に異常はない。食欲不振があり、高カロリー輸液(フルカリック2号1003ml/日)が継続されているが、食事摂取できるようになっていた。薬剤性も否定できないが、栄養過多が疑われた。
ちょっと訊いてみたという感じで、むしろ治療の成果を話したかったようだ。入院からの経過を説明してくれた。
患者さんは、9月12日に市内の内科クリニックから腎不全・心不全で紹介された89歳男性だった。2019年に当院循環器科(当時はあった)に心房細動・心不全で入院した既往がある。
退院後はクリニックに通院していた。今回紹介の時点でBUN 99.0mg/dl・血清クレアチニン13.23mg/dlと著明な腎機能障害があった。(2019年はBUN17.1mg/dl・血清クレアチニン1.02mg/dl)
胸水貯留・心嚢液貯留・腹水貯留を認めていた。
心不全・腎不全の悪化としてできる範囲で治療するが、透析導入の適応はなく、病状悪化時はDNRの方針でいいでしょうかということで入院になった。
2019年に心房細動なので循環器科で甲状腺機能をみており、正常域だった。入院時にはみていなかったが、10月2日になって検査すると甲状腺機能低下があった。FT4<0.40(0.70~1.48・FT3<1.50(1.68~3.67)・TSH 108.57(0.35~4.94)。
チラーヂンSを12.5μg/日から慎重に漸増して、腎不全・心不全はしだいに改善していった。現在はチラーヂンS 75μg/日で甲状腺機能は正常域に近い。
腎機能がBUN 110.9mg/dl・血清クレアチニン2.84mg/dlと改善している。BUNが高いのは消化管出血が疑われるのか、栄養過多が影響している?。
甲状腺関連の抗体検査は提出していなかったが、こんな年齢の男性が、急に甲状腺機能低下になるのだろうか(なっているが)。ACTH・コルチゾールは正常域で副腎皮質機能低下はない。