湘南ライナー日記 SHONAN LINER NOTES

会社帰りの湘南ライナーの中で書いていた日記を継続中

扉を開けると階段の店

2009-08-25 23:44:27 | B食の道


そこにあるのは知っていたのだ。
神保町のすずらん通りを歩けば、角だからいやでも目に入ってくる。
表には『純喫茶ロザリオ』と書かれている。ところが、店内の様子をうかがい知ることはできない。表から見るとドアを開ければお店が広がっているような造りなのに、実は奥行きがなく左手の階段しかなくてお店自体はは地下にあるのだ。
よほどの決意を持っていなくては、飛び込むことはできない(大げさ)。だって、階段を下りていって、あっタバコ臭いからや~めたっていうわけにはいかないでしょ。もう、下りちゃったんだからね。
でも今日は涼しくて気持ちに余裕があったからなのか、なぜか下りてみる気になったのだ。


下りたら、すっかり昭和でした。
階段は、タイムトンネルだったわけだ。
薄暗い照明が全体をセピア色に染めている。古本屋の匂いが漂っているのはなぜか。
テーブルが8卓ほどあるが、お客は少ない。タバコを吸っている人もほとんどいないようで、まずはホッとした。


すいているのに、あえて電源の入っていないテレビゲーム卓に席をとる。
こんなレトロな純喫茶に不釣り合いな若いウエイトレスがメニューを抱えてやってきた。いや、江戸川乱歩の世界のような雰囲気もして、実はマッチしているようにも思える。
メニューを手渡される前に、表の看板にあったピラフをオーダー。すると、何ピラフにするかと想定外の切り返しが。
「何があるんですか?」と尋ねると、彼女は分厚いメニューの中程を僕の前で開いてみせた。
「えっ?」
思わず声をあげちゃったじゃないか。だって、その1ページ、上から下まですべてがピラフで埋め尽くされていたのだから。
薄暗い中で、またあまりの衝撃にほとんど覚えていないのだが、たまごだの、キムチだの、チキンだの、焼き肉なんてのもあった。エビとかシーフードとか想像がつく具を見つけるのが大変。ようやく「ハム」をさがしあて、お願いした。
いきなり驚かされたけど、ここは静かでいいね。もうちょっと明るいと、本も読みやすいんだけど。何しろ地下だから仕方ないか。


「ハムピラフ」(600円+大盛り150円)登場。懐かしい風景に溶け込む姿が嬉しい。ご飯が、かなりコワイ(硬い)。硬めが好きな僕にとっても、やや硬すぎるかなりのインパクトだ。その上、キューブ状の人参が、これまた硬い。生の硬さというよりも、やや乾燥して硬くなってしまった感じ。ただ人参の味はガンガン響いてくる。
シャキシャキコリコリいわせながらも、あっという間に完食。このシャキコリが嫌じゃなかったのが不思議だ。今度は何ピラフにしようかななんて考えながら、階段を上がる。
扉を開けたら時間が現代に戻ったかといえば、そうでもない。
神保町は街全体が昭和をとどめているのだった。

会社に帰ってからネットで調べたら、ナポリタンもあるではないか。よくメニューを見せてもらえばよかった。でも、ナポリタンの具で、メニューの1ページが埋め尽くされていたらどうしよう(笑)。