先週の金曜日に特発性器質化肺炎が軽快して退院したばかりの91歳女性が血便(正確には肛門から出血した?)で受診した。結腸憩室出血で消化器科に入院した既往がある。発作性心房細動で抗凝固薬を内服していて、消化器科の方針は「普段は継続して消化管出血が起きた時に休止」だった。
直腸指診をするとまったくの普通便だった。パンツに血液が付着していて(散在)、何らかの出血はあった。婦人科の方かとも思ったが、どうも違うようだ。便が固かったそうで、肛門が切れて出血したようだ。
それだけだとポステリザン軟膏を処方して帰宅になるが、別の問題があった。退院してから両側下肢の浮腫が目立ってきているという。息切れはなかった。胸部X線・CTで見ると、器質化肺炎の像は退院時よりも軽減していた。明らかな肺うっ血・胸水もない。ただ、血液検査で肝機能障害が目立った(AST115・ALT160・ALP371・γ-GTP265・総ビリルビン1,1)。胆嚢摘出術の既往があり、総胆管結石が気になったが、胆道系の拡張はなさそうだ。
心電図を見ると、徐脈傾向の心房細動になっていた。有意な虚血性変化はない。酸素飽和度の低下はなかった。家族の希望もあり、心房細動・心不全(右心不全)として、サムスカ少量(3.75mg/日)で経過をみることにした。(通常のループ利尿薬とスピロノラクトンは入っていた)
週末尿量が2000ml異常出て、両下肢の浮腫は軽減していた。肝機能も軽減している(AST24・ALT91・ALP292・γ-GTP142・総ビリルビン1.1)。CTを見ると何だか下大静脈が張っているように見える。肝機能障害は心不全によるうっ血肝だったようだ。
CTで肝静脈が拡張しているように見えるが、単純CTなのでぼんやりしている。うっ血肝は、エコーで見て下大静脈・肝静脈の拡張(playboy bunny figure)と呼吸性変化がみられないこと(collapsibility)を証明しなければならなかった。CTで若干静脈拡張の雰囲気はある?。
循環器科の先生と「これはうっ血肝ですかねえ」、という話が出ることがあるが、画像できちんと評価してなかったかもしれない(除外診断的に診断)。詳しい文献をみたことはないが、急性心不全ガイドラインにもちょこっとあるだけだ。