なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

高カロリー輸液はいりません

2023年07月30日 | Weblog

 6月下旬に入院した誤嚥性肺炎の101歳男性は、いったん軽快して嚥下訓練を開始したが、2回誤嚥を繰り返した。

 ただ、その都度抗菌薬投与で軽快はしていた。同じことを繰り返すしかないが、食事摂取の意欲もなく、いらないと言ってしまう。

 病棟の看護師さんから、右大腿近位部の腫脹と疼痛があると報告がきた。同部位に内出血が見られた。大腿骨近位部骨折かと思われたが(ベットからの転倒・転落はない)、骨折はなかった。

 CTで確認すると、筋肉内の出血を来していた。施設での内服薬はなく、抗血小板薬も抗凝固薬も入っていない。外傷性とも考えにくく、原因不明だった。

 入院時に心房細動があり、施設では治療されていなかった。おそらく持続性できていたと思われる。肺炎の治療後に嚥下できるようになったら、DOACのOD錠少量(リクシアナ15mg)を投与するか、年齢的に投与しないのもあると思っていた。結果的には抗凝固薬を投与しないでよかったことになる。

 さすがに末梢点滴(パレプラス500ml・2本)だけでは栄養が足りない。胃瘻造設する気にはならないので、とりあえず高カロリー輸液にすることにした。

 この患者さんは息子さんたちが遠方(長男が千葉県、二男が北海道)なので、市内在住の甥が対応をまかされている。入院時に病状悪化時のDNARの書類もその方がしていた。

 その甥を呼んで治療が進まないと伝えて、経管栄養と高カロリー輸液の話をした。そこまでは(しなくていい)、ということだった。数日後に二男の嫁から電話が入り、病状を伝えた。

 すると、北海道から二男がやってきた。病状と見込みを説明すると、高カロリー輸液はしないでほしい、と言われた。妻の両親が同じような病状で高カロリー輸液を受けたが、いいことにはならなかったという。

 もう十分長生きしたので、とにかく自然でいい、苦しまなければいいですから、ということだった。「高カロリーは」といって、自分の首を指さしていたので、妻の両親は内頚静脈からCVカテーテルを挿入されていたのだろう。

 

 同じ時期に入院した誤嚥性肺炎の89歳女性も嚥下訓練を行っていたが、飲み込みが悪く、肺炎を繰り返した。経口摂取は断念するしかなかった。

 当地在住の弟さんと妹さんが病状説明にきていた。この患者さんは夫と子供がすでに死去していて、兄弟を頼って東京から当地に戻って来ていて、面倒をみてもらっていた。

 弟さんと妹さんは高カロリー輸液は希望せず、看取りでいいですという。十分面倒はみました、という。末梢輸液で経過をみることになった。

 

 こうなると最期まで入院となるので、入所していた施設は退所扱いになる。肺炎が起きれば治療するので、末梢静脈からの点滴でも1~2か月(場合によってはもっと)は持ちこたえる。

 

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