なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

抗GAD抗体陽性

2020年08月01日 | Weblog

  5月連休明けに67歳女性が、倦怠感・頻尿・体重減少(1年で5kg)で外来を受診した。

 検査で糖尿病(HbA1c12.4%)・甲状腺機能亢進症・心房細動を認めた。通常ならばそのまま入院だが、食堂をやっていてすぐには入院できないという。甲状腺と糖尿病の外注検査を提出して、βブロッカー・DOACを処方して、3日後の週明けに入院になった。

 治療の勉強になるので、内科の若い先生に担当してもらった。糖尿病はインスリン強化療法を少量から開始した。30年前に県内有数の病院(甲状腺でも有名)で甲状腺の手術を受けた既往がある。抗体検査からはバセドウ病と診断された。メルカゾール15㎎/日で開始して甲状腺機能も正常化した。

 店のことがあるので、早期退院を希望していた。インスリン自己注射・自己血糖測定も一応習得したので、退院して外来治療になた。若い先生に週1回内科新患を診てもらっているので、その枠で継続して診てもらうことにした。(内科専攻医の地域医療研修なので来年3月までになる)

 

 2週間おきの通院で薬の調整をしていたが、今週「1型糖尿病でした」と言われた。入院時に提出した抗GAD抗体が陽性だったという。たぶん結果を見ているはずだが、1型と認識していなかった?。

 こちらも確認していたかどうかわからなかった。血中Cペプチド0.65ng/mlでほとんどインスリン依存状態(<0.6ng/ml)になる。抗GAD抗体は1920U/ml(正常値は5.0未満)と明らかに陽性だった。

 若年からの糖尿病ではないので、緩徐進行1型糖尿病なのだろう。てっきり、未治療の2型糖尿病がバセドウ病によって悪化したものと思っていた。

 治療方針は変わらないので、そのままインスリン強化療法が継続になる。HbA1cは7.0%まで改善していて、強化療法を受けている患者さんとしては良好といっていいだろう。

 症状がすっかり良くなってので、患者さんは頻回注射が面倒になってきたらしい。インスリンをやめられないかと訊いたので、検査結果の確認をして気づいたそうだ。

 改めて血中Cペプチドを測定してみると、0.44ng/mlと明らかにインスリン依存状態相当で、これは強化療法を継続するしかない。インスリン強化療法が絶対に必要です、と患者さんに説明するのには力強い根拠?となった。

 

 バセドウ病の方もメルカゾール15mg/日を減量しがたい状態が続いている。これは手術の適応かもしれない。いずれ甲状腺外科の先生と相談することになりそうだ。

 また胆道系酵素の上昇が続いている。ALPが700~900で推移していた(γ-GTPは60~100)。抗ミトコンドリア2抗体は陰性だったが、原発性胆汁性胆管炎(PBC)が疑われる。

 かなり勉強になる患者さんで、専攻医にとって教育的な症例ではある。

 

 

コメント
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