なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

うっ血肝

2018年05月28日 | Weblog

 先週の金曜日に特発性器質化肺炎が軽快して退院したばかりの91歳女性が血便(正確には肛門から出血した?)で受診した。結腸憩室出血で消化器科に入院した既往がある。発作性心房細動で抗凝固薬を内服していて、消化器科の方針は「普段は継続して消化管出血が起きた時に休止」だった。

 直腸指診をするとまったくの普通便だった。パンツに血液が付着していて(散在)、何らかの出血はあった。婦人科の方かとも思ったが、どうも違うようだ。便が固かったそうで、肛門が切れて出血したようだ。

 それだけだとポステリザン軟膏を処方して帰宅になるが、別の問題があった。退院してから両側下肢の浮腫が目立ってきているという。息切れはなかった。胸部X線・CTで見ると、器質化肺炎の像は退院時よりも軽減していた。明らかな肺うっ血・胸水もない。ただ、血液検査で肝機能障害が目立った(AST115・ALT160・ALP371・γ-GTP265・総ビリルビン1,1)。胆嚢摘出術の既往があり、総胆管結石が気になったが、胆道系の拡張はなさそうだ。

 心電図を見ると、徐脈傾向の心房細動になっていた。有意な虚血性変化はない。酸素飽和度の低下はなかった。家族の希望もあり、心房細動・心不全(右心不全)として、サムスカ少量(3.75mg/日)で経過をみることにした。(通常のループ利尿薬とスピロノラクトンは入っていた)

 週末尿量が2000ml異常出て、両下肢の浮腫は軽減していた。肝機能も軽減している(AST24・ALT91・ALP292・γ-GTP142・総ビリルビン1.1)。CTを見ると何だか下大静脈が張っているように見える。肝機能障害は心不全によるうっ血肝だったようだ。

 CTで肝静脈が拡張しているように見えるが、単純CTなのでぼんやりしている。うっ血肝は、エコーで見て下大静脈・肝静脈の拡張(playboy bunny figure)と呼吸性変化がみられないこと(collapsibility)を証明しなければならなかった。CTで若干静脈拡張の雰囲気はある?。

 

 循環器科の先生と「これはうっ血肝ですかねえ」、という話が出ることがあるが、画像できちんと評価してなかったかもしれない(除外診断的に診断)。詳しい文献をみたことはないが、急性心不全ガイドラインにもちょこっとあるだけだ。

 

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2 コメント

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貴施設の (シロート)
2018-05-28 20:54:29
エコーにも
パルスドプラはついてるでしょう?
心不全だと肝静脈の血流波形が
平定化してきます。
カラーは要りません。

返信する
ベクトル?が (シロート)
2018-05-29 13:20:28
0 に近づくという意味です。
順行性血流を+
逆行性血流を-
とした時のベクトル?です。
返信する

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