なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

低酸素脳症の画像

2020年08月04日 | Weblog

 ブログの記事で最近何人かの訪問者が見ていた、昨年11月末のるい痩・肝機能障害の50歳女性の経過(2019年11月29日記載)。

 

「 昨日内科医院から50歳女性がるい痩で紹介されてきた。5月ごろから体重が減少して診療情報提供書には25Kgの減少とある。先週の初めに医院を受診した時の検査結果があり、貧血はなく腎機能障害は軽度(体重からみれば中等度くらい?)だったが、肝機能障害が目立った(AST 619・ALT 164・LDH 442)。

 新患の先生から、入院が必要ですと連絡がきた。話を訊いてだけで、まだ特に検査はしていなかったので、外来で一般的な検査と画像検査を入れてもらうことにした。

 末梢静脈から点滴が困難になった患者さん(前立腺癌・多発性骨転移+誤嚥性肺炎の90歳男性)にCVカテーテルを緊急で入れるところだった。CV管理の高齢者のノルアドレナリンの調整もあり、内科の別の先生に検査結果をみてもらうよう依頼した。

 話を聞いた時は、膵癌・肝転移などを想定したが、肝機能障害が目立ちすぎか。るい痩そのものによる肝機能障害は経験がなく、わからない。

 午後になって検査結果を確認すると、AST 8610・ALT 5320・LDH 2062・ALP 1753・γ-GTP 97・総ビリルビン2.6と著しい肝機能障害を認めた。炎症反応は陰性で、他は脱水傾向の結果ではあるが、それほどのものはない。胸腹部CTはやせすぎていて(脂肪がないので)読影し難いが、閉塞性黄疸ではないようだ。

 劇症肝炎相当の肝機能障害ということで、地域の基幹病院消化器内科の肝臓専門医に紹介になった。この症例は当院で扱うのは無理だが、紹介された病院ではどう治療するのだろうか。Refeeding症候群に注意して慎重に輸液をするとして、ステロイドを使う?。見当がつかない。」

 

 転院後、ウイルス性肝炎などは否定的で、摂食障害・低栄養による肝機能障害と診断されていた。Refeeding症候群に注意して輸液が開始された。輸血(赤血球輸血、血小板輸血)も行われている。

 その後、肝機能は改善していた。経口摂取は困難で、経鼻胃管による経管栄養が行われていた。幻覚があり、精神科で治療が開始された。いったん当院に治療継続のため転院依頼がきたが、転院前に突然心肺停止になった。

 原因は不明だった。心肺蘇生術で心拍は戻り、自発呼吸が出て人工呼吸器から離脱したが、意識は戻らなかった。脳波では活動性が見られず(基礎は消失とある)、ほぼ植物状態と判断された。

 頭部MRIの拡散強調画像で大脳全体に高信号域を認めて、低酸素脳症と診断された。

 今年1月に当院に転院して、経管栄養が継続された。病状は安定して(変化がなく)、2か月後に療養型病床のある病院へ転院となった。当院転院時にCDで画像が送られてきたので、なかなか見る機会のないMRI画像を見ることができた。

 摂食障害・神経性食思不振症の肝機能障害・Refeeding症候群の治療・低酸素脳症の画像など、貴重な症例になるが、やはり到底対応できないと思った。

 

 

コメント
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