なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

超高齢者の抗凝固薬の適応

2020年08月07日 | Weblog

 昨日は午前10時ごろに地域の基幹病院から心原性脳梗塞の92歳女性が転院してきた。

 内科医院に高血圧症で通院して、心房細動があるが、抗凝固薬は年齢を考慮してか処方されていなかった。7月に左下肢脱力で基幹病院を受診して、中心前回に脳梗塞を認めた。

 入院後に後頭葉の脳梗塞、次いで両側前頭葉の多発性脳梗塞を来していった。抗凝固薬(DOAC)を一時的に投与したところ、消化管出血を来して、重度の貧血(Hb5g/dl)を呈した。

 消化管出血の方がいわゆる命取りになるので、家族と相談して今後抗凝固薬は投与しないことになった。今後の脳梗塞の再発(頻発?)予防が不可能なことから、再発からの急変時(正しくは心停止時)には心肺蘇生を行わない方針になったと記載されていた。

 転院して来て、患者さんは元気で全粥刻み食を食べられる。症状は左半身(完全)麻痺・空間失認・同名半盲があった。家族(長女)と話をして、このまま無事に過ごしていければ施設入所待ちで、血栓塞栓症が発症した時はできる範囲で治療して、病状悪化時は基幹病院の方針の通りということになった。

 心エコーで心腔内(心耳内)の血栓の有無を確認してみることにした。以前、療養型病床に転院前日に下肢の血栓塞栓症(腸骨動脈血栓塞栓症)を来した高齢女性がいた。下肢切断で対処できない位置で詰まっていたため手術できずに亡くなった。

 脳梗塞で意識低下・経口摂取不可能になっても、そのまま亡くなることはない。脳梗塞だけ気にしていると、四肢の動脈や腹部の動脈に血栓塞栓症を来したりするので、油断はできない(こちらは致死的になる)。

 左2枚が最初の、次の1枚が2回目の、右端が3回目の脳梗塞。

 

 医局に戻ると、院長から県内の新型コロナウイルス感染症に関する院長会議(web会議)が昼前から始まるので、院長室に来るように言われた。

 県内の病院での患者受け入れの方針は決まっている。しかし最近は老人介護施設での発症が続き、高齢の認知症の患者さんの受け入れが難しくなっているので(受け入れ拒否の問題がある)、急遽開かれたものだった。

 病院同士の批判し合いがあったりして、興味深かった。都市部の患者さんを郡部の病院に回すのはやめてほしいという話も出た。当院の院長先生はというと、「できるだけの協力はしたいと考えているが、看護師数削減(2/3になる)の最中で予算的にも厳しいので、その点は考慮してほしい」と答えていた。

 終わった後、「これでいいか」と訊かれたので、「先生、模範解答です」と答えた。地域の基幹病院の院長先生たちが、できれば受け入れたくないと、言っていたのはこの時期さすがにまずいと思うから。

 

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