肺結核で県内唯一の結核病棟のある病院に転院した91歳女性の経過(6月23日の記事)。
搬送した段階では、治療は厳しいかと思われたが、何とか治療して軽快していた。経口摂取できないので、抗結核薬の内服薬は使用できず、注射薬での治療となっていた。
イソニアジド、レボフロキサシン、ストレプトマイシンの3剤だった。薬剤耐性の問題ではなく、あくまで投与経路の問題になる。
研究会で他県の結核病棟をもつ病院で発表していた治療と同じだと思った。投与期間も通常の標準治療とは異なる(らしい)。
診療情報提供書には、経鼻胃管からイソニアジド・リファンピシン注入に変更も考慮して下さいとも記載されていた。経鼻胃管から3剤投与(多分4剤は副作用で厳しい)開始と言うのはないのだろうか。とりあえずは同じ治療で継続することにした。
喀痰塗抹で3回陰性とあったが、培養結果はまだ出ていない(6週間はかかるそうだ)。大学病院から呼吸器外来に来てもらっている先生に訊くと、大学では培養が3回陰性になってから隔離解除にしているという。
当院では個室管理で診ていくが、スタッフは培養結果陰性を確認するまではN95マスクで対応することにした。サージカルマスクを使用して、喀痰吸引などエアロゾル発生の時だけN95マスクにするのもあるがと言われたが、慎重を期してN95マスク対応になった。
6月23日記事
今月始めに、老人保健施設から発熱の91歳女性が紹介されてきた。施設嘱託医の指示で、土日にセフトリアキソンを点滴静注していたそうだ。
発熱外来担当の先生が診察して、右肺炎として内科の若い先生(地域医療研修の内科専攻医)に入院治療が依頼された。右肺に広範な浸潤影を認めていた。家族との相談では、できる範囲で治療するが、病状悪化時には心臓マッサージや人工呼吸は行わない方針(DNAR)になっていた。
ゾシン(PIPC/TAZ)で治療が開始されたが、微熱~平熱で推移して、炎症反応は横ばいだった。大学病院から呼吸器科外来で来てもらっている先生に相談すると(抗酸菌感染症に強い)、抗酸菌感染(結核)の鑑別が必要といわれ、抗酸菌塗抹を行った。
結果は抗酸菌塗抹陽性(ガスキー2号)で、3日後に結核菌PCR陽性と判明した。胸部X線で部分的に含気が改善した部位もあるが、通常の細菌性肺炎が併発していたところだけ、軽快したのかもしれない。
胸部画像としては、空洞形成はなく、通常の細菌性肺炎のような浸潤影に見える。肺炎様の病像だと結核性肺炎になる。右肺尖部には胸膜肥厚があり、陳旧性の結核病変はあったのだろう(再燃による二次性結核)。