研修医のころ、漢方薬がブームになって全国的に東洋医学科・漢方科ができた。漢方薬の講演会や研究会(少人数で定期的に開催)が頻繁に開かれていて、割と熱心に行っていた。その後は慢性肝炎に小柴胡湯を使用するくらいで、あまり使わなくなった。当時、非代償性肝硬変で著明は腹水貯留を呈した患者さん(中年男性)に茵陳五苓散を処方して一晩でほとんど腹水が消失すつという経験をした。腹膜の吸収は1日500mlだから生理学を無視した効果になる。今だったら、急激浮腫を減少させると肝性脳症が悪化する可能性があり、やりすぎてしまったかと心配するところだが、当時はただ喜んでいた。退院後は、研修医は外来に出ていないので、その後の経過は分からない。
認知症の周辺症状としての不穏・焦燥・易怒などに、神経内科(物忘れ外来のある専門病院)で抑肝散を使用して、その後の処方継続処方を依頼されたりして使うことはあった。あとは、術後の癒着性イレウスを繰り返す患者さんに大建中湯を使うくらいだった。今年、サイエンス漢方の講演会に参加して。井齋偉矢先生の講義を聴いて、また関心を持つようになった。講演会でレジメをもらったが、できれば本を出してほしいと思っていた。今度、井齋先生がソフトバンク新書から「西洋医が教える、本当は速効で治る漢方」を出された。一般向けの本だが、わかりやすい。さらに医家向けの本を出してもらえるといい。
とりあえず、感染性胃腸炎に五苓散を使ってみることにした。こむら返りに芍薬甘草湯も処方してみた。ぼちぼち使ってみているというところだ。肺炎の炎症を抑えるのに小柴胡湯を使う(抗菌薬は炎症自体には効かない)とあるが、間質性肺炎が気になるので使う気にはならないが。