読書日和

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「魔王」伊坂幸太郎

2008-09-27 20:59:29 | 小説
今回ご紹介するのは「魔王」(著:伊坂幸太郎)です。

-----内容-----
会社員の安藤は弟の潤也と二人で暮らしていた。
自分が念じれば、それを相手が必ず口に出すことに偶然気がついた安藤は、その能力を携えて、一人の男に近づいていった。
五年後の潤也の姿を描いた「呼吸」とともに綴られる、何気ない日常生活に流されることの危うさ。
新たなる小説の可能性を追求した物語。

-----感想-----
この作品は大きな見せ場より、作品全体の流れを重視しているような気がしました。
前回読んだ伊坂作品「ゴールデンスランバー」と比較すると、驚きの展開になることは少なかったです。
しかし読み応えはゴールデンスランバーにも負けていなくて、作品世界には常に緊張感がありました。
緊張感のもとになっているのは、安藤が持つ特殊な能力と、ファシズムへの危機感でした。
安藤には、自分が念じた言葉を相手が必ず口に出すという特殊能力があります。

また、この作品では政治のことが色々と物語に関わってきます。
野党・未来党の党首、犬養(いぬかい)という男が、キーマンになっていました。
犬養は従来の政治家のような曖昧な物言いはしないで、きっぱりとした物言いで態度を明確にし、強烈なリーダーシップもあるので次第に支持が広がっていきます。
しかし安藤はこれに危機感を抱いていました。
国民みんなが、犬養に煽動されているのではないか?という疑問が湧いてきます。
みんなが一つの方向に誘導されていくと、それはファシズムになっていくのではないか、ということです。
私はファシズムの定義がよくわからないのですが、ヒトラーやムッソリーニの話が出てきて、何となくイメージが湧きました。
この流れを止めるべく安藤は、自らが持つ能力を使って犬養を止めようとするのですが…
この政治的な話は、実際の政治と似たような話が出てきて面白かったです。

「魔王」の五年後を描いた「呼吸」では、憲法九条の改正についての議論や、改正の是非を問う国民投票の話などがありました。
そしてそこには、躍進した犬養の姿が!
もっともこの「呼吸」では、潤也についての話がメインになります。
潤也もまた、特別な能力を持っていたのです。

「死神の精度」の千葉が登場したのには驚きました。
伊坂作品でお馴染みの作品同士のリンクですね
千葉が出てきたということは…まさか、死人が出るのか?…と思いながら読み進めていきました。

魔王とは誰のことなのか、この小説の謎でもあります。
安藤なのか、潤也なのか、犬養なのか、それとも別の誰かなのか。。。
それと、今度この作品の続編が発売されるらしいので、そちらも機会があれば読んでみたいと思います


※図書レビュー館を見る方はこちらをどうぞ。
コメント (4)
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