なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

閉塞性腎盂腎炎

2020年05月21日 | Weblog

 昨日の午後5時半ごろに発熱外来を診ていた外科医から、38℃の発熱で救急搬入された90歳女性を診てほしいと言われた。尿路感染症ではないかという。

 呼吸器症状はなく(症状は発熱と倦怠感)、CT検査で明らかな肺炎はないという。末梢血検査だけが出ていて、生化学検査はまだ結果が出ていなかった。尿検査はまだ実施していなかった。(時間外に入ったので、内科に預けたいということ)

 外来に行って、尿検査・尿培養・血液培養2セットを追加した。尿は確かに混濁していた。画像を確認すると、明らかな肺炎はないい。両側腎臓に嚢胞が多発して、腎盂腎杯内に石灰化(結石)がある。腎盂の出口を塞いでいるようにも見える。尿管結石はなさそうだ。

 血液検査では中等度以上の肝機能障害(画像的には異常なし)・腎機能障害・凝固異常があった。搬入時、血圧90mmHg・酸素飽和度90%(室内気)だった。セフトリアキソンで治療を開始して、持続点滴にした。

 その後血圧が70mmHg台となり、急速点滴で90mmHg台までいったん上がったが、また下がった。90歳なので急速輸液で大量に入れるのもはばかられ、それでも80ml/時で継続とした。(酸素飽和度も80%台になって酸素吸入をしていた)ノルアドレナリンの持続注入も併用して、夜間まで一気に病状が悪化することはなかったが、朝まで血圧80mmHg台で推移していた。

 尿管結石ではないので、閉塞性腎盂腎炎といえるのかわからないが、病態は尿路閉塞が疑われる尿路感染症による敗血症・敗血症性ショックだった。この患者さんは高齢だが、認知症もないので、できるだけの治療を受けさせたい。

 地域の基幹病院救急科にお願いしたいと思い、連絡した。地域医療連憩室を通すことになっているので、そちらに回された。救急科ではなく、専門科になりますと言われて、泌尿器科の先生につないでもらった。

 病状と事情をお話しすると受けてくれたので、ありがたく救急搬送させてもらった。

 

 昨日は内科当番だったので、当直の外科医から連絡がきた。87歳女性が40℃の高熱で救急搬入された。肺炎・呼吸器症状はなく、尿混濁と炎症反応上昇があり、急性腎盂腎炎だろうという。CTで左尿管結石があるという。

 搬入時に血圧90mmHgだったが、普通に点滴して(急速輸液ではない)血圧130になっていた。夜間に救急搬送も難しいので、まず一晩当院入院で経過をみることにした。尿培養・血液培養2セットは提出してくれていた。セフトリアキソンを開始して、点滴キープにしてもらった。

 夜間は血圧130台で推移して、ショックには陥らなかった。発熱は38℃になっていた。CTを確認すると左腎盂から4cm下の尿管に12×7cmの結石があり、左腎臓は水腎症を呈している。白血球2万でCRPは8だった。肝機能障害・凝固異常が目立ち、やはり敗血症に移行していく可能性がある(すでになっているか)。

 やはり尿道ドレナージを要すると思われて、地域の基幹病院泌尿器科にたびたびで申し訳ありませんがとまた連絡した。閉塞性腎盂腎炎ですね、と言われてそうですと返答した。こちらも診てもらえることになり、救急搬送した。

 先に搬送した患者さんの病状が落ち着いたら戻してもいいかと言われたので、引き取りますと伝えた。

 

 細菌検査室から連絡がきて、どちらの患者さんも血液培養でグラム陰性桿菌が検出されたという。半日で菌が出ているので、血中の菌量が多いのだろう。

 今日はそちらの病院の腫瘍内科からS状結腸癌の71歳女性がリハビリ目的で転院してきた。さらに循環器科からもリハビリ転院の依頼が来ていた。今日は病病連携がうまくいっている形になっている。

 

 

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多系統萎縮症(MSA-C)

2020年05月20日 | Weblog

 昨日地域の基幹病院脳神経内科から、60歳代後半の女性が転院してきた。多系統萎縮症(MSA-C)の患者さんだった。

 8年前にREM睡眠行動異常(REM sleep behavior disorder)で発症して、6年前から外来通院していた。すでに寝たきり状態でADLは全介助になっている。5月初めに老人保健施設に入所が決まっていた。

 4月末に急性胆嚢炎で同院外科に入院して、保存的に(抗菌薬投与)軽快した。経口摂取困難で、脳神経内科に転科している。

 転院の依頼が来た時には、経鼻胃管で経管栄養を行っていて、ゼリーで嚥下訓練をしていると言っていた。胃瘻造設になりますかと訊くと、経口摂取できなければ検討して下さい、ということだった。

 他の転院依頼もあったので、1週間後に転院となったが、来てみると嚥下調整食3を摂食できていた。ただ、振戦が目立ち、上下肢と同様に顔も震えていた。これで食べられるかと思ったが、何とか食べていた。

 仙骨部に10㎝以上の褥瘡がある。このまま経口摂取できれば、褥瘡の軽快を待って施設入所になる。当院の脳神経内科医に相談すると、胃瘻造設をして経口摂取と併用で行った方が後々のためかもしれないという。

 入所予定の施設の隣に病院があり、誤嚥性肺炎と胃瘻造設の得意な先生方がいるので、入所後に必要があれば対応できる。当院で施行するかどうかは食事摂取の状況をみて決めることにした。

 送られてきたMRI画像をみると、確かに小脳脳幹部の萎縮が目立つ。多系統萎縮症(MSA-C:multiple system atrophy with predominant cerebellar ataxia)だから、小脳性運動失調で発症しているはずだが、今はパーキンソニズムの方が目立つ。進行すると3病型(MSA-C、MSA-P、Shy-Drager syndrome)は同じ病像になるので、こういうものなのだろう。

 60歳代前半からの発症で、10年未満で寝たきり状態(いずれは経管栄養継続)になっているのは気の毒だ。

  

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肝障害、腹水

2020年05月19日 | Weblog

 隣町の診療所から60歳代半ばの女性が腹水貯留で紹介されてきた。腹部膨満(お腹が張っている)で先週末に診療所を紹介している。

 内科新患担当は内科の若い先生(地域医療研修の内科専攻医)だった。消化器癌による癌性腹膜炎を想定して検査をしてもらった。CEAが6と軽度上昇、CA125が1900と著明に上昇、AFPとCA19-9は正常域だった。腹部エコーで腹水貯留を確認しただけで、肝臓内エコーが粗になっているが、腫瘍は指摘できなかった。

 腹部造影CTを行うと、肝臓全体に低濃度域がびまん性に広がっていたが、腫瘍とは言い難い。肝内胆管・総胆管の拡張はなかった。著明な脾腫と門脈圧系の側副血行路の拡張があり、門脈圧亢進状態だった。CTでは肝表面の凹凸があるとは言えないが、肝硬変に近い、あるいは組織学的には肝硬変があるのか。

 胆嚢癌・膵癌はなく、卵巣癌らしい腫瘤もない。消化管は内視鏡検査をしないとわからないが明らかな腫瘍はない。

 放射線科医(がんセンターから出張)に診てもらうと、腫瘍ではないなあ、と言われた。何らかのびまん性肝疾患だが、アルコール性?とも言われた。飲酒歴はビール2缶を毎日だった(自称)。

 肝機能は、AST 92・ALT 33・LDH 331・ALP 753・γ-GTP 332・直接ビリルビン7.2。 末梢血は、白血球13700・Hb13.4・血小板11.0万・MCV110。Hbs抗原・HCV抗体は陰性。

 AST/ALT>3、γ-GTP上昇、MCVで大球性はアルコール性らしい気もする。アルコール摂取をもっと詳しく訊いてもらうことにした。

 消化器科医はリンパ腫も考えられるという。抗核抗体・抗ミトコンドリア抗体・IgG4などの外注検査も追加していた(念のためだろう)。

 付き添って来ていた家族(娘さん)の希望もあり、医療センター消化器内科に紹介としていた。確か肝臓専門医が3名はいたはずで、ここは専門医に診て(悩んで)もらおう。

 

 

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心不全の増悪

2020年05月18日 | Weblog

 内科外来(再来)を開始しようとすると、外来看護師さんが89歳男性が予約外で来ているという。数日前に転倒して、近医(整形外科)を受診して、腰椎圧迫骨折と診断された。その後から食事摂取ができなくなっているそうだ。

 施設から家族に病院を受診させるよう連絡が行って、家族が連れてきたのだった。外来に処置室に横臥していて、手足の冷感がある。血圧が80mmHg台と低下していたが、酸素飽和度は94~97%とれていた。胸部にcoarse cracklesが聴取される。両下肢の浮腫はなかった。

 

 前回は入所している施設から、尿路感染症疑いで当院泌尿器科に紹介された。尿路感染はあるが(無症候性細菌尿かもしれない)誤嚥性肺炎もあり、内科に紹介となって入院した。何とか治って3月下旬に施設に戻っていた。

 一昨年は心房細動・心不全で循環器科に入院した既往があった。肺炎で入院した時には洞調律になっていたが、循環器科の処方を継続していた(エリキュース、ダイアート、ビソプロロール少量)。心不全の悪化はなかった。

 

 尿閉で尿カテーテルが留置されていて、尿は混濁していた。細菌尿は無症候性か尿路感染ととるか、むずかしい。また誤嚥性肺炎だろうか。

 救急室に移動して、点滴を開始して血液ガスを含めて採血した。酸素分圧65.6mmHg(室内気)と案外保っている。胸部X線・CTでは両側胸水貯留が目立つ。肺炎もあるかもしれないが、心不全の増悪がメインだった。

 検査室からBNP1371と連絡がきた。心筋原性酵素の上昇があるが、心電図では洞調律(60台/分)で、以前と比較して明らかなST-T変化はなかった。うっ血肝と思われる肝障害が目立つ。

 心エコーを検査室に依頼して、循環器科医に相談に行った。心不全増悪として循環器科入院にしてもらった。心エコーの結果をみると、EF25~30%(一昨年も同程度)で、左室の収縮は全体的にhypokinesiaだった(本当に心もとない収縮)。

 前回の心不全の増悪も、腰椎圧迫骨折で整形外科に短期間入院した後に起きていて、何故か同じ経過だった。

 

 土曜日に日直で出て、そのまま泊まっていたので、1週間ずっと病院にいたことになる。ひどく忙しくはなかったが、気分的に疲れている。今週は地域の基幹病院の各科から、火曜日に3名、木曜日に2名転院してくる。4月末から転院依頼が短期間途絶えていたが、また増えてきた。

 中外医学社の「ここが知りたい!」シリーズに「腎臓病診療ハンドブック」が新たに加わった。このシリーズは項目ごとに症例が入っているのでわかりやすい。定番の糖尿病診療ハンドブックを読み返しているので、終わったらそちらに進みたい。

ここが知りたい!腎臓病診療ハンドブック

 

 

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大腸癌再発

2020年05月17日 | Weblog

 昨日の日直の時に、嘔吐・腹痛の90歳女性が受診した。昨年11月に当院の外科で回盲部癌の手術を受けていた。遠隔転移はなかったが、リンパ節転移が著明で、再発する可能性が大きいとされていた。

 腹部はやせた背中の曲がった高齢女性でみられる、下腹部の膨満がある。臍部から下腹部全体にかけて圧痛があるが、程度は軽度だった。腹膜刺激症状はない。

 術後の腸閉塞を疑って、腹部立位単純X線を確認した。ニボーがあり、腸閉塞になっているようだ。胸部X線には肺炎像もあり、午前6時に家族が嘔吐に気づいたというが、夜間に嘔吐してから時間が経過して誤嚥性肺炎の像が出現してきたのだろう。

 血液検査の結果をみて、腹部造影CTを行った。右下腹部に造影される(中心部は壊死だろう)腫瘤を認めた。局所再発(リンパ節か)だった。腫瘍が腸管を巻き込んでの腸閉塞だった。腸管壁は造影されていて血流は保たれているようだ。腹水も少量あった。

 外科外来のフォローには入っていなかった。何か症状があった時の対応にしていたのだろう。外科の当番の先生に連絡して、外科で入院にしてもらった。経鼻胃管が挿入された。もう手術はできないので、そのまま緩和ケアになるのだろう。

 

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冠攣縮性狭心症

2020年05月16日 | Weblog

 今日は日直で病院に出ている。昨夜は、当直医(外部の病院の先生)から肺炎の79歳男性を入院させたいと連絡が入っていた。

 午前7時半ごろに心肺停止の40歳代前半の患者さんが救急搬入されて、当直医が心肺蘇生を継続していた。すでに1時間以上継続しているが、反応はないという。家族(母親)が来るまではという家族の希望があったそうだ。

 当直医から引き継いだ。姉妹の方には心肺蘇生に反応がなく、見込みはないことを伝えた。その後、母親が到着したところで、少し心肺蘇生の様子をみてもらってから、反応しないことを告げて心肺蘇生を中止した(救急隊は1時間半行ったことになる)。

 

 この患者さんは、5年前から内科クリニックに高血圧症・糖尿病・高コレステロール血症で通院していた。喫煙もしていた(20年間)。3月に朝方胸痛が頻発するようになって、狭心症疑いで当院の循環器科に紹介されていた。

 初診時の心電図では異常がないが、その後の心電図にはV3-6とⅠ・aVLにST低下を認めた。ホルター心電図でも胸痛時に前胸部誘導にST低下があった。

 入院して心臓カテーテル検査を受けた。左前下行枝は25%、右冠動脈は50%狭窄で、PCIの対象ではなかった。冠動脈硬化+冠攣縮と診断された(造影でLMT入口部がspastic、硝酸イソソルビド投与で軽快とある)。ベニジピンとニコランジル内服で胸痛が軽快して退院している。

 外来受診時には、1日1回は胸痛でミオコールスプレーを使用するとある。禁煙してリスクとなる疾患のコントロールは改善していたが。

 昨夜は胸痛でミオコールスプレーを頻回に使用した。症状が続くので、お付き合いのある男性が自分の家に連れて行っていたそうだが、病院を受診して、専門病院に搬送すれば治療できたかもしれない。

 

  

 

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「事例でわかる 死亡診断書・死体検案書記載の手引き」

2020年05月15日 | Weblog

 昨夜、自宅で首を吊った40歳前半の女性が救急搬入された。心肺停止・瞳孔散大で、すでに体温も下がっていた。救急隊が心肺蘇生をして搬入して、当直の外科医が心肺蘇生を継続したが、残念ながら反応はなく死亡確認に至っている。

 夫は仕事で出かけていて、家にいた子供さんが首を吊っているのを発見した。すぐに父親(患者さんの夫)に電話すると、ロープを切って心臓マッサージをすることを伝えて、自分は救急要請をして自宅に向かったという。適切な指示だった。

 

 今年の年始の休日中に救急外来を受診して、その時に当方が一度だけ診察していた。精神科医院にうつ病で通院していて、抗うつ薬・抗不安薬・睡眠薬が処方されていた。自分で多めに内服してしまうため、抗不安薬と睡眠薬が休み明けまで足りないので、その分を処方してほしいという。

 また椅子に座った状態でけいれんが起きたとも言っていた。患者さんを連れてきた夫に、その時の状況を訊いた。時々なるらしいが、椅子から落ちたりはしないという。てんかん発作も否定できないが、心因性非てんかん性発作のように思われた。

 数日分の薬を追加して、休み明けに通院している精神科医院を受診するように患者さんと夫に伝えた。うつ病という話だが、雰囲気からは境界性パーソナリティ障害の印象をもった。

 

 「事例でわかる 死亡診断書・死体検案書記載の手引き」岩瀬博太郎編(医歯薬出版)が出た。1997年に出版された前著の改訂版に当たる。病院の救急室においてあるが、自分でも購入していた。20年以上経過しているので、買い替えた。

 死亡診断書・死体検案書記載の具体例と注意が書かれている。前の本では、死因が「縊死(短時間)」と記載されている。その原因についての記載はなく、手段及び状況の欄に「ビニール紐をタンス扉にかけて首吊り」、付言すべきことに「遺書らしいものがあった」と例が書かれている。

 今回の本では、死因が「縊頚(短時間)」になっていて、付言すべきことに「警察と情報を共有した旨」を記載している。溺れた場合は「溺死」になるので、「縊死」の方がいいような気はする。(ちなみに、この本を開くのは「縊死」の縊の字を確認する必要があるため)

事例でわかる死亡診断書・死体検案書記載の手引き

 

 

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透析+糖尿病+肝炎

2020年05月14日 | Weblog

 透析担当の腎臓内科医(大学病院から出向)から、内科の若い先生に血糖コントロールの入院依頼があった。60歳代後半の男性で、2月初めに緊急透析となり、その後維持透析になっていた。

 

 地域の基幹病院に高血圧症・糖尿病で通院していた。3年前に、健診で胸部異常影を指摘されて、それをきっかけに右腎癌と診断された。StageⅣで、下大静脈腫瘍塞栓・縦隔リンパ節転移・肺転移があった。手術(右腎摘出、下大静脈腫瘍塞栓摘出)が行われて、その後分子標的薬の治療が開始されたが、腎機能障害で中止になっている。

 血清クレアチニン2mg/dl台で慢性腎臓病(CKD)として外来で経過をみられていた。今年の2月に旅行先で腎機能が悪化して、緊急透析が行われた。その後、精査治療目的で大学病院に転院した。結局、腎機能の急性増悪の原因は不明だったそうだ。

 

 大学病院入院中の3月初めに肝機能障害が出現して、10日の経過で悪化した(最悪時はAST 350・ALT 529)。大学病院消化器内科に紹介されたが、原因を確定できなかった(ウイルス性肝炎は否定、抗核抗体は陰性で、肝生検はしていない。)

 薬剤性肝障害の可能性を考慮して被疑薬を中止したりしているうちに、肝機能障害は少し軽快していた(AST 104・ALT 240)。しかしすぐに肝機能は再上昇した(AST 205・ALT 409)。

 自己免疫性肝炎(AIH)疑いとして、プレドニン30mg/日(0.5mg/Kg/日)が開始されて(ウルソ600mg/日併用)、しだいに肝機能障害は改善してきた。

 

 4月初めに当院の腎臓内科外来(大学病院から)に紹介されて当院で維持透析を継続することになった(地域の基幹病院は維持透析はしていない)。肝機能はまだあって(AST 35・ALT 116)、プレドニンを5mg/日ずつ漸減の指示があった。(5mgずつ1週間おき漸減の指示は早すぎると思ったが、当院に来てからはもっとゆっくり漸減していた)

 ステロイド投与でもともとの糖尿病が悪化して、グリコアルブミンが47%になった。それで血糖コントロール目的に入院だが、すでに超速効型インスリン少量を毎食前皮下注をしていたので、まずは同量で開始して漸増していく。

 

 血液透析患者さんではHbA1cは「血糖状態を正しく反映しないために参考程度に用いる」とされていて、もっぱらグリコアルブミンが測定されている。HbA1cはグリコアルブミンの1/3ではあるが、1回おきにHbA1cとグリコアルブミンを測定してもいいのではないか。(血糖管理目標はグリコアルブミン20%未満、随時血糖180~200mg/dl。)

 プレドニン漸減中(現在は10mg/日)なので、減量からは血糖改善が期待されるが、投与期間としては長くなっていくのでその点では悪化する。AIHだとプレドニン5~10mg/日で維持だが、どこまで減量できるか。

 「ステロイド糖尿病」は「ステロイド投与によって発症する糖尿病」なので、もともと糖尿病があってステロイド投与によって血糖が悪化するのは「ステロイド投与による糖尿病の増悪」としかいえない。細かい話だが。

 

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低カリウム血症

2020年05月13日 | Weblog

 昨日の午前中に、60歳半ばの男性が脱力で救急搬入されていた。救急当番の外科医から内科の若い先生が呼ばれていた。著しい低カリウム血症(1.8mEq/L)で筋力低下があり、動けなかった。どうしましょうか、と言われたが、入院でカリウム補正をするしかない。

 この患者さんは、新型コロナウイルス感染症の影響で土建業の仕事がなくなり、1か月自宅にいたそうだ。アルコール多飲(自称日本酒3~4合/日)があったが、お金がなくなって(借金もある)飲めなくなっていた。食事もとれず、1か月水だけ飲んでいたそうだ。さらに下痢もしていた。

 土建業者の社長が解雇を告げに自宅に行って、動けなくなっているのを発見して救急要請したという皮肉な状況だった。

 離婚していて、親兄弟もほとんどいない。子供とも疎遠で、唯一叔母に連絡がとれるらしいが、高齢すぎて頼りにはならない。MSWを通して行政にかかわってもらうしかない。

 カリウム補充を点滴と内服で開始した。ビタミンB1の外注検査を提出して、ビタミンも補う。治療のし甲斐はあるし、教育的な病態ではある。

 

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びまん性細気管支炎

2020年05月12日 | Weblog

 昨日の当直帯(当直医は耳鼻咽喉科)で呼吸困難の91歳女性が救急搬入された。

 2年前には心不全として循環器科の入院していたが、肺性心もあるが、基本的には肺疾患だった。高二酸化炭素血症があり、2年前はNPPVで治療して軽快していた。

 ずっと以前に乳癌の治療をしていて、担当医が開業した後は、そちらの外来に通院していた。気管支喘息とされていたようだ。

 両側肺にびまん性に粒状影の散布があり、気管支拡張症も伴っていた。呼吸器外来(大学病院から出張=バイト)にコンサルトされて、びまん性汎細気管支炎(DPB)と診断された。退院後は、呼吸器科外来に通院していた。

 昨日の内科当番だった内科の若い先生に連絡が行って、内科入院になっていた。前回循環器科(時間外のオンコール体制なし)に心不全で入院したことから、循環器科に連絡して、心不全で循環器科の扱いに替えてもらっていた。早速NPPVが開始された。

 BNPは218で、ふだんは50程度なので上昇はしているが、基本的には慢性呼吸器疾患の肺炎発症による増悪だった(肺性心がなくはない)。まあ循環器科の方がNPPV管理は慣れている。

 呼吸器科外来で検査した感染症がない時の肺画像を確認した。両側肺野(特に中下肺野)にびまん性に粒状影の散布がある。気管支拡張症も伴っているが、両者とも慢性副鼻腔炎と関連しているので併存してもいいのだろうか。気管支拡張症からみると、非結核性抗酸菌症の有無が気になる。

 以前当院に呼吸器科常勤医がいたころにDPBの症例があった気がするが、最近は見たことがなかった。

 気管挿管・人工呼吸まではしない方針になっている。NPPVと抗菌薬で回復するだろうか。

 

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