今回ご紹介するのは「流しのしたの骨」(著:江國香織)です。
-----内容-----
いまはなにもしていず、夜の散歩が習慣の19歳の私こと子、おっとりとして頑固な長姉そよちゃん、妙ちきりんで優しい次姉しま子ちゃん、笑顔が健やかで一番平らかな‘小さな弟’律の四人姉弟と、詩人で生活に様々なこだわりを持つ母、規律を重んじる家族想いの父、の六人家族。
ちょっと変だけれど幸福な宮坂家の、晩秋から春までの出来事を静かに描いた、不思議で心地よくいとおしい物語。
-----感想-----
語り手は宮坂家の三女こと子。
こと子は19歳で、高校卒業後は進学や就職はせず東京のはずれにある実家にいて、深町直人という大学生と付き合い始めています。
夜中に散歩をするのがこの半年くらいすっかり習慣になっています。
長姉のそよちゃんは27歳、次姉のしま子ちゃんは23歳、弟の律は14歳です。
律は人形を作るのが趣味で、家でよく人形作りをしています。
母は食卓へのこだわりがあり、葉っぱや枝、松ぼっくりなどを料理とともに並べたりします。
食卓にそれらのものを並べるのは聞いたことがなく驚きました。
こと子はそんな母を「詩人なのだ」と形容していました。
父は物事が理に適うかどうかをとても重視していて、「法的に~」という言い方をよくします。
そよちゃんはおとなしい人で昨年お嫁に行ったとありました。
しま子ちゃんは派手で、短大を卒業後は小さな税理士事務所の事務員をしています。
毎月給料日になると家族みんなに何かしら贈り物を買ってくるという妙なところがあります。
さらに今まで二度自殺未遂をしています。
雨が降るとしんみりとした気持ちになる。そうしてそれを、私はとりあえず、淋しいと呼ぶことにしている。
この気持ちはよく分かります。
私も雨が降るとしんみりとした気持ちになります。
こまかい雨は音もなく降っていて、それでも葉っぱや土や空気が雨をうけとめるさわさわしたかすかな音が、そうしていると気持ちよく耳を濡らした。
部屋から窓の外を見ている時のこの描写も良かったです。
静かに降る細かい雨も、葉っぱや土に当たるとかすかに音がします。
子供の頃、しんみりとするその音を特に何も考えずにしばらく聞いていたことがありました。
こと子は淡白に物事を語ります。
冷たくはなくあくまで淡々としていて、凄く冷静だなと思いました。
また、子供たちはみんなそれぞれ変わっています。
長姉のそよ子は「大人しいが頑固」、弟の律は「人形作りが趣味」のように、それぞれに特徴があり、その特徴が後々物語に関わってくることになります。
父の「法的に」という言葉もしま子が取った予想外の行動への対処として後で登場しました。
「意気阻喪(そそう)」という言葉は初めて見ました。
意気消沈との違いが気になるので調べてみたら、「意気阻喪」は意気込みがなくなることに重点があるのに対し、「意気消沈」はむしろ感情的にふさぎこんでしまうことに力点があるとのことです。
意気消沈のほうがより気力がなくなってしまう度合いが強いのかなと思いました。
しま子の24歳、律の15歳の誕生日祝いを合同で家族でした時、こと子はそよ子の様子がおかしいのに気づきます。
心ここにあらずというふうにぼんやりしていたとあり、何があったのか気になりました。
こと子によると「そよちゃんというひとは、行動をおこすのに時間がかかるぶん、いったん行動をおこしたら超人的に頑固だ」とのことです。
やがてそよちゃんが行動を起こすのですが、その時にはもう結論が出ていて、考えを変える気はないようでした。
クリスマスが終わりお正月になり、新たな年が始まります。
こと子は2月で20歳になります。
律が学校に呼び出されるという問題が発生しました。
その際、校長先生に憤慨した父が校長のことを「文化果つる頭の持ち主」と言っていて、普段聞かない言葉なので気になりました。
文化的に終わっている頭という意味のようです。
こと子の淡々とした語りの中で家族それぞれに何かしらの出来事がありました。
重大な出来事もありましたがこと子の語りが淡々としていて、さらに家族もみんな特に慌てたりはせずに受け止めていたのが印象的でした。
みんな変わったところはありますが、いざという時にまとまれる良い家族だと思いました。
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-----内容-----
いまはなにもしていず、夜の散歩が習慣の19歳の私こと子、おっとりとして頑固な長姉そよちゃん、妙ちきりんで優しい次姉しま子ちゃん、笑顔が健やかで一番平らかな‘小さな弟’律の四人姉弟と、詩人で生活に様々なこだわりを持つ母、規律を重んじる家族想いの父、の六人家族。
ちょっと変だけれど幸福な宮坂家の、晩秋から春までの出来事を静かに描いた、不思議で心地よくいとおしい物語。
-----感想-----
語り手は宮坂家の三女こと子。
こと子は19歳で、高校卒業後は進学や就職はせず東京のはずれにある実家にいて、深町直人という大学生と付き合い始めています。
夜中に散歩をするのがこの半年くらいすっかり習慣になっています。
長姉のそよちゃんは27歳、次姉のしま子ちゃんは23歳、弟の律は14歳です。
律は人形を作るのが趣味で、家でよく人形作りをしています。
母は食卓へのこだわりがあり、葉っぱや枝、松ぼっくりなどを料理とともに並べたりします。
食卓にそれらのものを並べるのは聞いたことがなく驚きました。
こと子はそんな母を「詩人なのだ」と形容していました。
父は物事が理に適うかどうかをとても重視していて、「法的に~」という言い方をよくします。
そよちゃんはおとなしい人で昨年お嫁に行ったとありました。
しま子ちゃんは派手で、短大を卒業後は小さな税理士事務所の事務員をしています。
毎月給料日になると家族みんなに何かしら贈り物を買ってくるという妙なところがあります。
さらに今まで二度自殺未遂をしています。
雨が降るとしんみりとした気持ちになる。そうしてそれを、私はとりあえず、淋しいと呼ぶことにしている。
この気持ちはよく分かります。
私も雨が降るとしんみりとした気持ちになります。
こまかい雨は音もなく降っていて、それでも葉っぱや土や空気が雨をうけとめるさわさわしたかすかな音が、そうしていると気持ちよく耳を濡らした。
部屋から窓の外を見ている時のこの描写も良かったです。
静かに降る細かい雨も、葉っぱや土に当たるとかすかに音がします。
子供の頃、しんみりとするその音を特に何も考えずにしばらく聞いていたことがありました。
こと子は淡白に物事を語ります。
冷たくはなくあくまで淡々としていて、凄く冷静だなと思いました。
また、子供たちはみんなそれぞれ変わっています。
長姉のそよ子は「大人しいが頑固」、弟の律は「人形作りが趣味」のように、それぞれに特徴があり、その特徴が後々物語に関わってくることになります。
父の「法的に」という言葉もしま子が取った予想外の行動への対処として後で登場しました。
「意気阻喪(そそう)」という言葉は初めて見ました。
意気消沈との違いが気になるので調べてみたら、「意気阻喪」は意気込みがなくなることに重点があるのに対し、「意気消沈」はむしろ感情的にふさぎこんでしまうことに力点があるとのことです。
意気消沈のほうがより気力がなくなってしまう度合いが強いのかなと思いました。
しま子の24歳、律の15歳の誕生日祝いを合同で家族でした時、こと子はそよ子の様子がおかしいのに気づきます。
心ここにあらずというふうにぼんやりしていたとあり、何があったのか気になりました。
こと子によると「そよちゃんというひとは、行動をおこすのに時間がかかるぶん、いったん行動をおこしたら超人的に頑固だ」とのことです。
やがてそよちゃんが行動を起こすのですが、その時にはもう結論が出ていて、考えを変える気はないようでした。
クリスマスが終わりお正月になり、新たな年が始まります。
こと子は2月で20歳になります。
律が学校に呼び出されるという問題が発生しました。
その際、校長先生に憤慨した父が校長のことを「文化果つる頭の持ち主」と言っていて、普段聞かない言葉なので気になりました。
文化的に終わっている頭という意味のようです。
こと子の淡々とした語りの中で家族それぞれに何かしらの出来事がありました。
重大な出来事もありましたがこと子の語りが淡々としていて、さらに家族もみんな特に慌てたりはせずに受け止めていたのが印象的でした。
みんな変わったところはありますが、いざという時にまとまれる良い家族だと思いました。
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