なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

癌性胸膜炎

2014年06月03日 | Weblog

 先週の金曜日に食欲不振・呼吸困難感を訴えて77歳男性が受診した。昨年肺炎で入院した既往があった。10年前に甲状腺癌の手術を大学病院で受けたが、その後多発性肺転移が出てきた。特に症状もないので、大学病院の外来に通院して経過観察となっていた。普通に抗菌薬投与して肺炎は治癒した。

 甲状腺癌の転移として矛盾しない球形の辺縁整の結節陰影の中に、辺縁が不整な腫瘤があった。大学病院の主治医宛てに、一部は原発性肺癌が疑われるが、いかがでしょうかと問い合わせも含めて報告書を書いた。返事は以前からあり、全部甲状腺癌の転移と判断されると記載してあった。

 今回は中等度に右胸水貯留があった。微熱程度で炎症反応は白血球数は正常域でCRPが6だった。肺炎随伴性胸水でもいいかと思ったが、経過がちがうようだ。胸水を穿刺吸引して検査に提出していた。淡血性黄色の胸水で、膿胸ではない。グラム染色で細菌は全くなかった。抗酸菌塗抹も陰性。胸水細胞診で腺癌が検出された。甲状腺乳頭癌として矛盾しないという診断だった。甲状腺癌で胸水というのがピンとこないが、腺癌は腺癌なのでそういう経過もあるのだろう。大学受診予約が今月末にあるが、以前から奥さんは通院自体大変なのであまり行きたくはなかったようだ。大学の主治医宛てに報告書を提出して、予約はキャンセルすることにした。

 この方は今月初めから右側胸部痛があって、皮膚科を受診していた。皮疹は出なかったが、帯状疱疹による神経痛として治療を受けていた。 これは癌性胸膜炎として疼痛そのものだろう。入院してから疼痛時指示でボルタレン坐薬を何度か使用した。効くことは効くが効果のある時間は短い。NSAID内服は使用するとして医療用麻薬も開始することにした。

 胸水の治療をどうするか。胸腔ドレナージから胸膜癒着術をすべきなのだろうが、程度からみてまだ経過をみられる。

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