湘南ライナー日記 SHONAN LINER NOTES

会社帰りの湘南ライナーの中で書いていた日記を継続中

3色、3代目、3年、3卓

2009-08-19 23:37:44 | B食の道


3色ライス。
このお店のオムライスも、カレーも、ハヤシも食べたい。でも、家が遠いからたびたび来ることはできない…そんなお客さんのことを思い生まれたメニューだという。
蔵前は鳥越神社通りの『洋食 一新亭』に行ってきた。
ちょうど1時、一人いた先客が席を立つところ。ホールは正方形で天井が高く、正立方体のような不思議な空間だ。テーブルは3つ、定員は12名。
「私たちで3代目。建物は関東大震災の後、昭和3年のものです。この一帯は戦争でも焼けなかったんですよ」とお母さん。
ということは、築80年以上!そんな建物でいただく料理がまずかろうはずはない。オムライスもカレーライスもハヤシライスも、それぞれしっかり手間がかかっていて、どこぞのチェーンの「あいがけ」とはワケが違う。
ひとつずつ制覇していくか、それぞれをローテーションして食べるかは分かれるところだが、僕は写真の通り後者で攻めた。


ただ、こうやって食べ進めていくと、なぜか最もエッジがきいているはずのカレーの味がよくわからなくなってくる。最初は確かに辛かったんだけど、途中から妙にその辛さが消えてしまった。


「店の正面も、もともとは銅板で赤くて立派だったんだけど、兄弟たちが古くさいから張り替えたほうがいいって言ってね」
現在ファザードは、残念ながらトタン貼りである。
「昔のままにしとけばよかったんだって、今じゃお父さんも嘆いているのよ」
と言って見上げた天井のアールデコの細工が見事。
「これも金属なのよ。錆が出るから白く塗っているけれど」


話に夢中になって撮り忘れてしまったが、この写真で端っこが見えますかね。
「今ではこれだけのものを手掛ける人がいないからって、お店をたたむ時はぜひ譲ってくださいという方もいるんですよ」と、お母さん苦笑い。
そうですよね、「たたむ」だなんて。いつまでも続けてほしいです。
ごちそうさまと言いながら戸を閉めようと振り返ると、厨房の入口にお父さんが顔を出してニッコリ。お二人とも人柄が顔に出てます。
外はジリジリと暑かったが、僕はすっかりいい気分で歩きだすのだった。


会社を出る前にネットで「蔵前 食堂」を調べて行ったけれど、やっぱりこの本に出ていた店だった。微笑んでくれた厨房のお父さん、実は写真集を2冊も出していた。そういえば、壁のモノクロ写真がどれも味があってよかったんだよね。

おっと、店内の写真を見直したら、時が止まってました。日めくりの日付が昨日です(笑)