なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

酸化マグネシウムによる配合変化

2023年07月04日 | Weblog

 6月23日に施設に入所中の89歳女性が救急搬入された。昼食時にむせって嘔吐したそうだ。発熱と酸素飽和度の低下があり、施設としても誤嚥性肺炎と思っていた。

 認知症もあるが、ふだんは当院の脳神経内科外来にパーキンソン病で通院している。レボドパ含有製剤(ドパコール)が600mg分3で処方されている。施設ではさらに分けて分5で内服させていたらしい。

 パーキンソン薬としてモノアミン酸化酵素阻害薬(エフピー)も処方されていて、便秘症で酸化マグネシウム製剤も処方されていた。

 胸部X線ではわかりにくいが、胸部CTで右下葉背側に浸潤影があり、左下葉にも少しあった。誤嚥性肺炎として入院した。

 抗菌薬(ABPC/SBT)の点滴静注と補液(500mlを2本)を行って、誤嚥性肺炎は軽快してきた。嚥下訓練を行って、嚥下調整食3を出していたが、嚥下はあやしかった。

 日曜日に連絡が来て、酸素飽和度が低下して微熱があると報告された。誤嚥性肺炎再発として、入院時の治療を再開した。

 月曜日には酸素吸入2L/分で飽和度が97~100%だった。胸部X線ポータブルでは肺炎像がはっきり描出できないが、炎症反応が上昇していた。CTを撮影すれば下葉背側に浸潤影があるのだろう。また1週間治療継続として、嚥下障害の対応を決めることにした。

 

 病棟の看護師さんから口腔内に出血があると報告があった。嘔吐・吐血はないが、口腔内全体に黒褐色の吐物らしいものが付着していた。患者さん本人は腹痛・嘔気はないという。

 食道炎かびらん性胃炎・胃潰瘍からの出血があるのだろうと思われた。内視鏡はやりにくいので、PPI静注で経過をみることにした。

 

 報告してきた看護師さんが、入院時に薬局から配合変化の注意があったことを思い出した。レボドパ製剤と酸化マグネシウムの配合変化だった。

 確認すると、レボドパは酸化マグネシウムによって黒褐色に変色して、血中濃度が低下するのだった。レボドパ製剤の内服回数が多く、同時内服を避けようがないので、普段通りの内服にしていた。

 消化管内ではこれまでも配合変化が起こって変色していたのだろう。今回は口腔に両薬剤が残っていたので、口腔内で変化が起きたということだった。

 パーキンソン病では通常レボドパ製剤は必須なので、便秘の治療に酸化マグネシウムは使用せず、新規の便秘薬を用いる方がいいようだ。

 

コメント (1)
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